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清水隆行 情報
管理人 / 2019-06-10 21:18:00 No.43407
清水隆行 12期
前U−15侍ジャパン監督 清水隆行氏(元読売ジャイアンツ)インタビュー 「怖さ」は「強さ」になる vol.1

読売ジャイアンツと西武ライオンズで現役14年間プレー。1485試合に出場し、通算打率.289、最多安打のタイトルにベストナイン選出、チームの優勝に幾度も貢献した華々しい実績。清水隆行氏の現役時代を知る人なら、間違いなく「一流選手」と言うだろう。だがその裏にあった意外な気持ちと、それに伴う活躍の秘訣。もし悩みの沼にはまっている高校球児がいるとしたら、清水氏の言葉から救いのヒントが得られるかもしれない。

★「打席では足が震えていた」

浦和学院、東洋大学、読売ジャイアンツ。プロ入り後はルーキーから開幕1軍でレギュラーに。プロ7年目にはシーズン191安打で最多安打のタイトルを獲得。清水隆行氏のキャリアを並べてみると「野球エリート」という言葉がぴったりと当てはまる。

しかしその実、本人はずっと「自分は劣っている」と思っていたと言う。

さらに、いつも「怖かった」とも。

「毎試合、最初の打席は足が震える感覚がありました」

現役14年間で出場した試合は1485。その内、打席に立った全ての試合の第1打席は最後まで足が震えていた――。プロで残してきた華々しい実績と比べると予想外の告白だった。

「楽しさがあったのはデビューして最初の頃だけです。なぜなら怖いものがなかったから。高校から大学へ行ってプロへ進んで。東京出身で幼い頃からずっと見てきたジャイアンツへ入団して。まさかプロへ行けると思っていませんでしたから、その世界でやらせてもらえることに対して最初は楽しみを覚えました。でもだんだん怖さの方が上回ってきて。

試合に出るようになり、レギュラーになると、失敗することの怖さがだんだん出てくるんです。結果を出し続けることでしか自分の置かれた状況を守り、さらに地位を向上させることはできませんから。となると、毎日積み重ねることが必要になる。その大変さと同時に、もし失った時の怖さが常にありました。他の選手はどうかわかりませんが」

5月31日に発売されたばかりの著書『プロで成功する人しない人』(竹書房)には、そんな清水氏の決して野球エリートでなく、それでもプロ野球の第一線で活躍し続けてきた秘訣が綴られている。そこには高校球児にとってもとても気づかされるヒントが散りばめられている。今回は書籍の内容に即しながら、ご本人の言葉で気づきのヒントを拾い上げてみたい。

★「勝ちたい」より「負けたくない」

話の端々からは、清水氏のリアリストとしての側面が見て取れた。夢を抱いたら迷わず一直線に突き進む…のではなく、どこか冷静に客観的に自分を分析している自分もいるのだ。それは浦和学院時代から変わらない。

「甲子園に行けたらいいな、とは思っていましたけど、『絶対に』というほどではありませんでした。なぜそんな冷めた部分を持っていたかというと、具体的に甲子園に行けるイメージを描けなかったのが一番の理由です。周囲のよく知るチームが甲子園に行ったこともなかったですし。最もイメージできたのは2年夏に埼玉県予選決勝まで行った時ですけど、大宮東に2−12で大敗してしまったので、やはりリアルにはイメージできず。これは性格や環境が影響しているのかわかりませんが、何事に対しても希望と現実の両方の見方を持っていましたね」

だが、そこまで勝利に執着することはなくても、練習で手を抜くことはなかった。なぜなら、生粋の負けず嫌いだったから。

「負けず嫌いでも、ちょっと違うのは『勝ちたい』より『負けたくない』という思いの方が強かったことです。失敗したくない、最悪の結果だけは出さないようにしよう、という気持ちが根底にあるので、そのためには与えられた目の前のことに対してはしっかりやらざるを得ない。さぼりたい気持ちがないわけではなかったですけど、それよりも、さぼったがために結果が出なかったら、自分の中では消化しきれない後悔が残ってしまう」

当時は強く意識することはなかったという。しかし今振り返ると、なぜ自分が努力を続けてこられたか、わかる。もちろんいい結果に結びつけばそれに越したことはない。だが練習をしたからといって、理想の結果が保証されるわけではない。ただ、最悪の結果は避けられるのではないか。少なくとも、やることをやりきっての結果なら納得できるのではないか。とにかく悪い方向に向かいたくない。その恐怖心が、結果として「質の高い準備をする」原動力となった。

「いろいろなところで劣っている、というのが自分の中にすごくあって。でも結果がどうなるかなんて、自分では決められない。自分が決められることといったら、できる限り練習して、やれることをやって準備するだけじゃないですか」

著書に詳しいが、高校時代から無意識に続けていた「準備」が奏功したのであろう、清水氏はその後の大学、プロでチーム内のレギュラー取りのかかる“ここぞ”という勝負所で結果を出し続けることになる。そして自称「劣った自分」が厳しいプロの世界で成功し続けるために、さらに思考を極限にまで突き詰めることになるのだ。

「先ほども言ったように、怖さもあれば緊張、不安もある。打率3割の好打者といえど、7割は失敗する。つまり、打席に立てばほどんどが悪い結果に終わる。それが怖い。でもプロとして野球が仕事になった以上、怖くたって打席に立ち続けなければいけまえん。怖い。でも打たなければいけない。では、どうするか」

重要なのは、「考え方を鍛える」ことだった。

2019年6月10日 高校野球ドットコム掲載

Re: 清水隆行 情報
管理人 / 2019-06-12 21:43:00 No.43421
活躍するために持つべき3つの視点とは 前U−15侍ジャパン監督・清水隆行氏(元読売ジャイアンツ)vol.2

読売ジャイアンツと西武ライオンズで現役14年間プレー。1485試合に出場し、通算打率.289、最多安打のタイトルにベストナイン選出、チームの優勝に幾度も貢献した華々しい実績。清水隆行氏の現役時代を知る人なら、間違いなく「一流選手」と言うだろう。だがその裏にあった意外な気持ちと、それに伴う活躍の秘訣。もし悩みの沼にはまっている高校球児がいるとしたら、清水氏の言葉から救いのヒントが得られるかもしれない。

本編では活躍するために必要な要素と、その要素を身に付けるための考え方を紹介していただく。

★的確な「考え方」を身につけるために

「よくプロ野球選手がメディアで話す時に『楽しむ』と言うことがありますが、楽しんでいるように見えても、それは怖さを知った上での発言なんです。その証拠に、みんな信じられないくらい練習する。なぜかといえば不安だし怖いからです。直接確認したことはありませんが、みんな、そんな負の気持ちを振り切りたいから練習に励む。
 僕なんかはたとえ試合を決める一打を放ったとしても『やった!』という快感は湧いてきませんでした。逆に『よかった…』とホッと安堵する気持ちが湧いてきたものです。辛いように聞こえるかもしれませんが(笑)、それでもやらなければいけないのがプロの世界なので」

毎試合、足を震わせながら打席に立つ。緊張しているのが自分でもわかる。体が硬直している。力みかえっている。それでも打たなければいけない。緊張を解くことはできない。ではどうするか。

「力を抜こうと思っても抜けない。その時にどう考えるか。僕の場合は左バッターなので、少なくとも力みがライト方向へ向かないようにだけ心がけていました。同じ力みでもセンター方向へ向けばいい方向に作用するので。というように、常に緊張状態の中でもどうにかしようと考え、動き続けること。その経験の蓄積が結果を、数字を残すことにつながります。一番よくないのは『考えない』ことです」

プロの世界ではいかに考え、具体的にプレーに適用するか、が成功するかしないかの分岐点になる、と清水氏は考える。
では、高校球児に当てはめてみる。おそらく何も考えないで練習やプレーをしている選手はいない。だが重要なのはさらにその先、「考え方」だ。考え方ひとつで、同じ練習メニューでも、その効果はマイナスにもゼロにもプラスにもなる。的確な考え方を身につけることは簡単ではないが、ヒントとなるポイントを3つ、清水氏が教えてくれた。

★的確な考え方を身につける3つの視点

【1.聞く耳を持つ】
「結果を残しているのであればまだしも、結果が出ていない状況下で周囲の人のアドバイスを聞かないのはよくありません。なぜアドバイスされるかというと、明らかな問題があるからなわけで。ただし、言われたことを単純にこなすだけでは考えていることにはならない。言われたことは、自分の中にある問題を解決するひとつの“例”にすぎないのであって、決して正解とは限らないということにまず気づきましょう。

そしてたいせつなのは、言われたことをヒントに、問題の原因を自分で探って見つけようとすること。コーチや監督など、アドバイスをする方も、なるべく選手本人が理解しやすいように、問題の原因を明らかにしてあげた方がいい。さらに、自分の助言が決して正解ではなく一例を示しているに過ぎないということを丁寧に教えてあげる。そうすれば間違った方向に進む可能性は少なくなると思います」

珍しくないケースとして、周囲の人からばらばらのアドバイスを受け、それをそのまま取り入れてみたら混乱が増し、本来の自分を見失ってしまった…ということがある。そういった迷いに陥らないためには、言われたことをただ受け売りするのではなく、あくまでヒントにとどめて、自分で解決しようとする姿勢をとることだ。

「ひとつのアドバイスで問題が解決するかどうか、は選手によって違ってきます。感覚的なものなので、どういうイメージを持てば言われたことができるようになるか、自分で考えてみる。するといろいろな方法が頭に浮かんでくるはずです。
そうすると、考えただけ頭の中で引き出しが増えることになる。プロ野球選手よりキャリアが少ない16〜18歳の高校球児にとって、『なぜ言われたか』を出発点に考えることは、引き出しを増やすきっかけとしてとても貴重な経験になります」

【2.アンテナの感度を上げる】
著書にも出てくるが、より的確な考え方を身につけていく上で格好の材料を集めるためには「アンテナの感度を上げる」ことが重要だと言う。ここで言う「アンテナ」とは、プレーの中で気になる点を見逃さずにとらえる感覚を指す。

「試合の結果、練習の結果、とにかく“結果”に対して向き合うことでアンテナの感度は上げられます。なぜその結果になったのか、その原因を考える習慣をつける。最初は試合での結果からスタートしてみるのがいいかもしれません。たとえばセカンドゴロを打った。ではなぜセカンドに飛んだのか。なぜボテボテになったのか、など、打球の方向や質の原因を考えてみるんです。これを突き詰めていくと、ティーバッティングひとつとっても考えるようになる。どの方向に、どのような打球を打つ、と決めてバットを振ったら思ったような結果が出なかったとします。そこには体の動かし方やバットの振り方など、いずれかに理由がある。自分なりに理由を見つけたら、その改善方法を自分なりに考えてみてまた試してみる。試行錯誤を繰り返すことで考え方は鍛えられていきます」

日々の練習、試合でアンテナの感度を上げることは、非常に疲れる。しかし、「わずらわしいかもしれないですが、一つ一つの結果を流さず、向き合うことが大事」と清水氏は説く。「極端なことを言うと、打席での一球の見逃し方にだってヒントが隠されていることがあります。見送った時に体が突っ込んでいたから、もう少し頭を残して見ようとか。ファールひとつにしても、自分が思っていた方向と逆方向にファールになったら思っている以上にバットが出てないから始動を早めてみよう、とか」

プロの一流選手の中には、一打席ごと、一球ごとに考えて修正を加えている人もいる、と清水氏は言う。逆に考えていない選手は、どの打席でも同じ結果に終わることが多い。 おそらく、「考えてプレーしろ」と言われた経験は誰にでもあるだろう。しかし、そもそもどう考え出したらいいのか、とっかかりをつかめていない選手も少なくないのではないだろうか。そういう時は、まず自分のプレーを振り返ることから始めるのが手っ取り早い。最初は分析が誤ることもあるだろう。それでも続けていくうちに、分析の精度は高まっていくはずだ。するとそのうち、自分のプレーだけでなく他人のプレーにもアンテナが張られるようになる。そのスパイラルにはまれば、アンテナの感度は加速度的に上がっていくことになる。

【3.変わる勇気を持つ】
思ったような結果が出ない時期に「己を貫く」「自分を信じる」ことで状況を改善した、という話も聞く。しかし清水氏は著者の中で、「結果を出し続けている一流選手は『変わる勇気』を持っている」と言う。

「決して好調でない時に変化を加えたとしても状況がよくなる保証はないし、さらにマイナスになってしまうかもしれない。プレーを変えるということは先が見えないぶん、リスクが伴いますし怖いものです。ですが、変えなければ状況も変わらない。そう考えたら変わらざるをえない。ではどう変わるか。その際に重要になるのが引き出しの多さです」

先に紹介した【1.聞く耳を持つ】、【2.アンテナの感度を上げる】を習慣化していれば頭の中の引き出しは増えていく。引き出しが多いほど、状況を上向きにする方法も見つけやすい。

「プロ野球選手に比べて高校球児の方がどうしても引き出しの数が少ないぶん、『変わる勇気』を持ちづらいと思います。引き出しが多いほど、どういう状態になったときにどうすればいいか、ある程度見えますしアレンジできますから。それは分かりますが、少なくとも試行錯誤だけは続けた方がいいです。 ただがむしゃらにティーバッティングでバットを振っても、ただ振るだけでは準備運動になってしまう。迷ったり焦ったりしている時ほど目的を持つ。そこからいろんなことを考えだすはずです。今振り返れば、自分は細かく言ったら飽きられるほどいろんなティーバッティングを試したものです(笑)」

変わらなければいけないのに頭と体が動かない。そうして現状に固まってしまっている選手がいたとしたら。まずは自分の頭の中に引き出しを増やすように心がけてみよう。止まったままでは何事も進まない。だが、考え方が広がるほど対応は柔軟になっていく、と思えば現状を切り拓くたいせつな一歩を踏み出せるはずだ。

2019年6月12日 高校野球ドットコム掲載

Re: 清水隆行 情報
管理人 / 2019-06-15 18:06:00 No.43428
前U−15侍ジャパン監督・清水隆行氏が読売ジャイアンツ時代に実践し続けた「一流の習慣」vol.3

読売ジャイアンツと西武ライオンズで現役14年間プレー。1485試合に出場し、通算打率.2899、最多安打のタイトルにベストナイン選出、チームの優勝に幾度も貢献した華々しい実績。清水隆行氏の現役時代を知る人なら、間違いなく「一流選手」と言うだろう。だがその裏にあった意外な気持ちと、それに伴う活躍の秘訣。もし悩みの沼にはまっている高校球児がいるとしたら、清水氏の言葉から救いのヒントが得られるかもしれない。

最終回となる今回は、プロ野球時代に見た「一流選手」の習慣や、昨年のU−15日本代表選手の活躍を振り返っていただいた。

★冷静で客観的な頭脳を保つために

ここまで「考え方を鍛える」方法を述べてきた。しかし、これを実践することは簡単ではない。人間には感情がある。野球という勝負ごとに真剣に取り組むほど、比例して喜怒哀楽も激しくなるのが自然だ。そんな状況下で常に頭を冷静に、クリアにしておくことは生半可なことではできない。

「感情を一定に保つというのは、やろうと思ってできることではありません。僕も若い頃は感情の起伏が激しく、とても見本となるような行動はとれていませんでした。でも、プロにはお手本となる存在がいましたので」

清水氏がお手本としたのは、ジャイアンツ時代、同じ外野手でレギュラーだった松井秀喜選手と高橋由伸選手。詳細は著書に譲るが、プレー面でもメンタル面でも、そして野球に向き合う姿勢の面においてもお手本になったという。

「自分が取り入れたのは同じことを続けること。調子がよかろうが悪かろうが、冷静だろうが興奮していようが、決めたことは必ずやる、と」

清水選手が決めていたのは――これは松井選手も高橋選手も同様だが――試合後にバットを振ることだった。

「ホームだったら東京ドームの室内練習場で、ビジターなら宿泊先のホテルのスイング場で、必ずバットを振ってました。時間の長短はあっても、振らない、という選択肢はなかった。単純なことですけど、経験を積むにつれ、とても大事なルーティーンだと思い知らされました。そう思わせてくれたのは松井秀喜の存在があったからです。彼はずっと振ってましたから」

例えば東京ドームで試合が終わったら、軽く着替えて水分や軽食をとったらそのまま室内練習場へ直行。そこで黙々とバットを振る。スイング時間は日によって変わる。すっきりしない場合は長くなることもある。

「でも僕が特別だったわけでなく、当時のジャイアンツの選手はみんなやってました。思い思いに室内練習場に来て、誰もしゃべらずバットの振る音だけが聞こえる時間が続く。みんな個々のリズムで、終わった選手から『お疲れ様です』『お先です』と言って出ていく。それが当たり前の環境であったことは、自分にとってとても幸運だったと思います」

この「試合後の素振り」は個々が試合の結果を振り返るたいせつな時間だったのではないか。また、毎試合後同じ行動を繰り返すことは、自分のメンタルをリセットし、翌日へフラットな状態で臨む状態を作り上げるルーティーンにもなる。

「当時のジャイアンツの外野手は、僕の他が松井 秀喜と高橋由伸。大スターが2人いるわけです。ということは、新しい外野手が補強されたら競わされるのは僕になる。正直おもしろくない気持ちになった時もあります。

でも、そこで腐ったとしても心配してくれる人はいません。代わりはいくらでもいるわけで、腐っても損するのは自分だけ。であれば、自分がやるべきことをするしかない。試合に出る出ないは自分でコントロールできることではありません。コントロールできるのは結果を出せるように最善の準備をするだけ。そう考えられるようになってからは、周囲の声などに惑わされることもなくなりましたね」

選手も人間である以上、様々な気持ちが思考に入り込んでくる。そんな気持ちの波をある程度抑えることが、的確な考え方を持ち続けるには必要になってくる。とすると、何か自分なりのルーティーンを見つけ、平常心を保つ、もしくは平常心に戻る時間帯を設けることが有効だ。清水氏はさらりと言うが、プロの世界での周囲の声は想像以上に大きい。そんな外野の声に惑わされず、自分を保ち、考え続けることができたのは、お手本を見習いつつ見つけたルーティーンがあったからに他ならない。

★「なぜ」を突き詰め正解は自分で出す

清水氏は2009年に現役引退後、ジャイアンツの打撃コーチを5年間つとめ、2017〜2018年には侍ジャパンU−15の監督もつとめた。当時U−15日本代表だった選手たちの話になるとパッと顔が明るくなる。

「2018年の第4回WBSC U−15ワールドカップメンバーでいうと、花田旭くん(大阪桐蔭)はセンター、小畠一心くん(智辯学園)はライトだったのですが、具体的にどうこうではなく、雰囲気がいい身のこなしをするのが印象に残っています。

畔柳亨丞くん(中京大中京)は右のピッチャーで、チームの中では最もバランスがよく力的には一番上でした。同じピッチャーでは金井慎之介くん(横浜)も腕が長くておもしろい存在で。

池田陵真くん(大阪桐蔭)は中学野球界のスーパースターで知らない人はいないと聞いていましたし…、有名といえば鈴木唯斗くん(東邦)はドッジボール界のスーパースターと聞いてました。たしかにすごいボールを投げるんですよ(笑)。今はまだ中学3年生ですけど、福原聖矢くん(安仁屋ヤングスピリッツ)は足が速く野球頭がいい。自分で考えて右方向とかに打てるんです。今後が楽しみな選手ばかりですね」

U−15日本代表では、彼らが持続的に成長していくために、ここまで述べたような「考える野球」を伝えた。

「15歳時点ではまだ理解できていない子がほとんど。それは自分もそうでしたし、仕方がないことで。でも、15歳時点では日本代表でも今後高校、大学と成長していく上で、考える能力は必要になってきます。ですから考える習慣がついてほしいな、と」

もし今の自分が指導者として、浦和学院時代の自分に教えることがあるとすれば、やはり「考えて野球をしなさい」と伝えるという。

「これは野球に限ったことではありませんが、漠然としてではなく『なぜ』をいつも考えながら動くことで考える習慣をつけることがたいせつだと思います。当時の僕が聞き入れるかどうかは疑問ですけど(笑)。教える側としては、なぜそれをすべきなのか、目的までしっかり伝えたいと思いますね」

話を聞いていて印象的だったのは、「僕の場合は」「他の人はどうかはわからないですけど」という言葉を端々に挟み込んできたことだ。今回の取材記事は、主に高校球児が読むと予想して、自分が言っていることはヒントにはなっても、必ずしも正解ではないということを気にしての配慮だったのだろう。指導者としての気配りがそこには見えた。

そして気づいたことがもう一つ。清水氏は怖さを自覚し、それでも向き合う勇気を持つことでプロでの成功を収めた。ともすると、怖さと弱さは同義にされかねない。しかし、怖さを認めることは、決して弱さに直結するものではない。怖さに対して目を背け、逃げることが弱さであって、逆に怖さに対して真正面から向き合うことは強さになる。その点を自覚できれば、その先に清水氏が至った境地が見えてくるかもしれない。正解を導き出せるのは自分しかいない、と達観する境地に。

2019年6月15日 高校野球ドットコム掲載

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