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榎本達也 情報
管理人 / 2018-12-04 19:55:00 No.42236
榎本達也 18期 現:FC東京コーチ
元Jリーガー榎本達也39歳、ブラインドサッカーで“現役復帰”した舞台裏

第一線を退いた後も、夢を追いかけて、再び新たな場所でのやりがいを求めてピッチに舞い戻る「おっさんフットボーラー」がいる。体力・気力も衰えつつあるなか、何が彼らを焚きつけるのか。その胸中を聞いた。

◆ブラインドサッカーで“現役復帰”パラ五輪に懸ける39歳・GK

Jーグでゴールを守った試合は343試合。’01年のJリーグカップでは横浜FMを優勝に導き、大会MVPに輝いた。’04年の浦和とのチャンピオンシップではPKを2本止め、横浜Mの連覇に貢献。その後4つのチームで守護神を務めた榎本達也が20年にわたるキャリアからの引退を発表したのは’16年の冬。36歳だった。しかし、それからすぐ、榎本はブラインドサッカーの選手として37歳で“現役復帰”を表明。周囲を驚かせた。

ブラインドサッカーは全盲のフィールドプレーヤー(FP)4人と健常者、もしくは弱視者のゴールキーパー(GK)、ピッチ外の敵陣後ろからFPに敵やボールの動きの情報を提供する「ガイド」、全体を指揮する「監督」の合計7人で行われる競技だ。ピッチサイズはフットサルと同程度で、転がると音の出るボールを使用。きたる’20年の東京パラリンピックではメダルが期待されている。

なぜ、Jリーグで一線を張ったGKが、障がい者スポーツへ転身を図ったのか。榎本は苦笑いする。

「そもそもまったくその気はなかったんです。FC東京からは普及部のコーチの打診を受けていましたし、高田敏志日本代表監督からお話をいただいたときもブラインドサッカーの知識はなく、コーチかスタッフで携わるのだと。そうしたら『現役で』と言われ、困惑したのを覚えています」

自身が「不器用な性格」という通り、コーチとして契約する以上、その他のことはできないときっぱりと断った。ましてや現役時代、U−20など年代別代表の経験もあり「重み」を知る榎本にとって、真剣にパラリンピックを目指す選手を差し置いて、代表選手になるのは失礼だという気持ちもあった。しかし、それでも熱心に誘う高田監督へ義理を果たそうと’17年2月の代表合宿に参加した。

「放課後ドッジボールをしている感覚で、ブラインドサッカーに触れ、単純に楽しかった。でも、代表入りは断るつもりでした。『これで固辞しても監督は気を悪くしないだろう』という打算も(笑)」

しかし、子供たちを教えるなかで、再三チャレンジすることの重要性を説いていた自分と、その行動が矛盾していることに気がついた。

’17年4月、ブラサカ日本代表の強化選手指定を受け入れた。選手として合宿に参加すると、サッカーというが、競技としてのギャップに苦労した。

「ルールが全く違うんです。GKは縦2m×横6m弱のゴールエリアから一切出られず、プレー範囲が狭い。シュートも足にクリーンヒットしない場合があるので、相手の体の向きからコースを読みセーブする“駆け引き”ができないなど、経験が邪魔になりました」

チームは榎本を迎えてくれたが、昨年12月のアジア選手権では6か国中5位と低迷、世界選手権の出場権を逃したのに、危機感のない選手たちに榎本は苦言を呈した。

「ミーティングでは敢えて言いたいことを言いました。『議論がない』と。選手たちは代表歴も長く、ファミリーのようで、馴れ合いの部分が目についたんです。8か月の門外漢が偉そうに、と思われても構わない。勝つための議論が面倒くさいなら俺が代表から去る、と訴えました。選手たちの背景や、境遇なんて俺には一切関係ない。競技としてメダルを獲ることだけを考えたいんだと……」

勝つことへの渇望。同じピッチに立つ者同士の議論は活発となり、戦績も上向きはじめた。そんな榎本は現在「三足の草鞋」を履く。FC東京普及部コーチ、明大サッカー部GKコーチ、ブラサカ日本代表選手。正直、朝から晩まで休む暇がない。

「3つ籍を置くことで、子供たちや大学生がブラサカに興味を持ってくれています。僕自身も競技をすることで、障がい者に対する見方も変わり、今はこの競技の魅力をどう発信するかを考えています」

常にチャレンジして、少しでも成長したいと言う榎本。その顔には当初の苦悩は微塵もない。

【榎本達也】(39歳)
’79年、東京都生まれ。’97年、浦和学院高から横浜M入団。’98年、U−19日本代表に選出、正GKとしてAFCユース選手権で優勝。’00年8月、川口能活に代わりJリーグ初出場。’01年、Jリーグカップで大会MVP。’07年、神戸、’11年、徳島、’13年、栃木SC、’15年、FC東京に移籍。’16年現役引退。’17年4月、ブラインドサッカー日本代表強化指定選手に。現・FC東京普及部コーチ。190cm、82kg。

2018年12月4日 日刊SPA掲載

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