「ブルース」選評用スレッド
峯岸@管理者 / 2022-02-18 19:07:48 No.97
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穂坂コウジ◆97ae83 / 2022-02-20 18:49:32 No.98
 コンバンハ、世界はブルースでできている、穂坂コウジ a.k.a. 脳内亭です。

 王様の権利をフルに行使し独断で決めた念願の今タイトル「ブルース」です。
 The Blues Is Alright(byリトル・ミルトン)ってことで、基本的には全部オッケー、何でもあり、己がブルースだと感じたならそれがブルース、参加してくれた方は全員優勝! と、その前提で、はりきって選評とまいります。よろしく願います。



×ブルース1
>レオパレスの薄い壁越しから、

 キングブラザーズ、あるいはジョンスペをおもわせるパンクなブルース。絞りだすようなしゃがれ声が聴こえます。
 ブルースはどちらかといえば隠喩・暗喩を伴った感情表現であるし、隙間を活かしての演奏表現であるので、ちょっと直接的にすぎるかもしれないし詰め込みすぎてるきらいはあるけれど、そのぶん気迫を感じます。クソッタレな音と感情を吐き出すジャンク・ブルースも好きですよ。みな殺しのブルース。


○ブルース2
>空き地の真ん中を、オオバコナズナ、バタバタと踏んで抜けていく。

 なんともいえないグルーヴ感。ギター一本でズンズン進み、早口で物語られるフォークに近いブルース。レッドベリーあるいはミシシッピ・ジョン・ハートのように。
 「三匹」や「シェパード」など動物を用いた比喩の情感が良い。また割れればもう元には戻らない皿という道具によって、子どもにとってのブルースを巧みに表している。子どものブルースという意味では「Little Boy Blue」をあるいは意識されたのかもしれませんね。
 最後の誤字はご愛嬌。それもまたブルース。


 △ブルース3
> 僕は遠くまで歩こうとした。

 ブルースの詞はAAB形式と呼ばれるものが主流としてあります。一行目・二行目はおなじ歌詞をうたい、これを前フリとして三行目で決着させるというもので、この作品はそれを踏まえた書き方をされていますね。だれかやる人いたらいいなとおもっていたので嬉しいです。
 巡り巡ることのブルース、そして繋げ、続いていくことのブルース。そのかたちがしっかりと表されています。


つづく。

穂坂コウジ◆97ae83 / 2022-02-20 18:51:53 No.99
 ブルース4
> 広域火葬施設の放火事件が派手に書き立てられた年は、

 ブルースには叙事詩的な側面もあり、時事的な問題が盛り込まれることも少なくありません。旱魃をうたったサン・ハウス「Dry Spell Blues」や、農作業での害虫をうたったチャーリー・パットンやマ・レイニー「Bo Weevil Blues」など。この作品にもそうした雰囲気を感じます。
 故郷へ帰ろうとうたうブルースもありますが、帰る祖国を失うこともまたブルースでありましょう。




 ブルース5
> そんな事があったんだってさ。

 具体的な事柄は何もなく、ただ感情だけが置き去りにされている。その虚ろさにブルースを視たのでしょうか。作品としてはぼやかしすぎにおもいますが、ぬるいグラスはたしかにブルースかもしれない。
 関係ないですが、ブルーグラスはカントリーのルーツですね。最初期のブルースには、ブルースもブルーグラスも分け隔てなく演奏するジャグ・バンドなるものが存在しました。


 ブルース6
> 過去から来たという人と、

 過去と現在と未来による三すくみ。過去ならピーティー・ウィートストロー「Long Time Ago Blues」あるいはジョージア・トム&タンパ・レッド「Long Ago Blues」、未来ならブルース・ロック・バンドのキャンド・ヒートによる「Future Blues」がありますね。それはさておき、飯時の急な来訪はたしかに困る。なすすべなく状況にただただ振り回されるブルース。読んでいるこっちも何がなんだかな気分にさせられます。食べるリズムにシャッフルを感じます。


 ブルース7
> 元もと運動も団体行動も苦手。

 ブルースは哀歌というよりは憂歌の方が近いかな。sad songではなくbluesなので。それはともかく、ダンスにおけるブルースを持ってくるのは予想してなかったです。ブルースもダンス・ミュージックであることには違いない。
 通常のブルースならば一夜の恋をうたって終わりといったところ、そこから更なる進展があるのは面白いですね。ところでブルースについて滔々と語り倒せば、たいていは引かれてしまいます(この選評のようにねってやかましいわ)。それもまたブルース。


つづく。

穂坂コウジ◆97ae83 / 2022-02-20 18:53:17 No.100
○ブルース8
>「室長、大変です。ブルーノート株が日本に上陸しました」

 まさか「Johnny B. Goode」が出てくるとはおもいませんでした。私が初めて歌詞をまるまる覚えた洋楽の曲で、今でもそらでうたえます Deep down in Louisiana close to New Orleans.
 ブルースではなくロックンロールではないか、とは云いません。なにしろ1950年代当時の最先端のリズム&ブルースが、ロックンロールと名づけられたに過ぎないのですから。
 ともあれこの馬鹿馬鹿しさはとても良い。うんざりするような現実をせめて笑い飛ばそうという意気もまたブルースであります。
 ところで感染ソングには、ヒューイ・ピアノ・スミス「Rockin’ Pneumonia & The Boogie Woogie Flu」(ロッキン肺炎とブギウギ・インフル)があるので、そっちの選曲でも良かったかも。


 ブルース9
> 「地球は青かった」と、先人の遺した同じ台詞をつぶやく。

 「One Scotch, One Bourbon, One Beer」はエイモス・ミルバーンのジャンプ・ブルース。ジョン・リー・フッカーはそれを「One Bourbon, One Scotch, One Beer」と順番を入れ替えてのブギとしましたね。
 なにしろ青い星に住む我々です、ブルースであることは宿命といえるのかもしれません。世界が滅びる日にも、ブルースは鳴り響くのだろう。
 また色歌の要素もブルースには強くありますね。しかしマディ・ウォーターズ「I Just Want To Make Love To You」に「恋をしようよ」なんて秀逸な邦題を付けたのはいったい誰なのだろう。


つづく。

穂坂コウジ◆97ae83 / 2022-02-20 18:54:29 No.101
 ブルース10
>「あーそうそう、あれ見てきたぜ、菜名。ほんっと真っ黒けなのな!」

 ブルースでも特に名高いロバジョンのクロスロード伝説ですが、しかしロバジョンが元祖というわけでもないようです。元はトミー・ジョンソンという、ブルース第一世代の一人が持っていた逸話なのだとか。それはともかく。
 本名はモーガンレー・マッキンフィールド、マディ・ウォーターズ(泥水)の芸名は、子どもの頃にいつも泥んこになって遊んでいたからと云われていますが、ブルースがミシシッピ・デルタの湿地帯(bayou)で生まれたこととも無縁ではなさそうです。それもともかく。
 どういう話なのかをいまいち掴みきれていないのですが、ブルースに取り憑かれる前夜といったところなのでしょうか。主人公の持つブルースが露わになるのはまだこれからなのかな。


 ブルース11
>ギターオタクの友人がくれたレコードを時々かける。

 ブルースも最初期の演奏家などは、木の板に棒をくっつけて作った自作のギターで最初は練習していたなんて話もあるほどで、上達には名器よりもとにかく練習あるのみが真理であるようです。
 別れや喪失はブルースの定番ですが、それをさらっと軽いタッチで描いてるのが良いです。
 亡くなった友人のことをうたったブルースとしては、ブラウニー・マギー「Death Of Blind Boy Fuller」などがありますね。


 ブルース12
> ランプの薄明かり、タバコの煙、それからオンザロック。

 アルコールを扱った作品が意外と少なかったなとおもいました。ブルースはストリートでの弾き語りもあれば、ジューク・ジョイントやバレルハウスといった、安酒場あるいは売春宿でも演奏されましたから、お酒にまつわる話がもっとあっても良かったかも。
 そんな不健全でうす暗い雰囲気にひたりたい相手と、お構いなしの主人公、でしょうか。互いに解り合えないブルース。話の内容にもう少し具体的な手掛かりがほしいなとおもいました。


つづく。

穂坂コウジ◆97ae83 / 2022-02-20 18:55:16 No.102
 ブルース13
> 今朝のわたしは機嫌がいい。

 なるほどヒップホップ。今回はブルースやー云うてるのに(笑)
 とはいえですよ、映画「Godfathers & Sons」の中で、パブリック・エネミーのチャックDはマディ・ウォーターズの異色作「Electric Mud」をフェイバリット・レコードに挙げていて、その録音に携わったバンド・メンバーを招き、かの「Mannish Boy」の演奏をバックにラップを乗せるというコラボを行なっていました。ヒップホップにもブルースの影響はやはり及んでいるのでしょう。すべてのフルーツを実らせるルーツ(根)たるブルース。
 ところで私はCentral Ceeというイギリスのラッパーがここ最近わりとイチオシ。Little Simzも悪くない気する。



 以上でっす。

 ワガママを通した今回、堪能させていただきました。ありがとうございました。もしまたダブルクラウンを獲ることがあったら、今度は「ロックンロール」ってタイトルにします。では、穂坂コウジ a.k.a. 脳内亭でした。

空虹桜◆7a91dc / 2022-02-21 23:55:50 No.103
ありり?アタシの投稿が一作反映されてないや。
ミネギシズムミネギシズム。
サッカー日本代表への愚痴を熟々と超短編に書き連ねたのですけど、
13作あるなら賑やかしを今さら追加しなくても良いか。
真っ青になることもなく、藍より青し。
ちなみに、その作品に付けてたサブタイトルは「ブルーの構図のブルース」でした。
そんなのが他にもあったら特選送るのだけど。

○ブルース6
> 過去から来たという人と、未
なんでこのタイトルてこの話を思いついたのか、
思考回路が全然追えなくて最高だから、それだけで正選です。
餃子&ライスならば、ご飯は水なので多めに炊いてもすぐに消えます。
失せ物です。
タレで熟成させたご飯こそが餃子の本質だと、
しまおまほも言っていたような、いなかったような。
とくに、
> 事情は飲み込めないが。もぐ、もぐもぐもぐ。やり過ごす。
が最高。
「もぐ」一つ目の「、」が最高。

○<ブルース11>
>ギターオタクの友
これぐらいのトーンがアタシの思う音楽のブルースに近しい。
音楽ネタが多くなるだろうことはわかっていたので、
そこはオーセンティックなブルースか、
「お前の唄」であるブルースの、どちらかを取るよ。
結果、正選がオーセンティックで、逆選が「お前の唄」
いや、逆選のはアレでオーセンティックでもあるのだけど。
個人で見れば、マクロで見れば、たいていいい人なのだから、
アタシの感覚を誰かに強制しない。したくない。
BLMとはいえ、黒人だって充分アジアンを差別してるでしょ?
全てにおいて敵は思い込みだ。
ただ、個人で、マクロで見れば、たいてい「いい人」にはなる。
なので、広い人間になりたいものです。

空虹桜◆7a91dc / 2022-02-21 23:56:02 No.104
△<ブルース4>
> 広域火葬施設の放
沖縄は台湾が併合ってことは、
台湾は中国に支配されてないってことですね。それは不幸中の幸い。
あと、北海道はアタシが独立させる(笑)
不勉強だからググったけど、
「奥州のやさぐれた小説家」は井上ひさし?

×<ブルース1>
>レオパレスの薄い壁越しから、ネ
なんだか、竹原ピストルっぽいなぁ。
まったくもってよろしいのだけど、
これは日本人の見てる日本の唄で、
でも、日本の唄って、もっと多様なんじゃないかなぁと。
アンダーグラウンドはそんなもんじゃないだろ?って気もある。
歌舞伎町なら、「自粛」を訴えるビブスつけた沈黙守るオッサンとかね。
もちろん、給料は税金。周りの人はガン無視(含むアタシ)
同じ「自粛」でも、トー横はまだ動けるだけマシみたいな。
去年と比べると、ゴミは無くなり鳩しかいないトー横。

<ブルース2>
>空き地の真ん中を、オ
2作続いて改行無し。
1より優しくて拙いのは、主人公が小学生と覚しきから?

<ブルース13>
> 今朝のわたしは機
だいたい元ネタはわかるけど、統一感というかルールがよくわからない。

◆8a3db7 / 2022-03-03 17:18:51 No.105
◯〈ブルース6〉
>過去から来たという人と、未来から来たという人と、事情の飲み込めない私で食卓を囲む。

未来人と過去人と「私」で囲む食卓という一種不穏なカラーのSF作品。未来を見に来た過去人と過去を見に来た未来人が現在を生きる私の食卓で交差する。1930年代半ば、ミシシッピー州クラークスデイル郊外の交差点でブルースシンガーロバート・ジョンソンが悪魔と取引をしてギターの超絶テクニックを授かったとされる「クロスロード伝説」をモチーフにしているのだろう。文末で解決させず、餃子を咀嚼する私のモノローグがおもしろい。


◯〈ブルース9〉
> 「地球は青かった」と、先人の遺した同じ台詞をつぶやく。

「泥に咲くは蓮の花」の一文にどうしても藤圭子の「夢は夜ひらく」の暗く粘りつく歌声を重ねてしまう。多分この作品は更に凝縮すると昭和のヤニ臭さを放ち暗い光を放つのだろう。「元・水平線」や「黒い翼を広げたピアノ」「ずたずたに叩く鍵盤」など、言葉のセンスに個性があり好感。


×〈ブルース13〉
>今朝のわたしは機嫌がいい。他者とは関係無い。駅へ最短の繁華な元闇市。

文中にちりばめられたHIPHOP固有の単語が泡のように明滅する作品。果たしてラッパーに、HIPHOPにブルースが存在するのかぼくにはわからないが、おそらく筆者の言いたい事は文頭「今朝のわたしは機嫌がいい、他者は関係ない」という一点なのだろう。

以上よろしくお願い申し上げます。

たなか◆535f38 / 2022-03-05 19:56:26 No.106
たなかです。
音楽は好きですがブルースは門外漢です。ほとんどわかりません。
そんなわけで、立ち位置的には「ブルース」というタイトルが醸し出すイメージが、
どんなふうに物語に落とし込まれているかというところで読みました。
よろしくお願いします。


△ブルース3
>  僕は遠くまで歩こうとした。遠く遠くまで歩こうとしたんだ。でも気がつけば同じ

丁寧に歌詞だなぁ、という印象でした。とびきり新しい視野を広げるような物語では
ないのだけど、ものすごく真っ直ぐにタイトルに取り組んで、それこそ歌として出てきた
歌詞なのだなぁと。メロディをのせて歌ってみたくなりました。次点で。


△ブルース5
>  そんな事があったんだってさ。と隣りのテーブルで誰かが誰かに話していたのだと、

こちらもよくありそうな日常のワンシーン。それが逆に、これを読んでいる自身が、
この景色のなかにいるような感覚をともない、それがよかったです。「ぬるい」の
繰り返しが、この場面や登場する人たちをうまく表現していると感じました。次点で。


○ブルース6
>  過去から来たという人と、未来から来たという人と、事情の飲み込めない私で食卓

現在は永久に過去から来た道、未来に続く道なのだけど、それらとは切り離された個別の
ものという感覚はなかなか解けないもの。そんなことを考えました。米と餃子だけの
ひとり飯へ乱入という様子が悲哀とコメディのあわいを感じさせ面白かったです。正選で。


○ブルース8
> 「室長、大変です。ブルーノート株が日本に上陸しました」

読んでいる自分もつい気持ちよく楽しくなりました。感染力強い! テンポいい!
「少し悲しげな感じになります」で笑い、「リズムはブルースで、Bから始めるよ!」で
さらに笑い、「めっちゃ明るい曲なんだけど?」以降は笑いっぱなしでした。正選で。


×ブルース11
> ギターオタクの友人がくれたレコードを時々かける。

自身にも掠る経験があり、亡くなった方がたを思い出しながらしみじみと読んだのですが、「ミソジニストでレイシスト下ネタ好きのおっさんが言いそうなことが浮かぶので、2年経った今もまったく死んだ気がしない。」をどう読めばいいのか全然わからない。逆選で。

磯村咲◆8fbabe / 2022-03-05 20:26:15 No.107
ブルース、難しかったです。

〇<ブルース6>
> 過去から来たという人と、未来から来たという人と、事情の飲み込めない私
これもバック・トゥ・ザ・フューチャーからの連想なのでしょうか。それともたまたま?
「私の飯はやはり私が食う。」という最後の一文が妙にブルースっぽく感じられました。

〇<ブルース8>
>「室長、大変です。ブルーノート株が日本に上陸しました」
「三番目と五番目と七番目のスパイクたんぱく質の長さが半分なんです」にやられました。

×<ブルース4>
> 広域火葬施設の放火事件が派手に書き立てられた年は、偏向報道とはいえ報
令和の大塩平八郎ということは、国が、反対する勢力を押し切って広域火葬施設を作ったのでしょうか。その辺りの事情を少し盛り込んで欲しかったです。軍国主義が加速し、その結果としてのその後の展開についていけませんでした。

<ブルース1>
これだけ列挙するのすごいと読み進めていましたが、「口を半開きにして今これを読んでいるマヌケなてめえら」のところで、口をしっかり閉じていたのですっと覚めてしまいました。列挙された例が都会的なものばかりなのも気になりました。地方の暮らしも盛り込んで欲しかったです。

<ブルース2>
ちょっと昔の小学生だと感じられました。意図したものでしょうか。この作風で現代の小学生事情を織り込んだブルースが読みたいなと思いました。

以上です。

海音寺ジョー◆2819bb / 2022-03-06 20:41:39 No.108
○ブルース2
>空き地の真ん中を、オオバコナズナ、バタバタと踏んで抜けていく。

イメージ、情景の出所が全然わからなくて、そのことがかえって想像をかきたてられて良かったです。音楽のことには疎いのですが、ブルースの曲のタイトルが換骨奪胎して、物語の断片断片になってるのかな。

○ブルース8
>「室長、大変です。ブルーノート株が日本に上陸しました」

このタイトルで、こんな面白い話が読めるとは!という驚きがありました。特選にしようかどうしようかと、ギリギリまで迷った傑作でした。オミクロン株が全てブルーノート株に置き換わってほしい。

△ブルース7
> 元もと運動も団体行動も苦手。

かれの後ろ向きな性格に強い共感を覚えました。俯瞰して見たら、十分ハッピーエンドに思える人生なのに。悲しみや寂しさを、しかしかれもわたしも逆説的に謳歌出来得てるんじゃないかな、ということを、ぐるぐる思いました。

△ブルース13
> 今朝のわたしは機嫌がいい。

この物語に出てくる曲をひとつも知らないのですが、文体のリズムがとても良かったです。いかがわしくも愛しい街を闊歩する、機嫌がいいわたしの足音が聞こえてきそうでした。


✕ブルース6
> 過去から来たという人と、未

すごく良かったのですが、自分がブルースだと認識してるブルース観から一番遠いと感じたので、逆選にさせてください。餃子は大好きです。

以上です。よろしくお願いします。

遠音◆56c847 / 2022-03-06 21:37:35 No.109
「ブルース」、難関でしたが、疎い私なりに評してみようと思います。

◎ブルース8
> 「室長、大変です。
冒頭の「ブルーノート株が日本に上陸」はわかりやすい時事ネタなのに、外国のオシャレネーミングの会社の株価が乱高下した、という妄想が脳内を瞬間駆け抜けた。とほほ。
現実の新型株上陸のニュースが暗く緊迫していただけに、この底抜けの明るさ、馬鹿らしさにとても救われる。
ウイルスの感染力の強さを下敷きにしているが、多くの人へ伝播する歌の影響力も同時に織り込まれていて、そこにも惹かれた。歌の力を信じているからこそ書けた話だと思う。
正選です。

△ブルース3
>  僕は遠くまで歩こうとした。
全体的に言葉の使い方は少しまどろこしく感じたが、内容には惹かれた。
「見えてるものを伝えるにはどうすればいい?」
並んで同じものを眺めていても、脳裏に映る姿や焦点はそれぞれ異なる。ましてや自分の内側での違いをどう伝えたらいいのかというとまどい。ここは表現者として、とてもシンパシーを感じる。
歌うとは、叫びであり、ブルースであり、詩であり、短歌であり、俳句であり、きっと同根だ。
次点です。

△ブルース4
>  広域火葬施設の放火事件が
タイトルがなければ、ブルースのブの字も脳裏をかすめなかったと思う。が、読み物として普通に面白かった。
自国が切り刻まれ、吸い上げられてゆくありさまをドライに描写しているのが印象的。価値観や母国の在り方が大きく揺らぐ怖さ。これと、故郷を遠く離れて奴隷として扱われる黒人の悲哀、ブルースと重ねたということだろうか。
「親父」の放火理由が今いち掴みきれなかったのが個人的に残念だった。「令和の大塩平八郎」と讃えられた具体的背景が知りたいですよ。
次点です。

×ブルース13
>  今朝のわたしは機嫌がいい。
半分以上は意味がわからなかったが、主人公がご機嫌でノリノリなのは伝わってきた。
クレイジーな街模様にみえて、その実「合法的なトび方をビラ配り。人混みを馬鹿が自転車でやってくる。」とわりと平和なのが妙にリアルで可笑しい。
ただ、「ブルース」とはジャンルが違うのでは…?という疑問がぬぐえず。
我が道を貫き切っている良さとも合わせて、愛を込めて逆選で。

(選外評は次へ)

遠音◆56c847 / 2022-03-06 21:39:31 No.110
<選外評>
ブルース1
> レオパレスの薄い壁越しから、
濁流のような、羅列。息苦しさは意図したところであろうが、個人的には息をつくところ、もしくは緩急がほしいと思った。
醜いもの、澱んだものだけでなく、哀しいものも混じっているところが、やるせない。
個人的には「ホストの投げ捨てた銀行の袋」がヒットだった。場の気配が、彼の感情が、立ち上がってくる。

ブルース5
>  そんな事があったんだってさ。
けだるい空気の中によどむ、避けようのない破局の気配。激しい喜怒哀楽もなく、相手の心が離れていくのをぼんやりと感じているさまは、水中のようだ。
たった今向き合っている二人の大切な時間が「そんな事」や周囲のざわめきにとりまぎれてしまうような軽いものになってしまう、哀しさ。
そのことを辛いと思えなくなってしまっているのか、あるいは、ぼんやりとして辛さを紛らわせてしまいたいのか。
ブルースの「憂鬱」をクローズアップしたのだと解釈した。

ブルース6
>  過去から来たという人と、
「腹が減っているようだ。」のリフレインが地味に腹筋にくる。
年齢も性別も不明のタイムトラベラー二人は「私」の過去と未来かと思ったが、昔トリップしているのであれば覚えているはずだし、違うのだろう。
パニックや不安ではなく「早く帰ってくれまいか。」と憂鬱になっているのがブルースだとしたら、少し強引な気がする。ただ、話そのものは面白く、テンポもよい。

ブルース7
>  元もと運動も団体行動も苦手。
「ブルース」のお題でこんなほのぼのとした話が読めるとは意外だった。
前半はあらすじのごとき駆け足だが、後半のこたつのシーンが、席の位置や会話がリアルでよかった。
ブルーな未来と言いつつもこの結婚を後悔したりしていなさそうで、読後感も気持ちがよい。

ブルース9
>  「地球は青かった」と、
絶望の世界の蓮の花、小屋に灯る灯り、女の瞳の澄んだ青。未来へつながる直接の希望になりえないけれど美しいかけら達が印象的。
もう長くないからこそ、美しくきらめくのか。酩酊のさなかのわずかな正気のようだと感じた。

(続く)

遠音◆56c847 / 2022-03-06 21:40:41 No.111
(続き)

ブルース11
> ギターオタクの友人が
ラスト1行に首をひねったが、自分がもうステージの仲間の中にはいないという意味か。あるいは、独りでステージに立って演奏のマネごとをしていて、仲間や観客はいないという意味か。後者の方がせつなくて好みだ。
「ミソジニストでレイシスト下ネタ好きのおっさんが言いそうなこと」がさっぱり浮かばないが、もしかして主人公は女性?

ブルース12
>  ランプの薄明かり、
ブルースの曲そのものが嫌いなのではなく、そういう曲に似合いそうな空気や明度が好きではないという話か。
ラストの俗っぽい落とし方は好き嫌いが分かれそうだが面白い。我が道を行く気持ちよさゆえか。

以上です。

胡乱舎猫支店◆4926c5 / 2022-03-06 22:22:37 No.112
ブルースとは何ぞやと調べたらブルースとは「生き様」とか出て来たのですがちょっとそこまではどうなんだろうと思いつつ書いて、そして読みました。

◯ブルース1
> レオパレスの薄い壁越しから
自分の持つ「ブルース」のイメージと似ているからかもしれませんが確かに行間から聴こえてこえますね。ある種のどうしようもなさが。

◯ ブルース11
>ギターオタクの友人がくれたレコードを時々かける
そんなに親しいと言うわけでは無かったけれどちょっとした趣味と呑み友達と言う感じでしょうか?クールと言うか乾いたと言うか割り切った感じの悲哀が低く流れて居るのが好みです。

× ブルース2
>空き地の真ん中を
あくまでも個人的なイメージ(固定観念?)からちょっと遠いというかブルースには早過ぎると言う様に感じたので申し訳ありません、逆選で。

つとむュー / 2022-03-07 00:39:49 No.113
【選評】ブルース

〇<ブルース3>
>僕は遠くまで歩こうとした。
個人的に抱いている「ブルース」の雰囲気に一番近い作品でした。
景色が違って見えることを伝える方法が素敵でした。

〇<ブルース1>
>レオパレスの薄い壁越しから、
ブルーに感じるシチュエーションのオンパレードでした。
これだけ羅列されたら、思わず歌いたくなってしまいます。

△<ブルース11>
>ギターオタクの友人がくれたレコードを時々かける。
可笑しくもあり悲しくもあり、不思議な作品でした。
自分がその友人だったら、時々じゃなくて毎回思い出して欲しいです。

△<ブルース12>
>ランプの薄明かり、タバコの煙、それからオンザロック。
薄明りのタバコの煙が目に浮かぶような作品でした。
昭和のブルースという感じがしました。

×<ブルース6>
>過去から来たという人と、未来から来たという人と、
過去から来た人、未来から来た人、不思議なシチュエーションですね。
でも何で餃子なんでしょう?
「ブルース」から餃子が出てきたことがとっても気になったので、逆選にさせていただきました。

以上、よろしくお願いします。

はやかつ◆8f91df / 2022-03-08 23:35:46 No.114
バンド仲間から「ブルージーなピアノを弾く」と評されていい気になったこともあるはやかつです。大幅遅刻ですみません。でも来ないよりマシと思っていただけると助かります(いけ図々し…)。

×ブルース1
> レオパレスの薄い壁越しから、ネカフェの隣のブースから、
ワルぶってるのではなく、目を背けたくなるような物事を真剣に見つめている感じは悪くないです。でも私の持つブルースの印象はもっとモヤモヤした、宙ぶらりんなものなので、作品としては好感を持ちながらも逆選で。

ブルース2
> 空き地の真ん中を、オオバコナズナ、バタバタと踏んで抜けていく。
子供がつらい境遇にあるらしいものを読むと胸が締め付けられます。それもこれほどこなれた描写なら尚更。ブルースよりもアイルランド民謡が似合う気がします。

△ブルース5
> そんな事があったんだってさ。と隣りのテーブルで誰かが誰かに
この、ぬるく堂々巡りしてる感覚がブルースの感覚に重なる気がするんです。ただ、ブルースって基本は自分ごとだと思うので、そこが少し遠いかも。

ブルース6
> 過去から来たという人と、未来から来たという人と、
本人が事情を飲み込めていないので読者は尚更という怪作。どうしよう、逆選こっちかと迷ったけど、無印で。

△ブルース7
> 元もと運動も団体行動も苦手。なのに気づくと社交ダンス部にいた。
この、うだうだ流れていって流された人生を肯定するでも否定するでもなく眺める感じ、わりとブルースっぽい気がします。ダンスのブルースって曲が全然ブルースじゃない、ってのも上手い題材を拾ってきたなあと思います。

○ブルース8
> 「室長、大変です。ブルーノート株が日本に上陸しました」
「三番目と五番目と七番目のスパイクたんぱく質の長さが半分なんです」に大爆笑。細かいことを言うと、ブルースはリズム形式を指さないと思ってるのでそこだけちょっと違和感なんですが勢い勝ちで正選。「少し悲しげな感じになります」で、なおかつ「めっちゃ明るい曲なんだけど?」ってとこが言い得て妙です。Go, Johnny, go, go!

○ブルース9
> 「地球は青かった」と、先人の遺した同じ台詞をつぶやく。
マディな世界に沈むブルースと酒場。これはいい感じに溺れさせてくれます。

(つづく)

はやかつ◆8f91df / 2022-03-08 23:36:56 No.115
ブルース10
>「あーそうそう、あれ見てきたぜ、菜名。ほんっと真っ黒けなのな!」
ブルースにまつわる人名やエピソードをうまく織り込んで、どうやらブルースのとば口にいるらしい若い兄妹(?)の感情を鮮烈に切り取ってるなあと思います。その分ブルース度は低い気がしますが。

ブルース13
> 今朝のわたしは機嫌がいい。他者とは関係無い。
「そんな気分なのです」(かせきさいだぁ)「心のベストテン第一位はこんな曲だった」(スチャダラパー)からの引用と、鎮座DoopnessはKIRINJIとコラボしてたから知ってましたが、あとはわからず。あ、BTS「Dynamite」は知ってた。これほどヒップホップを並べてきたのは、これが自分のブルースだという主張かとは思いますが、かといって易々と逆選票を献上したくはありません、あしからず(笑)。

以上です!

まつじ◆fd9eca / 2022-03-09 13:26:44 No.116
こんにちは、皆さま。まつじです。
ブルース、ブルース、ブルース。楽しく読ませていただきました。

⚪︎<ブルース11>ギターオタクの友人がくれたレコードを時々
「そういえばいないんだったなと時々思う」に共感するというか、いないということも意識せずに生活していて、ふと思い出す感覚。なんということのない日に立ち現れる、ほんの僅かの寂しさというか憂いというか。

⚪︎<ブルース8>「室長、大変です。ブルーノート株が日本に
楽しそうじゃねえか。という感想です。今となっては分かるけど、10年前に「ブルーノート株」といわれてもピンと来なかっただろうと思うと面白いですね。少し悲しげな感じがどこにいってしまったのかは、気にしますまい。

△<ブルース3>僕は遠くまで歩こうとした。遠く遠くまで
前後の文の塊の、一部の文字列が重なるつくりが面白かったです。それが繰り返されるのも好みではあったのですが、内容を変えずに冒頭とつながる構成だったらより好み。でも、河っぽさはなくなってしまうかなと思うと難しいですね。

△<ブルース12>ランプの薄明かり、タバコの煙、それからオンザ
それっぽい言葉が羅列されているなと思っていたら、あれよあれよと消臭スプレーに着地してなるほど。後半だけでも表現できそうではありますが、まんまと罠にかかってしまった私、するする読める調子の良い文章のなせるワザですね。

×<ブルース13>今朝のわたしは機嫌がいい。他者とは関係無い。
正直、元ネタはほとんど分からないのですが、語り手のようになりたいとは思えないのに羨ましい気もするのです。ラップは精神。ブルースだって。冒頭の当たり前のような二文が、不思議と心を掴んできました。

続きは選外評です↓

まつじ◆fd9eca / 2022-03-09 13:29:15 No.117
<ブルース1>レオパレスの薄い壁越しから、ネカフェの隣
畳み掛けるように連ねられる猥雑なイメージは、たしかにブルースらしいのかもしれません。ぐわぐわと迫るエネルギー、苛立ち紛れの心情を感じつつ、繁華ではない田舎のブルースも読みたいと思いました。

<ブルース2>空き地の真ん中を、オオバコナズナ、バタバタ
「めめしい奴の女座り」という表現にやや引っかかりを覚えてしまう私なのですが、短い文章を重ねて作り上げられるリズムが心地よいです。詩的でもあり、大皿が印象的。時の経過と語り手の変化に、不思議とブルースを感じます。

<ブルース4>広域火葬施設の放火事件が派手に書き
描かれる世界が興味深いですね。はてさて異国とは何であるかを考えてしまいます。「かつての日本に近い国」と表現するあたりに、語り手の意地悪を感じてたいへん好ましく思いつつ、ヤフーニュースはとくに変化なかったのか気になります。

<ブルース5>そんな事があったんだってさ。と隣りの
喫茶店かレストランか、曖昧な場所での一場面を描いているようで、具体的なイメージの少なさで普遍性を追求しているようで面白いです。回想で、現在以外の時間軸を描いたところをみると、最後の「いつか」は過去とも未来ともとれました。

<ブルース6>過去から来たという人と、未来から来たという人と、
どういう経緯で食卓を囲むに至ったのかがまったく不明な強引さが楽しいです。その前にやれることがありそうなどと思うのは野暮というものでしょう。なぜ餃子なのかもまったく不明ですが、美味しそうなのでよい。でも居心地はわるそうですね。

まつじ◆fd9eca / 2022-03-09 13:29:56 No.118
<ブルース7>元もと運動も団体行動も苦手。なのに気づくと社交ダンス
ダンスの種類のブルースとは、あずかり知らぬことなのでホホウと感じ入りました。世のなか私の知らないことだらけです。ブルーな気分って、どの世代までが使うんだろうという余計な心配をしてしまう私です。なかよさそうな家族でなによりです。

<ブルース9>「地球は青かった」と、先人の遺した
なんだか「世界中の海という海は泥土化した」の一文が好きです。泥のなかでは蓮根が育っているでしょうか。最後の一文が私には感傷的すぎるきらいがあるけれど、泥土と蓮の花と半分沈んだ小屋の絵面は、ぐっと来ますね。

<ブルース10>「あーそうそう、あれ見てき
「クロスロード伝説なんだってぇ?」が誰のセリフなのか見失い立ち往生してしまいましたが、このタイトルで道祖神の登場は不意を突かれて面白かったです。久太は何をやっておるのか墨汁で。

遅まきながらの選評ですが、これにて失礼いたします。

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