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序
K-クリスタル /
2008-04-19 20:07:00
No.1174
光はない。かといって、闇に閉ざされてもいない。
そこは、どこでもない場所・・・。
雲一つない中、太陽もまた見当たらないというのに、薄暮、いや白夜を思わせる空が上には広がり、そして、下には広漠たる大地が果てもなく続いている――が、そう言えるとしたら、そう認識する者があってのことである。
そこには、何ものも存在しない。ほかのありとあらゆる次元と空間から隔絶され、その中に変化するものも何もない。
そうであるからには、そこでは時間も流れていなかった。
一にして全。全にして一。これ以上何を加えようもなく完成していると同時に、何をもってしても補ないようがないほど決定的に欠けている。
本来、どこにも存在しない――ありうべからざる世界。ある一つの目的、そのためだけに、創造された――
だが、そこに変化が現れ、止まっていた時が進み出す・・・。
いつの間にか、一人の男がそこにいた。
ここがどこか、自分がいつどうやってここに来たのか、本人にとっても分からないことだった。だが、昏く深くあくまで冷たい目はさざ波ほどの動揺も映し出してはいない。
目は一つしかない。片方の目は潰れ、閉じられたままである。だが、残された方のその目は全てを見通さずにはおかないように、いま眼前を見据えていた。
祭壇のようなものがそこにしつらえられている。
それは人間の文明が知らないばかりか、かつて想像したことすらない形体だが、それでも、ヒトの原初的な畏れを呼び起こす威厳があった。だが同時に、?神聖?と呼ぶには、はばかられるものでもあった。
その上に一振りの刀がある。
安置されているのではなかった。祭壇の中央辺りに突き立てられているのだ。刀身の半ばまで埋まるくらいに深く・・・。
日本刀のようにも見えた。
否、全体の形はそう思わせもするが、むろんそのものではない。印象が近いだけで、正確には様々に異なっており、人の手になるものとも見えず、材質も全く不明である。
いや、そんなことなどより、何より――
それからは明確な意思が感じられる。単なる物体ではあり得なかった。それは音声による通常の、もしくは、思念波のようなものであろうと――あらゆる意味で、言葉に類するもので示されたわけではなかったのだが・・・。
「お前か、俺を呼んだのは」
委細構わず、問いかける。
すると、応えが返る。
起こったことは、剥き出しになった半分ほどの刀身が光を反射して一瞬輝いたように見えただけ――しかし、光源の所在も判然とせず、光の射す方向も不明瞭なこの場所でである。
しかし、それで、その意思は伝わったようだった。
「抜けというのか・・・?」
普通の者なら、近づくのも躊躇したことだろう。だが、気にするふうもなく祭壇へ近づき、無造作にその刀の柄に左の手をかけた。苦もなく抜ける。突き刺さっていたのが不思議なほど、何の抵抗もなく・・・。
――が、その途端・・・!
ぐにゃりと視界が歪み、覚えず膝をつく・・・瞬間、それが決してただの錯覚などではないことを卒然と悟っていた。
柄に触れた手のその部分から身体、いや、それだけではない、際限なく何もかもすべてが吸い込まれ、消失していこうとする感覚・・・。
「貴様っ・・・!!」
手を放すことは出来なかった。すでに自分の意思で動かすことが出来なかったがゆえに・・・。
そして、この世界全体が刀の存在する一点に向けて収斂される――広大な空全体がそこを目がけて一斉に落ちてくる・・・また、大地のことごとくがそれへ向けて同時にわき上がろうとする・・・そうした気配・・・。
もし、数瞬遅かったら、すべて終わっていたことだろう。
右手で、左手の手首を打つ。指を、手を開かせる、経穴を。できる限り素早く――だが、焦りで打つべき所を外すような乱れは見せず・・・仮に外していたとして、二度目はなかった。
五感全てが悲鳴を上げ混乱し、正常な通常の機能を失いつつある中、鋼鉄の意志を持って、正確に。
放された刀が下に落ち、再び祭壇の上に音もなく突き立った。
周囲の、感覚に覚えた異変も収まっていた。
刀身が光を放った。一度目より鈍い光を・・・今度は何かの意思は伝わってこなかった。代わりに、無念さが重い霧のように広がった。獲物をいったんは口の中まで入れながら、牙に引っかかった皮一枚こそげ落としただけで、むざむざ逃してしまった肉食生物のそれのような・・・。
そしてまた次には、辺りに何ものの姿もなくなっていた。
時は、また再び凍えた。
序
K-クリスタル /
2008-04-19 20:10:00
No.1175
※
気がつくと、山あいの高原だった。青空には白い雲が浮かび、吹き渡る風が一面に茂る草に縞模様を作ってなびかせる。それより、踏みしめている足元の方が下だという、確かな重力感覚があった。通常の、あるいは、以前いた世界に戻ってきたことを知った。
(俺を喰いそこねて、吐き出したか・・・)
意識の流れはいったん途切れていたが、認識できなくなっただけで、自分が正確には気を失っていたようなわけではないことは解っていた。夢でも幻でもない。
その確たる証拠は、左手にあった。――いや、事実としては、?なかった?と言うべきであろう。左手の多くの肉が融けるように崩れ、掌と指の一部では、骨までが露わになっている・・・。
(・・・?)
いぶかしむ。強い痛みを覚えること、そして、その原因である傷がそのままであることに。
軽い傷ではない。深手と言っていい。見ているうちにも血は溢れ続け、それも一定のリズムで多くの量が噴き出す。搏動に合わせ――それは、ある程度大きな血管が切れている印だった。さわらずとも、脈を打つのがその近くで感じられる。そこに、もう一つ心臓ができたかのようだ。
いずれ、何もせぬまま短時間で癒えるような傷ではない。そのまま残っていることに、なんの不思議もない――ただし、一般には、である。
この男にとっての通常なら、治り始めていてしかるべきだった。今は戦いの場にない以上、完治まではいかないとしても、あれもまた、まごうかたなき戦いだったからには・・・。
(奴に喰われた痕だからか・・・)
あそこには、あれ以外には何もなかった。だが、おそらくは、自分以外にもこれまでに何人か、あるいは、もっと多くのものがあの場所に呼び寄せられ、そして、ああしてあの刀によって跡形もなく消え去ってきたのだろう。
容易に想像がついたが、そのことに関心はなかった。あるのは、あれの持つ力についてである。
(――使えるか?)
もう少しで、自分自身あれに喰われるところだったというのは、充分承知している。助かったのは、半ば僥倖に過ぎないことも・・・だが、だからといって、避ける理由はない。どんなに危険であったとしても、何の手段もないなどということはない。
――とりあえず、今はその前にやることがある。
少し辺りを歩き回ると、目当てのものが見つかった。
人の背の高さに迫るほどに大きな岩。大きさもだが、日なたにあって、日の光を充分浴びていることが条件を満たしていた。
右手をまっすぐ伸ばし、掌を岩に当てる。思ったとおり、その面は温かいというより、熱さを感じるくらいであった。
だが、このままでは役立たない。少しの間、その姿勢のままでいた。たちまち掌に伝わる熱さは高まり、次第に通常では考えられないほどの熱を持ち始め、手を当てた辺りの岩肌からゆらゆらと陽炎が立ち上る・・・。
熱を与えたわけではなかった。
一方で、岩が自身で日を遮り、日陰になった部分では、表面がうっすらと白い衣を纏ったようになり、それが幾重にも折り重なって、徐々に白が強くなっていった。――霜。季節、そして、気温とまったく無関係に、霜がつき始めているのだ。その部分の温度は、それほどに下がってきているのである。
真っ当な熱力学を無視して、岩全体が持っている熱エネルギーがその表面上の一ヶ所に偏って集まりつつある――いや、そう集めたことによる結果だった。
しかし、それでも――
(まだ、足りんか・・・)
予想より、この岩が持っていた熱の総量は少なかった。
(ならば――)
右手を離す。そして、一つしかない目でその部分をねめつける。どこまでもまっすぐ強く――あたかも視線で、岩を穿つかのごとく・・・。
最初のうち、見た目に何の変化もなかった。
だが、その裏ではとてつもないことが起きつつあったのである。
岩の表面の一部が、やがて、ぼんやりと赤い光を帯び出した。そして、だんだんそれが強くなる・・・。
そこに現れてきていた熱量は、いまや、岩の内部に存在する熱をすべてを合わせた量を完全に凌駕していた。
――現在だけではない、この岩がかつて持っていた熱量をも、時間を越えて、いま現在のこの場に無理やり引き出したのだ。
ついに、硬い岩の表面が飴のようにとろけ始めた。
それを確認すると、傷口をぬぐい、中に丸く切断面の見えている大きめの血管を右手の指でたんねんに押しつぶし、その上で、おもむろにその左手をそこに――限られた面積の溶岩に押しつける。
空気がはぜる。水分が一瞬で蒸発する音と共に、水蒸気ではない、ものの燃える白い煙が上がり、血と肉の焼け焦げる臭いが漂う。
そのまま、いた――ゆうに十秒以上ものあいだ。
痛みを感じていないわけではない。現に、筋肉は腕ぜんたいに至るまで、固く強張るほどに引きつれている。
それをぴくりと眉を動かしたのみで、苦痛の呻きすら洩らさない。
痛みを覚えたとき、動物が呻きや叫び声を上げることには、重大な意味がある。そうすることで身体は痛みへの対応をはかり、また、いささかなりとそれを受容できるのだ。
しかし、常人なら、ショック症状を起こしかねない激痛の中、生き物として当然な、そういった本能的反応さえ、否定している。
いや、もし、そうする気があるなら、初めから痛みを感じないでいられることもできたのである。自分の痛覚を操作するぐらい、わけもないことだった。
だが、あえてしない。痛みを避ける必要も理由も、自分に認めない。
何より――
いかな激痛でも、今もなおこの胸の奥を灼きただらせる痛みに比べれば・・・ただの肉体的な苦痛など、まったく何ほどのことはなかった。
だから、ねじ伏せる。たとえ、他の者にとって死ぬほどの苦しみであろうと。
だが、自分から苦痛を求めるようなこともまたしない。あえて自身を傷つけたのは、かつてただ一度のみ。その痕は、今も額にある。他の無数の傷が次々と消えていく中、この十字の傷だけは生きている限り残るだろう。それは自ら己に刻んだ罰として、魂にも刻印したものだからだ。
それより他のことはしてこなかった。それで充分と考えてのことではない。それ以上、たとえどんなことをしたところで、到底足りはしないと思っているためだ。そのうえで、必要も意味もなく自分を痛めつけるのは、快楽に溺れるようなことと本質的に何ら変わりもない。より深い痛みから、いっとき目を背けるためのごまかしでしかないのだ。
自分自身に関することにも寸毫の揺らぎも曇りもない、冷酷なまでに透徹した思考はそこまで見切っていた。
今も正確な判断が困難なはずの状況で、全身に脂汗を滲ませながらも、あやまたず充分と見きわめただけの時間そうした後には、手を離した。
左手は、ひどいありさまだった。
だが、とりあえずこれで出血は止まる。
実は、手を元に戻すだけなら、おそらく他にも方法はあった。岩にやったように時間に干渉し、手の時間だけ無理やり過去に戻せば、あれに喰われる前の状態に戻りはしたはずなのだ。
だが、そうする気はなかった。元に戻すということは、あれに触れれば、また同じように喰われるということだった。そして、今度こそは、手のみならず身体まるごと喰われるかもしれない。それでは意味がない。まったく元のままでは、不足なのだ。受けたこの傷を踏み台にして、さらに上に行かねばならない。
探しだす。あれを使える方法を――それに必要というなら、そのための力をもまた、手に入れる。
どこか分からない遠くを一つきりの目が見やると、その姿はすでに辺りにはなかった。
高原を、また一陣の風が渡っていく・・・。
血の十字架(ブラッディー・クロス) Episode03 ―?裏?開封― prologue 了
始動・・・?
K-クリスタル /
2008-04-19 20:14:00
No.1176
サテ、はじめてしまったですよ、ツイに
じつはコレだけぢゃなくて、
同時シンコーでホカにもいくつかやるかもしんない・・・
イヤ、んなムリしよーったって、
ナカナカむずかしーとゆーのはわかっているのだが・・・
ケド、フト気がついたら、今年はじめないと、
ナカナカとっかかりがつかめそーにない
ナンもやんないままおわっちゃうとゆーよーなコトにはしたくないし
ナンで、
とりあえずはじめるダケでもはじめよーかと、そーゆーワケです、ハイ
いくつドコまでやれるかわかんないけど、どーか見まもっていてください
ご感想ご意見ご質問等もお待ちしてます
――あー、ヒトツだけ、あらかじめ・・・
お気になったかもしれませんが
本文の描写はまちがいではないです
カンディードの兄貴は片目でした
しかし、キャラしょーかいに
んなせってーがナイのも、マタまちがいではありません
つまり、片目だったのは、コノ当時のコトでありまして、
この後しばらくしてから、マタそーではなくなってるワケですなw
イヤ、コレは、せってーの追加ヘンコーですらなく、ハジメから決まってたことです
そいで、ナンで片目だったかとゆーと、仇である魔神に抉りだされたからです
このあと(このエピソードすべてがおわって)シバラクのち、喪った目を取りもどしますが・・・
ソレはマタ、別のハナシになります
長い旅路
ライオンのみさき /
2008-05-05 17:53:00
No.1186
感想遅くなりました。申し訳ありません。
でも、とうとうカンディードさんの物語が本格的に開始ということで、いやが上にも期待が高まります。
それで、お話は前からお聞きしていた?裏?をカンディードさんが手に入れた時の……と申しますより、?裏?はただの武器ではなくて、はっきりと独立した意思を持った存在のようですから、彼(?)とカンディードさんとの出会いの物語なんですね。
ですけど、その?裏?……何だか、思った以上に凶悪ですね。カンディードさんとの関係は本質的には全く友好的なものではないというのはうかがっていましたけど、そもそもは?裏?の方がカンディードさんを自分の所へ呼び寄せたわけだったんですね。それも、“食べよう”として ・ ・ ・ ・ (汗)。カンディードさんに対する興味は、そういう――捕食対象ということでしかなかったんでしょうか? でも、だとしても……?裏?がそういう対象として選ぶのは、それだけの存在――力ですとか、素質を持った方に限られるということなのかもしれませんね。
それにしても、意思があるとはいっても、何か科白のような形で示されるわけではありませんから、?裏?は正確にはどういうことを考えているのだか分からなくて、その点、いっそう無気味な気がします。
でも、危ういところで九死に一生を得たはずのカンディードさんはそれでほっとするどころか、逆にご自分の力として使えないかとお考えになったようで……この点、少なくとも現時点では?裏?の方がずっと強力なようなのに、たとえ自分より強い者が相手であっても、恐れることなく、かと言ってただ無謀でもなく、必ず何か方法を見出して対応するというところに、この方の特徴が現れていると思いました。
今回は他には特に敵という存在は登場しませんでしたけど、でも、どう考えても、カンディードさんにとって本来の敵で仇でもある呪詛悪魔のたいていの人達より、この?裏?の方がよほど恐ろしい脅威のように思います。それをこの先、カンディードさんがどうやってそういう存在を手にすることになるのか、そして、その結果、すでにただでさえお強いカンディードさんがこのうえさらにどんなお力を得ることになるのか、非常に楽しみです。
――ですけど、今回拝見していて同時に思いましたことは、カンディードさんの強さというのはやはり、決して単なる能力の強さだけではないのですよね。もちろん、現在でも熱量を操ったり、時間に干渉したりなど、そのいろいろなお力もすでにすさまじいものではありますけど、むしろそれよりも、何があっても揺らがない精神力・冷静さ・信念、そして、どこまでも自分の流儀ををくずさない強靱な意志といったものこそがこの方の強さの本質のように思われました。
とりわけ印象深かったのは、ご主人様をお守りできなくて、これ以上ないほどの自責の念に苛まれ続けながらも、そういう境遇の他の方ならたぶん陥りがちな、自分で自分を傷つけるような誘惑にはわずかなりとも屈することがなかったというところです。何の迷いもない明晰さでもって、それすら“逃げ”だと冷徹に見なして……。
ですけれど……そういうカンディードさんは確かに強いのでしょうけど、わたしにはその強さというものはとても悲しいものだというように映りました。そしてまた、あまりに強すぎるがゆえに、そうしたご自分の悲しさについに気づくこともないのだと……そう思えてなりません。ご自分でお分かりにならなくても、それはあまりに救いがなく、不幸なことだと思います――もちろん、この方はそうした他人の評価や考えなど、一顧だにすることもないのでしょうが……。
ご自身が誰かを頼ったりするようなことがないというのは言うまでもないことと思いますが、でも、逆にどなたかの頼りになったりすることもまた、全くないのでしょうか……? そういうふうに、人との関わりはもう、一切拒否なさって……? かけがえのない方を喪った時、それはもう取り返しがつかないことですから、何をもってしても全く元に戻ることはかなわないでしょうけど、それでも、人は他の人との新しい出会いによって、また生きていけるようになると思うのですが――サキさんがレオンさんに会え、そして、レオンさんはサキさんに会えたように。ケンさんが真吾さんと再会できたように。メティファさんやアーニー君にもロイ司令との出会いがありました。たとえ、相手がどういう方でどういうおつもりだとしても、確かにそれであの人達は新たな生きる力を得たのでした。
でも、この方はご主人様を亡くされた後には、もう誰も必要とはされないのかもしれませんね。本当にどこまでもただお一人で行かれる方なのかもしれません。
それでか、この方にはまた何と申しますか、“永遠の放浪者”というようなイメージもあります。決して、安住の地は持たない――このお話の中でも、それぞれの舞台から“去り”続けていますし……。
そういう印象は他にカイルさんにも覚えるのですが、今はご主人様がいない上に、フェンリル隊員やDFの方達のように何かの組織に所属しているわけでもなくて、基本的に単独で行動する方だからということもあるのでしょう。その意味では、この方達にはよく似ているところがあるようにも思います。――そうした一匹狼のお二人が対決するという、トーナメントのお話の方も早く拝見したいですね。
そして、この方のその長い旅路の果てにいったい何が待っているのか……それは、カンディードさんの物語全部が終わってみないと分からないことなのでしょうし、ずい分、壮大なお話になりそうですけれど……とにかく、とりあえず今は今回のお話の続きを楽しみにお待ちしております。
Re: 序
エマ /
2008-06-16 00:32:00
No.1194
カンディードさんのSSがついに!!
って、ついにといいながら感想が2ヶ月ほど遅れてますが(冷や汗)
「裏」開封のストーリーとは、興味深いですね。たしか、聖属性の剣と相対として生まれたネガティブな属性の剣の一つ、ということでしたね。
カムドの「殲魂」でその設定をパク・・・あわわ、拝借した立場としても、これは刮目せねばなりませんなw
封印場所は、天界のどこかの施設というわけでもなく、かなり外れ?の特殊な空間のようですね。裏の超常的な雰囲気にはあっていると思いますが。もしかしたら、なんらかの条件を満たさないとその空間に入る事すらできないのでしょうか。後半、普通の世界に吐き出されたような感じでしたしね。
こういう封印された剣って抜くのが大変というイメージがありますが、逆にあっけなく抜けるけど、その婆で抜いた者を取り殺し、手から離れたらまた地面に元通りに突き刺さる、という形が新鮮に感じました。カンディードを自分から誘おうとしていたようだし、口があってしゃべっている訳ではないですが、意志を持った刀という印象が強くしますね。それも、自分を抜こうとする者たちを食らって生きる狡猾な意志・・・。ちょっと、食虫植物みたいなものも連想しましたがw
人とモノの対峙ではありますが、明らかに食うか食われるかの戦いだったわけですね。
それにしても、カンディードの力って時まで操るんですね。血を止めるにしても岩の熱を移動させて血を焼き止めるという時点ですごいのに。血を肉ごと焼いて止めるなんてカムドでもしませんよw サキさんも時空を操るという他の守護天使が持ち得ないスペシャルな能力を持っていますが、カンディードの場合はどうやって時を操る能力を獲得したのでしょうね。
あと、カンディードにとっては、肉が多少ちぎれたり焼かれたりするより、失血の方を恐れているのでしょうか。そういう部分はまだ人間と一緒で、さすがに血がなくなるとダメなのかな。一応、超人でも生き物だしな。うん。
しかしこの頃のカンディードって、片目が潰れていたのですか。彼の能力からすれば直せそうな気もしますが、あえてそうしないのかな。もしかしたら、敵の魔神をヌッコロして目玉を取り返して填め直すのかな?(笑)
いや、それにしても、面白かったです。今度はどうやって力を付けて再挑戦するのでしょうか。気を長くして続編を待ってます。
カムドの「殲魂」開封もいつか書きたいですね。カムドの場合、さすがに時を操ったり熱を移動させたりみたいな神様みたいな事はできないんですが、それなりにインパクトのあるSSに出来たらと思うております。
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そこは、どこでもない場所・・・。
雲一つない中、太陽もまた見当たらないというのに、薄暮、いや白夜を思わせる空が上には広がり、そして、下には広漠たる大地が果てもなく続いている――が、そう言えるとしたら、そう認識する者があってのことである。
そこには、何ものも存在しない。ほかのありとあらゆる次元と空間から隔絶され、その中に変化するものも何もない。
そうであるからには、そこでは時間も流れていなかった。
一にして全。全にして一。これ以上何を加えようもなく完成していると同時に、何をもってしても補ないようがないほど決定的に欠けている。
本来、どこにも存在しない――ありうべからざる世界。ある一つの目的、そのためだけに、創造された――
だが、そこに変化が現れ、止まっていた時が進み出す・・・。
いつの間にか、一人の男がそこにいた。
ここがどこか、自分がいつどうやってここに来たのか、本人にとっても分からないことだった。だが、昏く深くあくまで冷たい目はさざ波ほどの動揺も映し出してはいない。
目は一つしかない。片方の目は潰れ、閉じられたままである。だが、残された方のその目は全てを見通さずにはおかないように、いま眼前を見据えていた。
祭壇のようなものがそこにしつらえられている。
それは人間の文明が知らないばかりか、かつて想像したことすらない形体だが、それでも、ヒトの原初的な畏れを呼び起こす威厳があった。だが同時に、?神聖?と呼ぶには、はばかられるものでもあった。
その上に一振りの刀がある。
安置されているのではなかった。祭壇の中央辺りに突き立てられているのだ。刀身の半ばまで埋まるくらいに深く・・・。
日本刀のようにも見えた。
否、全体の形はそう思わせもするが、むろんそのものではない。印象が近いだけで、正確には様々に異なっており、人の手になるものとも見えず、材質も全く不明である。
いや、そんなことなどより、何より――
それからは明確な意思が感じられる。単なる物体ではあり得なかった。それは音声による通常の、もしくは、思念波のようなものであろうと――あらゆる意味で、言葉に類するもので示されたわけではなかったのだが・・・。
「お前か、俺を呼んだのは」
委細構わず、問いかける。
すると、応えが返る。
起こったことは、剥き出しになった半分ほどの刀身が光を反射して一瞬輝いたように見えただけ――しかし、光源の所在も判然とせず、光の射す方向も不明瞭なこの場所でである。
しかし、それで、その意思は伝わったようだった。
「抜けというのか・・・?」
普通の者なら、近づくのも躊躇したことだろう。だが、気にするふうもなく祭壇へ近づき、無造作にその刀の柄に左の手をかけた。苦もなく抜ける。突き刺さっていたのが不思議なほど、何の抵抗もなく・・・。
――が、その途端・・・!
ぐにゃりと視界が歪み、覚えず膝をつく・・・瞬間、それが決してただの錯覚などではないことを卒然と悟っていた。
柄に触れた手のその部分から身体、いや、それだけではない、際限なく何もかもすべてが吸い込まれ、消失していこうとする感覚・・・。
「貴様っ・・・!!」
手を放すことは出来なかった。すでに自分の意思で動かすことが出来なかったがゆえに・・・。
そして、この世界全体が刀の存在する一点に向けて収斂される――広大な空全体がそこを目がけて一斉に落ちてくる・・・また、大地のことごとくがそれへ向けて同時にわき上がろうとする・・・そうした気配・・・。
もし、数瞬遅かったら、すべて終わっていたことだろう。
右手で、左手の手首を打つ。指を、手を開かせる、経穴を。できる限り素早く――だが、焦りで打つべき所を外すような乱れは見せず・・・仮に外していたとして、二度目はなかった。
五感全てが悲鳴を上げ混乱し、正常な通常の機能を失いつつある中、鋼鉄の意志を持って、正確に。
放された刀が下に落ち、再び祭壇の上に音もなく突き立った。
周囲の、感覚に覚えた異変も収まっていた。
刀身が光を放った。一度目より鈍い光を・・・今度は何かの意思は伝わってこなかった。代わりに、無念さが重い霧のように広がった。獲物をいったんは口の中まで入れながら、牙に引っかかった皮一枚こそげ落としただけで、むざむざ逃してしまった肉食生物のそれのような・・・。
そしてまた次には、辺りに何ものの姿もなくなっていた。
時は、また再び凍えた。