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SS企画!「ご主人様入れ替えSSを書こう!」
エマ / 2010-07-25 03:11:00 No.1830
SS企画!「ご主人様入れ替えSSを書こう!」

ひさびさながら、SS企画をやりたいと思います!
今回のお題は、互いの作品のご主人様を入れ替えたお話。

例えば、うちのティコとロックが美月ではなく、夢カルの光彦さんをご主人様として1日仕えるという設定でSSを書く。
または、H.A.Pのメンバーが千田さんをご主人様として数日間仕える、とかです。

守護天使とご主人様のペアが入れ替わることで起こる普段とちがうギャップの面白さがSSでできると思います。

提出期限は9月中。できた作品は掲示板に投下してください。

決まりは以下です。
・エログロ禁止
・誹謗中傷他作を貶める行為禁止
・一人で何作も投稿しても可

以上、みんなで楽しくSSを書きましょう。では、始めー♪

ぱられる!
竜人 / 2010-07-30 01:45:00 No.1838
どうやら一番乗り・・・


https://docs.google.com/document/pub?...


しょっぱなから変な作品。エマさんの意図から外れたかもしれない。
―――だが私は謝らない。

Re: SS企画!「ご主人様入れ替えSSを書こう!」
エマ / 2010-08-01 01:44:00 No.1841
私も書いてみました。まずは夢カル編

https://docs.google.com/document/pub?...

夜の王様
ぴよ / 2010-08-10 23:24:00 No.1855
E「そこのしゃっちょ〜さん、うちよってかない? 可愛い娘そろってるよぉ〜」

4人は看板を見上げるとネオンには"EMASTATION"の文字がピカピカ光っている

千田「1時間5000円ポッキリ!
 なかなか良心的なお店だね、このお店にしましょうか?」
山下「ぼ、僕はこういうお店初めてなんで・・・・・・皆さんにお任せします・・・・・・(テレテレ///)」
王星明「日本文化、拝見! 超絶的日本美少女、興味津々!」
千田「功坂さんは"ここでよかった"ですか?w」
功坂「うちのうさこほど可愛いくないだろうけど、"ここで"いいよ!w」
E「それじゃあ、4名様、ご案ぁん内ぃ〜!」

店内に入るとピンク色の雰囲気が独特の高揚感を感じさせる
テーブルへと案内された4人は早速周囲を見渡した
女の子は皆派手な服装をしているが、ケバイという訳ではなく
可愛い少女のような娘から美人なお姉さんと、高水準な容姿の美女が揃っていた

千田「本当に可愛い娘揃ってるね〜、いや〜たまりませんなぁ〜」
功坂「千田さんはよくこういうお店に・・・?」
千田「いえいえ、あまり通いつめると、うちの恵が五月蠅いもんで」
功坂「僕たち、モテモテですもんね! 王さんは家の方大丈夫ですか?」
王星明「志摩、先日発売電子遊戯、今夢中、大丈夫!」
山下「こんな所来てるのバレたら、かすみさんに怒られる〜」
千田「おっ!おいでなすった」

千田がいち早く気付くと4人の女の子が、席へとつく

みゆう「こんばんは〜!蚊のみゆうで〜す。みゆうちゃんって呼んでね!」
まゆり「蚕のまゆりです!蚕だからって解雇しないで下さいね!」
あすか「ゴキブリのあすかです!ゴキブリって昔はゴキカブリって言われていたんですよ〜!」
ひとみ「アリのひとみです!こんな私はアリですか?^^」

千田「うっひょ〜!君、可愛いね!」
みゆう「きゃっ、うちはお触り厳禁だよ!"・エロ禁止"の看板見なかった?上の方に書いてあるでしょ!」
功坂「夢カルな展開は無いんだ、残念だね!」
みゆう「ごめんね〜、最近条例がね、うちも厳しいんだ〜」
千田「じゃあさ〜、仕事(シナリオ)終わってからなら良いんだ」
みゆう「う〜ん、どうしよっかな、私高いよ〜!」
千田「高い割に、胸はちょっと小さいかな?」
みゆう「ああ〜!! "・誹謗中傷、貶める行為"も禁止だよ! 無い方がいいって人も沢山居るんだからね!」
千田「ごめんごめん〜、悪ノリが過ぎたよね〜、ハハハ」

ひとみ「あっ、あの〜、もしかして『星導』の王星明さんですか?」
王星明「肯定!(ニコッ)君、僕的信者?人気者辛〜!応援多謝!」
ひとみ「きゃーきゃー」
功坂「王さんは占いも得意なんだよね」
まゆり「じゃあ、私と功坂様の相性占ってくださいませ」
功坂「えっ。僕とかい? 参ったな〜、ははは」


3者が女の子たちと盛り上がる中、1人席に浮いた青年が静かにグラスを傾けていた

山下「みんなあんなに打ち解けて・・・・・・」
あすか「フフフ・・・・・・楽しんでいらっしゃいますか?」
山下「うわっ」
あすか「お隣いいですか?」
山下「ひゃっ、ひゃい!」
あすか「フフフ・・・・・・お兄さん、こういう処は初めて?」
山下「えっ、は・・・・・・」
あすか「クス、そんなに緊張しないで・・・・・・」
山下「き、き、き、き、緊張なんてひてまひゃんっ」
あすか「フフ、可愛い」

徳森「ゴラァ!!!」

4人が愉しい一時を過ごしていると、突然ガラスの割れる音と怒声が店内に響き渡った

徳森「夢カルな展開は無しやと〜、舐めとんのか〜ワレェ」
E「あ、あの〜、お客さん、こっ、困ります
 その、当店は"・エロ禁止"となっておりますので・・・・・・
 どっ、どうか・・・・・・(((ガクガクブルブル)))」
徳森「うるせー、眼鏡は引込んでろっ!」

徳森の893パンチがEの鳩尾に決まる! Eに62のダメージ!

E「グハッ!」
大森「兄貴カッコイイ! おいらも!オラァ!!!!」

大森の893キックがEの眼鏡に決まる! Eの眼鏡に99のダメージ! Eの眼鏡は大破した!

E「ヘブッ!」
並森「なんとか言ってみろよ〜、オラァ!!!」

並森がEの・・・・・・

千田「待ちなさい」

彼らの一方的で理不尽な暴力を止めたのは千田だった

千田「"エロ"だけじゃなく、"グロ"も禁止ですよ(ニコッ)」
徳森「なんじゃ、兄ちゃんよ、文句あんのけ?ゴラァ!!!」
千田「周りを見て御覧なさい、貴方達の行いの所為で女の子が怖がってるじゃないですか」

千田の紳士的な態度が徳森、大森、並森の神経を逆撫でする

徳森「兄ちゃんよ〜、天下の吉野組に逆らってタダで済むとは思うなよ!」
千田「タダで済まないのは貴方達です」
徳森「やっちまえぇええええ!!!」
千田「仕方ありませんね・・・・・・千田一心流・・・・・・」

そこで千田は気付く、刀が無い事に!?

千田「まっ、ま、ま、ま、マテ!!!!」
徳森「オラァ!!!!!」
千田「アギャアアア!」
大森「ヌラアアア!!!!」
千田「ぶべぇええ!!!」
並森「おっ、わたーーーー!!!」
千田「グガッ!!!!」

なすすべなくフルボッコされる千田

徳森「"グロ"は禁止なんだろ、この位で勘弁してやる」
大森「兄貴優しいっ」
並森「8年ぶりの登場で気分がいいから、運がよかったなぁ!ははっ」

暴れた事で怒りを発散させた男たちは金も支払わず店を去っていく

功坂「酷くやられましたね・・・・・・」
王星明「私手洗席外、私席居仮定、私余裕撃退、残念無念!」
山下「・・・・・・・・・・・・(絶対嘘だ、びびって出て来なかった癖に)」
千田「お・・・・・・お前ら・・・・・・」


みゆう「バカだよ、弱いのに、でもカッコ良かったよ!」
まゆり「そうですね」
あすか「勇気ある人好き」
まゆり「じゃ、私が手当てしますね」
みゆう「いたいのいたいのとんでけー」
ひとみ「みゆう、それで治る訳ないでしょ」
千田「治っちゃうかも」
あすか「いたいのいたいのとんでけー」
まゆり「いたいのいたいのとんでけー」
みゆう「いたいのいたいのとんでけー」
ひとみ「いたいのいたいのとんでけー」

4人の女の子が千田を囲む
他の3名とは違い複数の美女に囲まれる経験は千田にとって初めての事であり
夢カルを愛読している彼として憧れもあった

千田「夢カルサイコー!」

功坂「おいしい所は全部持っていかれましたね」
山下「・・・・・・僕も大人になろう」
王星明「再見!」

Re: SS企画!「ご主人様入れ替えSSを書こう!」
エマ / 2010-08-30 23:18:00 No.1873
ぴよさん、相変わらずSSの内容がかっとんでて素敵(笑)

〜番外編〜
ライオンのみさき / 2010-10-08 01:10:00 No.1917
 あえて看板らしきものも出してはいないため、一見してどういう場所か分からない。もっとも、うら寂しい、特に人目を引くものもないビルの二階。こんな場所に用もなくわざわざ訪う者がいるはずもなかった。そろそろ時刻が深更に入ろうという今、階段を上ってやって来たのも、客ではなく、ここの主であった。
 まだ年若いが、年齢に似合わぬ落ち着いた――と言うより、どこか不敵な雰囲気を漂わせた青年。それも道理か、彼、坂下恭一こそは人の身で魔を狩ることを生業とする退魔師の末裔、そして、彼自身、<ホラー・ハンター>とも呼ばれている人物なのだったから。
 ドアを開けて中に入る。
「お帰りなさい」
 と、普段なら、澄んだ少女の声が出迎えてくれる。だが、ここ数日は様子が異なっていた。
「よう、お帰り。ボス」
 奥から顔を出したのは、あまりこれといった特徴のないやや小柄な若い男だった。
「ああ、今戻った――チープサイド、さん」
 未だ戸惑いを隠せぬまま、坂下恭一は応えた。

 事の発端は、三日前。恭一の守護天使である燕のナギサが天界の研修か何かで――ナギサ本人は“企画”だとか何とか、さらにわけのわからないことを言っていたが――とにかく、しばらくどこかへ行かなければならなくなったと告げたことから始まった。
 そして、続けて、自分の留守中、代わりの守護天使が来てくれることになったと言った。実のところ、恭一はあまり気乗りしなかった。ナギサは恭一にとって、守護天使とか助手とか言うより唯一のパートナーとしてかけがえのない存在で、代わりになるような者がいるはずもなかったから。
 しかし、ナギサ自身が
「でも、ご主人さまを一人にしておくのはわたしも心配ですから。それに、よく知っているわけじゃありませんけど、優秀な人たちらしいですし」
 と言うので、まあいいかと頷いたのだった。
 それに正直言って、実生活能力にはいささか乏しいという自覚のある恭一には、ナギサのいない間、代わりに家事などをやってくれる者が来てくれるというなら、ありがたいことだった。
 ナギサも家事全般大名人だが、守護天使というのは皆、そちらはだいたい得意なのだそうだ。むしろ、ナギサの持っているような戦いの力の方が特殊で、守護天使本来の能力はそういう方が中心ということだった。まあ、それはそうだろう。だとすれば、彼女の不在中、生活の面倒だけ見てもらえればいいか……。
 そう思ったのだったが――
 自身、守護天使の主人でありながら、恭一はあまり守護天使のことに詳しくはなかった。と言うより、ナギサ以外のことは、ろくに知らない。
 もちろん知識としては、恭一も知らないわけではなかった。しかし、ナギサのイメージしかなかったので、守護天使と聞いて、自然に連想したのは、彼女のようなかわいらしい女の子だけだったのだった。
 ――まさか、やって来たのが男で、しかも自分と年頃の変わらない者たちだとは予想だにしていなかった。
 それでも、男手とは言え、現れた二人は掃除・洗濯から料理まで、そつなくどころか、それは見事にこなしてくれた。おかげで、恭一はナギサがいる時とあまり変わらないくらい不自由はなかったが――しかし、精神的には、同じ年齢の男二人に一方的にいろいろと世話を焼かれるというのは、だいぶ落ち着かないものではあった……。
 だが、恭一はすぐ認識することになった。ナギサの言っていた“すごく優秀”というのは、何もそういうことばかりを言うのではなかったのだと。ナギサもそれを知って、この二人が来ることを承認したのかもしれない。
「よかったよ。ちょうど戻ってきてくれて」
「ん、どうかしたのか? チープサイドさん」
「チップだけでいい。そう言ったろ? 今はあんたがボスだ」
「あ、ああ、わかった」
(しかし、この男は俺より年上らしいが)
 守護天使も、生まれて――いや、転生してからは1年1年普通に年は取るようだから、そういう相手がいても不思議はないのだが、そうは言っても、何だか妙な気がする。
 それにしても、この雀のチープサイド、鮮やかな日本語を話すが、名前が示す通り、到底日本人には見えない。何でも、イギリスの出身ということだった。(ちなみに、相棒の方も名前は外国人ふうだったが、こちらはどこをどう見ても日本人にしか見えなかった……。)
 しかし、サングラスでもかければ、もうそれで特に周りの注意を引くようなことはないだろう。そのくらい声にも姿にも雰囲気にも人目に立つものがない。
 だが、恭一はこういった人間の方が往々にして油断ならないということを知っていた。
 それでも、この男が初対面の時、
「そういうわけで、しばらく世話になる。――ああ、これはほんの挨拶がわりだ」
 そう言って、ぱんだや特製の<ぱんだぱん>(180円)を無造作に差し出してきたのには、さすがに眼を剥いた。
 この町でもっとも評判の高いパン屋、ぱんだや。ぱんだぱんはそこで金曜日の昼(11:30〜13:00)にしか出ないという限定商品だった。恭一は、このパンの熱狂的なファンであり、これまでもその一つを手にするために、ライバル(?)の飯野玄氏(56)と幾多の血みどろの死闘(?)を繰り広げてきていたのであった。
(この男、どこまで俺のことを……)
 別に特に秘密にしているわけではない――と言うより、この界隈では飯野氏との争いが賭けの対象になるくらいのかなり知られた話でもあるから、本気になって調べて分からないことではないだろう。しかし、あくまでこの町の中で有名というだけのことだ。それを土地勘のない、事前の情報も持たないはずのこの男がどうして……?

  / 2010-10-08 01:13:00 No.1918
 ほどなく、恭一はこの男がいわゆる“情報屋”と言われる種類の仕事をしていることを知った。だが、だとしても、初めての土地でこの男にそんな情報源がそうあるはずもないが……。
 だが、そう言えば、ここに来てから一日と経たないうちにもう、町の人間のほとんどがすでにこの男のことを何となく知っていたことに恭一は思い当たった。
 例の飯野玄氏なども、「何か、今度恭ちゃんのとこに新しい兄ちゃんが来たみたいだが、おまえさん、ナギサちゃんの他に人なんか雇えるのかい?」などと語りかけてきた。
 そして、気がつくと、あちこちで町の誰それと何の違和感もなく、立ち話などをしている。
(すっかり、馴染んで――いや、溶け込んでいる……)
 この男がそこにいるということに皆慣れて、当たり前のように思っている。だが、それまで何の関係もなかった、ふらりと現れただけの、本当は今でも全く見ず知らずの人間のはずだった。普通だったら、もっと浮いてしまっているところだろう。それがこんな短期間でそこまで抵抗なく溶け込んでしまい、そのことの異様さにも、誰も何も感じていない。
 この町のように近所づき合いの深い共同体では、排他的――とまでは言わぬにしても、異分子には、少なくとも初めのうちは、警戒してやや距離を置くのが自然なのだが……。
(こういうのがこいつの力なのか……)
 驚くべき能力だが、決して超能力の類というわけではなさそうだった。言うなれば、異常なまでに世智に長けている、ということにでもなるのか。
(守護天使ってのにも、いろんなのがいる)
 やはり唯一詳しく知るナギサを基準にするしかなかったが、それでも、恭一も守護天使というもの全般について、漠然と考えていたことがあった。
 今や家事などで、日常生活のほとんどを世話になりっぱなしの身としては、偉そうなことを言えた義理ではないが、ナギサも特に人間界に来たばかりの頃は、誤解・勘違いからいろいろ失敗もあったものだ。めいどの世界とかいう所で、事前にいろいろ勉強もしてきたようだが、それでも、うまくいかないことも多かったようだった。現在ではすっかり物慣れて、その頃が嘘のように何でも充分以上にこなせるようになっている。だが、それでも時折まだ一般の人間とはずれたところを見せることがある。そこで考えが及んだのは、昔失敗していたのも単に知識が足りないということばかりではなく、人間との感覚の違いということもあったのではないかということだった。ナギサの精神は、ひどく純粋と言うか、無垢なものがその中心を占めている。昔も今もその本質は変わらない。それはやはり普通の人間の内にはなかなか見出しがたいもので、それを備えているのが守護天使というものだと恭一は思っていた。人間ではない、“天使”という存在なのだから、それも当然かとも考えていたのだったが……。
(それがまさか、こんな人間以上に世間慣れした守護天使がいるなんてな)
 いい意味でも悪い意味でも。世間慣れというより、世間ずれか……。

  / 2010-10-08 01:19:00 No.1919
 もしかしたら、探偵なら、こういう男の方が向いているのかもしれない。自分より、よっぽどうまくやりそうだ。もちろん、浮気調査から家出人の捜索まで――そういうまともな探偵業なら、だが。
「それで、何があったんだ?」
 問いかけながら、恭一はそんなことを考えていた。
 と言うのも、恭一自身は、実は本当は探偵ではないからだった。
 自分でも自称し――ただし、「みたいなもんだ」というような名乗り方だが――世間にもそう認知されている(“へっぽこ探偵”などと、芳しからぬ言われ方もしているが)。さらには、この事務所も、看板こそ掲げてはいないものの、坂下“探偵”事務所ということになっている。
 だが、坂下家は代々妖(あやかし)を祓い、それを生業として生きてきた退魔師の家系であり、恭一は紛う方なきその後継者なのだった。こうして探偵事務所の形で町中に拠点を築いているのは、市井から広く不可思議な事件を拾い上げ、そこから魔の存在をいち早く見つけ出すという意味合いが大きい。また、見せかけと言うには、特に日本ではそれ自体どうしてもいかがわしい印象がつきまとうために、あまり表向きのということにもならないが、探偵というのも、ある意味そうしたことを隠すカモフラージュのようなところがある。
 坂下恭一の本義はあくまでも退魔――闇に潜む邪(あ)しきモノを撃ち滅ぼすこと。それは普通の探偵業とは、本質的には全く違った仕事だった。
 だから、次の相手の言葉に恭一は驚かされた。
「例の“切断魔”の次の出現場所の当たりがついた」
「なに……!?」
 それは、最近起こっている無差別の連続殺人事件だった。被害者は皆、四肢や首、あるいは胴体をすっぱりと見事に切断されて絶命しており、たとえどんな道具を用いたとしても到底普通の人間に可能なこととは思われなかった。あまりに異様で凄惨な事件で、社会不安を煽ることを恐れて報道管制が敷かれ、マスコミもまだ表立って取り上げてはいないが、被害者の遺体の有り様を知る者達からは、その様子から、いつしか犯人を“切り裂き魔”ならぬ“切断魔”と呼ぶようになっていた。
 警察の捜査も難航しているようだったが、ある筋からこの件を知らされた恭一は、明らかに魔による仕業と見て、独自に調査を開始していた。
 本来なら、ナギサの代わりとは言え、部外者であるチップ達には関わらせるべきではなかったが、すでに事件のことは知られてしまっていたのと、それに、目撃証言などの一般的な調査なら、確かにこの男は助けになるということを認めて、手伝ってもらうことにした。これまでの事件の状況を詳しく調べられたら、そこからこの先のことを予想する材料にもなると考えたのだった。
 だが、しかし――
 今のこの男の言った内容はそうした断片的なヒントではなく、一足跳びに核心だった。そこに達するには、いくら何でも早すぎる。いや、そこまでは、達するはずがない。
 いかにこの男の情報収集能力が凄まじいものだったとしても、同じ調査とは言っていても、正確にはこの男の得意としているのとは分野が違うのだから。世界が違うと言ってもいい。部外者であるこの男には、知り得ることにも限界があるはずなのだった。
(被害者の身の上や、いつどこで起こったなんてことは調べがついたとしても、それ以上の……まして、これから先の予測なんていうことは、こいつに分かるはずが……)
 それが分かるためには、魔についてよほど詳しい者でなくては、すなわち、こっちの世界の人間でなくては無理だ。そうでなければ、単なる情報ではない、こういう予想などはできない相談だった。 
 黙り込み、睨むように強い視線を送る恭一に、相手はにやにやしてみせた。
「ああ、分かってる。何で俺にそこまで言えるのか、疑問なわけだな」
「そうだ。いくらあんたでも、そこまで分かるはずはないんだが……」
「確かに、俺はこっちのことに関しちゃ素人で、あんたの業界の者じゃないが……しかし、だからって、何もできないわけじゃない」
 チープサイドは表情を改め、指を一本立てて、問題でも出すかのように言ってきた。
「ボス。自分の分からないことを手っ取り早く知るためには、どうすればいいと思う?」
「……?」
 恭一が考える眼になると、相手は再びにやりと笑って答えを言った。
「知ってる奴に聞くんだよ」
「――そういうことか……」
 恭一は頷いたが、それはその言葉を額面通りに受けとったからではない。
(知ってる奴に聞く、だと――しかし、そうするにはまず、誰がそれを知っているかが分からなきゃならん。そのうえ、それが分かったところで、そいつが知りたいことを教えてくれるとは限らない。と言うより、普通はそう簡単には教えちゃくれないだろう)
 恭一は改めて、目の前の男を見直した。
(――だが、そういったことを全てクリアしていけるのがこいつなんだな)
「あとな、部外者って立場がいつも不利とは限らない。たとえば、この業界にいるあんただと、この件に関してたぶん何か知っていそうなんで、聞いてみたいが、しかし、そうは思っても、聞けない相手ってのがいるだろう? 同じ世界にいる者同士、すべてが味方じゃない。はっきり敵もいるだろうし、まあ、そこまでではなくても、同じ世界にいるからこそ、お互い違う利害がからむもんだからな」
「まあ、確かにそうだ」
「部外者の俺にはそういうしがらみはないからな。条件さえ折り合えば、どの線からでもネタを追える。むろん、業界の奥深いところじゃ俺が直接聞けない場合もあるが、そういう時でも何人か仲介をはさんで、代わりに聞き出してもらえば、何とかなることが多い」
「なるほどな……それがあんたのやり方ってわけか」
「ま、だからって、いつもいつもうまく運ぶってわけじゃない。今回は、たまたまだ」
 手を開いてそう言うと、チープサイドは一枚の紙片を恭一に差し出した。
「これは?」
「その場所だ。すぐ行ってみてくれ」
「分かった」
「急いでくれよ。今夜のうちらしいんでな。たぶんもう、あまり時間はない」
「おいおい、間に合わなかったら、どうする?」
 恭一は焦ったが、相手は慌てずに答えた。
「心配ない。先にもうあいつを向かわせてる」
「あ――そ、そうか……」
 いや、それはそれで、何となく心配な気がしなくもないんだが――とは、恭一は声に出しては言わなかった。


燕雀輪舞(バーディーズ・ロンド)〜番外編〜

闇夜に舞う小鳥たち 前編「暗闇に雀は囀る」――了

恥ずかしながら……
ライオンのみさき  / 2010-10-08 01:21:00 No.1920
 こんにちは。こちらではお久しぶりになってしまいました、ライオンのみさきです。

 久々のSS企画ということでしたので、ぜひとも参加を、と思っていたのですが、すでに提出期限も過ぎてしまったうえ、実は、まだ完成しておりません ・ ・ ・ ・ (汗)。
 でも、せっかく書いてきましたので、とりあえず一区切りのところまでを「前編」という形で、投稿することにいたしました。

 キャラクターの方と世界を使わせていただきました竜人さまには、この場をお借りして御礼申し上げます。また、お話を考えるに当たりまして、わたしの勝手な解釈や想像が散見されることとは思いますが、ご寛恕下さればさいわいです。

 それでは、どうか後編までしばらくお待ちを。……なるべく、急ぎますので。
 ――後編は当然、あの人のターンです(笑)。

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