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エマステ逆転裁判
YM3 /
2005-08-27 14:06:00
No.664
※この作品にはエマステキャラに一部、被害者や被告人として登場しているキャラもいますが、全てこの作品の為の役作りなので安心してご覧下さい
男「はあ・・・はあ・・・はあ・・・」
荒い、男の息遣いが聞こえる・・・
その男の右手には血がポタポタとしたたる置物が握られていた。
男の足元には、力なく倒れる1人の男性・・・
その男性の頭部からは、おびただしい限りの血が流れ出ている。
男「くそっ!なんで俺がこんな目に・・・捕まりたくない・・・こんな事で!」
男は苦しそうに声を上げる。
男「誰かが・・・誰かがやった事にするんだ・・・」
男は動揺する中、その手段を考える。
男「!・・・そうだ、あいつだ・・・」
男は何かをひらめき、ニヤッと笑った。
男の思考に浮かんだのは、自分が入る前に出てきた1人の女性の姿・・・
男「あいつがやった事にすれば・・・」
8月3日 午前9時47分
地方裁判所 被告人第2控え室
真吾(ふう・・・緊張するわ・・・)
オレは何度も深呼吸を繰り返す。
女性「真ちゃーん!」
女性の声がした。
真吾「あ・・・むに所長!」
オレが振り向くと、そこには時には優しく、時には厳しくオレを指導してくれる一流弁護士・むにの姿があった。
むに「よかったぁー、ギリギリセーフだったわねぇ」
真吾「所長・・・こんなとこで真ちゃんって呼ぶのはやめてもらえませんか?」
むに「ふふ、いいじゃんそんな事」
真吾「そんな事って・・・」
ただ、時たまからかっているようなこのセリフが玉にキズなのだ・・・
むに「それより、どう?初めての法廷は」
真吾「こ、こんなに緊張するのは大学入試の合格発表依頼っすよ」
所長の質問に、オレは緊張しながら答える。
むに「それはそれはぁ・・・随分ごぶさたしてんのねー」
真吾「は、はあ・・・あの、所長」
むに「んー?」
真吾「今日はすみませんでした、忙しい所を・・・」
むに「気にしない、気にしない!カワイイ部下の初舞台だもの」
頭を下げるオレを、所長は笑ってなだめた。
むに「それにしても初めての法廷で殺人事件を扱うなんて、性格に似合わずすごい度胸ねー。感心しちゃうわ」
真吾「そ、そうでしょうか・・・?」
むに「そーだって」
オレと所長がそんな会話を交わす中・・・
?「おしまいよぉ!」
真吾・むに「!」
?「もう何もかもおしまいよぉぉぉ!」
部屋の傍らで誰かが叫んでいた。
むに「・・・あそこで叫んでるの、真ちゃんの依頼人じゃない?」
真吾「・・・そうですね」
叫びはなおも止まらない。
?「死ぬぅ!死んでやるぅ!」
?「あたしはもう死んでやるのよぉぉぉぉ!」
むに「死にたがってるわよ?」
真吾「・・・そのようで」
ようやく静まったその女性がオレと所長のもとへとやってきた。
女性「真吾くぅん!」
真吾「ど、ども・・・真純さん」
その女性とは、彫刻専門の芸術家で数々の雑誌に名を馳せている、藤原真純その人だった。
真純「有罪よ!あたしを有罪にして!死刑でもなんでも受けてサッパリ死なせて!」
真吾「ど、どうしたんですか?」
泣き叫ぶ真純さんにオレは声をかける。
真純「ダメなの!やっぱりあたし、ダメなのよ!ティコくんのいない人生なんて・・・死んだ方がマシよぉ!一体・・・一体誰がティコくんを・・・!教えてよぉ・・・真吾くぅん!」
真純さんは悲痛の声で泣き叫ぶ。
真吾(ティコさんを殺害した犯人か・・・新聞に書いてあるのはあなたの名前なんだけどね・・・)
オレの名は山下真吾、3か月前に所属したばかりの新米弁護士や。
そして今日はオレの初めての法廷。
さて・・・今回の事件はいたってシンプル。
マンションの一室で若い男性が殺害された。
逮捕されたのは、彼にしつこく猛アピールしていた女性・・・藤原真純。
以前から被害者に目を付けていた女性や。
でも、真純さんは殺人をするような人じゃない・・・オレはそう思う。
・・・・・
勢い余って、ホンマに殺ってないやろーなぁ・・・
8月3日 午前10時
地方裁判所 第2法廷
傍聴員「ざわ・・・ざわざわ・・・ざわ」
サキミ(えぅ〜、どうして私たちはこんな役なんですかぁ〜・・・)
うさこ(はうう・・・いいじゃないですか、出番があるだけでも・・・)
コン!
中央の席に座るサキ裁判長の木槌が打ち付けられる。
サキ「これより、藤原真純の法廷を開始します」
サキ(・・・で、なぜ私が裁判長なの?)
むに(いいじゃないの、似合ってるわよー、サッちゃん♪)
ま、まあそれは置いといて・・・
※現在の法廷記録
・弁護士のバッジ
これが無いと誰もオレを弁護士と認めてくれない
・ティコの解剖記録
死亡時刻は7月31日 午後4時以降、5時まで 鈍器による一撃で失血死
洋「検事側、準備完了してますよ」
真吾「べ、弁護側も準備完了です・・・」
オレと向かい合わせに立つ洋検事、そしてオレが裁判長に声を掛ける。
サキ「・・・山下真吾」
緊張しているオレを見抜いて、裁判長が声を掛けてきた。
サキ「あなたは・・・今回が初めての法廷だったわね?」
真吾「は、はい」
サキ「依頼人が有罪か、無罪かは・・・弁護士のあなたにかかっているわ・・・弁護士のあなたがそんなに緊張していては・・・困るわね」
真吾「はい・・・すみません」
オレは軽く頭を下げる。
サキ「では、裁判を始める前に・・・本当に『準備完了』しているかどうか、試してみるわ・・・」
真吾「は、はい!」
真吾(うわあ・・・頭ん中が真っ白になってきた・・・)
サキ「簡単な質問をするから、答えて・・・まず、この事件の被告人の名前は?」
真吾「ヒコクニン・・・それは、藤原真純さんの事ですね」
サキ「そう・・・」
裁判長はこくりと頷いた。
サキ「そんな感じで落ち着いて答えなさい・・・」
裁判長は再び質問を出す。
サキ「では次・・・今回は殺人事件だけど・・・被害者の名前は何だったかしら?」
真吾(それならわかるわ・・・あれだけ調書を読んだし)
・・・・?
真吾(あ・・・あれ?ど、ど忘れしとる!何やったっけ!?)
オレは動揺してしまった。
むに「し、真ちゃん!あ、あ、あなたって人は・・・被害者の名前も知らないの?」
オレの隣に座っている所長が険しい顔でこちらを見ている。
真吾「ま、まさか!ちょっと記憶から抜けてただけです!」
むに「・・・な、なんだかアタマが痛くなってきたわ」
所長は流れる汗をふきながらため息をついた。
むに「事件のことは法廷記録を見ればわかるわ!ちゃんとチェックしておいてね・・・お願いだから」
サキ「では答えて・・・被害者の名前は?」
法廷記録をチェックし、オレは答える。
真吾「えと・・・被害者の名前はティコさんですね」
サキ「・・・よろしい・・・では、彼はどうやって殺害されたか・・・わかる?」
真吾「鈍器で1発、ガーンとやられて・・・」
サキ「そう・・・では、質問はこれくらいにして・・・そろそろ審理を始めましょう・・・あなたも、だいぶ落ち着いたようだから・・・」
真吾「はい」(そうでもないけど・・・)
無題
YM3 /
2005-08-27 14:08:00
No.665
裁判長は、今度は洋検事に視線を向けた。
サキ「さて・・・ちょっといいかしら?洋検事」
洋「何でしょう、裁判長」
サキ「今、真吾が言ったとおり・・・被害者は鈍器で殴られてるわ」
サキ「その鈍器だけど・・・具体的にはどんな物なの?」
洋「凶器はこの藤原真純の置物です、死体のすぐ側に転がっていました」
洋検事はその置物を裁判長に提出した。
サキ「なるほど・・・証拠品として、受理しましょう」
○証拠品「置物」を法廷記録にファイルした!
・置物
真純さんの形をかたどった置物 かなり重い
※現在の法廷記録
・弁護士のバッジ
これが無いと誰もオレを弁護士と認めてくれない
・ティコの解剖記録
死亡時刻は7月31日 午後4時以降、5時まで 鈍器による一撃で失血死
・置物
真純さんの形をかたどった置物 かなり重い
むに「真ちゃん、裁判が進むと、このように証拠品が提出されていくのよ」
真吾「なるほど・・・」
むに「証拠品のデータはこれからのあなたの武器になるから、ちゃんと法廷記録をチェックしておくのよ」
真吾「はい!」
コン!
裁判長の木槌が響く。
サキ「では、洋検事・・・証人を呼んで」
洋「まず、被告人・藤原真純さんの話を聞きたいと思います」
真吾「あの、所長・・・オレはどうすれば・・・?」
むに「今は依頼人を助けるための情報を聞き逃さない事ね、反撃のチャンスは後で必ず来るわ・・・彼女が余計な事を言わないよう祈りましょう」
真吾(心配や・・・真純さん、ティコさんの事となるとすぐ興奮するからなぁ・・・)
やがて、証言台に真純さんが立つ。
洋「さて・・・真純さん、あなたはいつもティコさんに避けられていたそうですね?」
真純「キィー!なんですってぇ!今世紀最高のカップルに向かってなんて言い草を!」
真純さんは台を叩きながら叫ぶ。
真吾(い、いきなりっすかー!)
オレは呆れて空いた口がふさがらなかった・・・
真純「ただ、電話しても出なかったり、会おうとしても断られてただけよ!」
洋「・・・そういうのを世間では避けられてるっつってんだよ、実際、彼はアンタを避けるように遊んでたようだね」
洋検事は調書を眺めながら話す。
洋「殺害される前日も、海外旅行から帰ったばかりのようだし」
真純「な、なんですってぇ!そんなのウソよ!私は信じないわ!」
真純さんはなおも台を叩き、叫ぶ。
洋「裁判長、被害者のパスポートです、亡くなる前日まで彼はニューヨークにいたようです」
○証拠品「パスポート」を法廷記録にファイルした!
・パスポート
事件の前日、7月30日にニューヨークから帰国している
※現在の法廷記録
・弁護士のバッジ
これが無いと誰もオレを弁護士と認めてくれない
・ティコの解剖記録
死亡時刻は7月31日 午後4時以降、5時まで 鈍器による一撃で失血死
・置物
真純さんの形をかたどった置物 かなり重い
・パスポート
事件の前日、7月30日にニューヨークから帰国している
サキ「・・・確かに帰国の日付は・・・死亡の前日、ね」
真純「そんな・・・」
真純さんはがくりと肩を落とす・・・
洋「彼はニューヨークに友達と遊びに行っていたようだね」
真純「・・・ともだち?」
真純さんは猜疑心の目を洋検事に向ける。
洋「朝村美月やロックの事さ。彼はアンタ以外とは普通に遊んでたようだね」
真純「なんですって・・・」
真純さんはわなわなと肩を震わせた。
洋「彼はそういうヤツだった、ってことさ。アンタは彼についてどう思うんだい?」
真純「・・・・くっ・・・!死んでやる!もう死んでやるわ!」
怒りが頂点に達した真純さんは、また台を叩いて叫びだした。
真純「天国でティコくんを問い詰めてやるわぁぁぁぁ!」
コン!
サキ「・・・では、審理を続けましょう」
洋「とにかく、被告の動機はわかってもらえたと思います」
サキ「・・・とてもよく」
真吾(げげー・・・)
あまりにもの展開にオレはただ呆然とする。
洋「じゃ、次の質問だ。事件のあった日、アンタは彼の部屋に行ったのかい?」
真純「!!」
彼の発言に、真純さんは身体に何かが突き刺さったような衝撃を受けた!
洋「どーなんだよ?」
真純「え・・・な、何がどーなんだよ」
洋検事の質問に、真純さんは冷汗をたらしている・・・
真吾(あの様子じゃ部屋に行っとるな・・・)
真純「え、ええ!たしかに、その、行ったわよ!」
ついに投げやり状態で発言してしまった。
傍聴員「ざわ・・・ざわざわ・・・ざわ」
コン!
どよめく周囲に、裁判長の木槌が鳴る。
サキ「静粛に!・・・それで?藤原真純さん!」
サキが真純さんを睨み付ける。
真純「そ、そんな目で見ないで・・・ティコくん留守で・・・結局会えなかったのよぉ」
洋「意義あり!」
洋検事が突如として叫んだ。
洋「裁判長、被告人は嘘をついてます」
サキ「・・・ウソ?」
洋「我々には今のウソを立証する証人がいます」
サキ「話が早いわね・・・どんな証人かしら?」
洋「死体の発見者です。彼は死体を発見する直前、殺人現場から逃げていく被告人・藤原真純を目撃したのさ!」
傍聴員「ざわ!・・・ざわざわ!・・・ざわ!」
またしても周囲がどよめく。
コン!コン!コン!
サキ「静粛に!静粛に!洋検事・・・その証人を呼んで」
洋「わかりました」
真吾(エ、エライ事になってきたぞ・・・)
オレはあまりもの状況に、動揺せずにはいられなかった・・・
洋「事件当日、新聞勧誘をしていた、饗介さんを入廷させましょう!」
数分後、証人・饗介が証言台に立った。
洋「饗介さん、新聞勧誘をしているそうですね?」
饗介「お、おう・・・そうだぜ・・・」
サキ「では・・・証言を・・・あなたが事件当日・・・見た事を話して・・・」
◎証言開始「事件当日、目撃したこと」
饗介「勧誘してたら、ある部屋から女が出てきたんだ」
饗介「女は慌てていて、ドアを半開きにしたまま行っちまった」
饗介「おかしいと思って、俺は部屋をのぞいてみたんだ」
饗介「そしたらなんと、男が死んでるじゃねえか!」
饗介「俺、腰が抜けちまって、怖くて部屋に入れなかったぜ」
饗介「んで、すぐに警察を呼ぼうと思ったんだ」
饗介「でも、彼の部屋の電話は通じなかったから」
饗介「近くの公衆電話で通報したのさ」
饗介「時間はハッキリ覚えてるぜ、昼過ぎの2時だ」
饗介「逃げたのは、間違いなく被告の女だぜ」
サキ「・・・なるほど」
真吾(真純さん!何で正直に話してくれんかったんや!?こんなにハッキリ見られてたんじゃ弁護のしようなんかあらへんがな!)
オレは頭を抱える。
サキ「ところで・・・どうして現場の電話は・・・通じなかったの?」
裁判長が検事に尋ねた。
洋「それは、事件があった時間、マンションは停電だったんです」
サキ「でも・・・停電中でも電話は使えるはずよ」
洋「はい、でも機種によっては子機の使用ができないんです。現場で饗介さんが手にしたのはそういうタイプの子機だったようですね」
そう言って、洋検事は1つの書類の入った封筒を取り出した。
洋「裁判長、念のため停電の記録を提出しておきます」
○証拠品「停電記録」を法廷記録にファイルした!
・停電記録
事件当日、午後1時から6時までマンションは停電だった
※現在の法廷記録
・弁護士のバッジ
これが無いと誰もオレを弁護士と認めてくれない
・ティコの解剖記録
死亡時刻は7月31日 午後4時以降、5時まで 鈍器による一撃で失血死
・置物
真純さんの形をかたどった置物 かなり重い
・パスポート
事件の前日、7月30日にニューヨークから帰国している
・停電記録
事件当日、午後1時から6時までマンションは停電だった
サキ「では、弁護人」
真吾「は、はい!」
裁判長が突然話しかけてきたので、オレはハッと頭を上げる。
サキ「尋問をお願い・・・」
真吾「へ?・・・尋問?」
オレは首をかしげた。
むに「さぁー!真ちゃん、ここからが本番よぉ」
真吾「いや、だから・・・何スか?尋問って・・・」
むに「もちろん、さっきの証言のウソをあばくのよ!」
真吾「え・・・ウソ、なの・・・?」
未だ現状が飲み込めず、ポカンとするオレ。
むに「真純ちゃんが無実なら、あんな証言、ウソに決まってるでしょ!」
むに「それとも・・・真ちゃん、真純ちゃんの無実を信じてないのぉ?」
所長のその一言でオレはピーンと我に返った。
真吾「!・・・でも、どうやるんですか?」
むに「鍵を握ってるのは証拠品よ!饗介くんの証言と証拠品のデータの間には、何か決定的な食い違い・・・すなわち矛盾があるわ」
むに「まず、法廷記録と証言で矛盾している部分を探すの。そして矛盾している証拠品を見つけたら、それをあの証人につきつけてやるのよ!」
真吾「は、はあ・・・」
むに「さあ、法廷記録から、証言と食い違う部分を探すのよ!」
無題
YM3 /
2005-08-27 14:11:00
No.666
◎尋問開始! 「事件当日、目撃したこと」
饗介「勧誘してたら、ある部屋から女が出てきたんだ」
真吾「部屋から女性が出てくる事なんか珍しいことでもないやろ・・・何でその女性が気になったんや?」
饗介「んー・・・何か妙なヤツだったんだよなぁ。怒ってるような、それでいておびえているような・・・」
饗介「まるで殺人現場から逃げ出す犯人のような・・・」
真吾「証人!余計な事を言うんやない!」(バンッ!)←台を叩く
洋「まぁとにかく、怪しい人物だったというわけさ。それで、どうなったんだ?」
饗介「女は慌てていて、ドアを半開きにしたまま行っちまった」
真吾「半開き?」
饗介「そう、半開き。しばらく見てても、誰も閉める様子が無かったな・・・」
饗介「何だか無用心だな、と心配になっちまってよ・・・」
洋「なるほど、それでどうしたんですか?」
饗介「おかしいと思って、俺は部屋をのぞいてみたんだ」
真吾「なんでそんなことを?」
饗介「だって、なにしろ半開きだったから、覗きたくなるのが人情ってもんだろ?」
饗介「海がありゃ泳ぐ、山があれば登る。それと同じようなもんだぜ」
洋「そりゃそうだね、誰だって覗くね」
真吾(何か無理矢理押し切られたような・・・)
洋「とにかく部屋を覗いたと、それでどうなりました?」
饗介「そしたらなんと、男が死んでるじゃねえか!」
真吾「間違いなく死んどったんか!?」(バンッ!)
饗介「さ、さあ・・・それはわかんねえけどよ・・・でも、ビクリとも動かねえし、血もドクドク流れてたからなぁ」
真吾(なるほど、致命傷だったってことか・・・)
真吾「わかった、それでどうなった?」
饗介「俺、腰が抜けちまって、怖くて部屋に入れなかったぜ」
真吾「ほんなら、部屋のもんには一切手を触れてない・・・?」
饗介「そうだな、うん」
真吾「わかった、それでどうなった?」
饗介「んで、すぐに警察を呼ぼうと思ったんだ」
真吾「『思った』って事は、行動には移さんかったんか!?」(バンッ!)
洋「まあまあ、落ち着いて証言を聞きなさいって」
真吾「く・・・」
洋「あなたは電話をかけようと思った。それでどうなったんですか?」
饗介「でも、彼の部屋の電話は通じなかったから」
真吾「現場にあった電話が通じんかったんか?」
饗介「まあ・・・そうだな」
真吾「でも、さっきは部屋に入らんかった、と言うとったがな」
饗介「ああ、その事か。玄関の棚の上に電話の子機があったから、それを使ってみたんだけどよ・・・」
洋「その子機が不通だったというわけですね。それで、どうなりました?」
饗介「近くの公衆電話で通報したのさ」
真吾「何で公衆電話を?」
饗介「いやぁ・・・俺、携帯持ってないし。それに時間帯のせいか、付近の部屋の人も留守だったんだよな・・・」
真吾「なーる・・・ところで、通報した時間は?」
饗介「時間はハッキリ覚えてるぜ、昼過ぎの2時だ」
真吾「午後2時?間違いないんか!?」(バンッ!)
饗介「ああ、間違いないぜ」
真吾(んー・・・妙に自信アリな発言やな)
むに「午後2時・・・?真ちゃん、何かおかしくないかしら?この証言に矛盾する証拠品をつきつけてみましょ!」
真吾「その証言に矛盾する証拠品・・・?」
・・・・・
真吾(そうか、わかったぞ!)
オレはすかさずその証拠品を取り出し、叫んだ。
真吾「意義あり!」
※饗介「時間はハッキリ覚えてるぜ、昼過ぎの2時だ」
真吾「死体を見つけたんは午後2時。間違いないな?」
饗介「だから、何度もいってるだろうが。確かに2時だっつーの」
バンッ!
オレは饗介を静止させるかのように台を強く叩く。
真吾「でもな、それだとおかしいんや」
・ティコの解剖記録
死亡時刻は7月31日 午後4時以降、5時まで 鈍器による一撃で失血死
真吾「この解剖記録のデータと明らかに矛盾しとる。被害者が死んだのは午後4時より後や。せやから2時に死体を見つけられるハズがないんや。なして2時間もズレがあったんやろーなぁ?」
饗介「・・・!、え・・・いや、あの・・・それは」(汗)
洋「意義あり!」
動揺する饗介を見て、洋検事が叫んだ。
洋「そ、それは些細な事さ・・・単なる記憶違いだよ・・・」(汗)
サキ「私は・・・そうは思えない」
裁判長は首を横に振る。
サキ「饗介・・・なぜ、死体を見つけた時間を・・・2時と?」
饗介「え!?その・・・な、なんでだろうなぁ・・・」(汗)
むに「やったじゃない、真ちゃん!見事なツッコミよん」
真吾「へへ・・・」
所長が笑って、オレに声を掛けてくれた。
むに「ウソは必ず次のウソを生むわ、そのウソをまた見抜いてヤツを追い詰めるのよー」
暫くして、饗介はハッとして口を開く。
饗介「お?・・・おお!そうだ、思い出したぜ!」
サキ「・・・では、もう1度『証言』を・・・」
◎証言開始「死体を発見した時間について」
饗介「死体を見つけた時、時間が聞こえてきたんだ」
饗介「あの音は時報みたいな感じでよ・・・多分テレビだと思うぜ」
饗介「んー、でも時報にしては2時間もズレてたんだよな?」
饗介「多分、被害者はビデオでも見てたんじゃねーかな」
饗介「その音を聞いたから、2時だと思い込んだんだろうな」
饗介「いやいや、ご迷惑をおかけしました、ハハハ」
サキ「なるほど・・・ビデオで・・・時報の音を聞いたのね・・・」
裁判長は簡潔に証言の内容をまとめた。
サキ「では弁護人、尋問を・・・」
むに「真ちゃん、やり方はもうバッチリよね?」
真吾「・・・はい!」
◎尋問開始!「死体を発見した時間について」
饗介「死体を見つけた時、時間が聞こえてきたんだ」
真吾「『聞こえた』・・・? 『見た』わけじゃないんか?」
饗介「ああ、そうだな・・・とにかく死体しか目に入らなくってよ・・・多分、時間を見る余裕は無かったな」
真吾「んー・・・でもちょっとおかしいなー。それなら、なんで『音』は聞こえたんや?死体に気を取られてたんなら、音を聞く余裕もないと思うが・・・」
洋「意義あり!」
洋「証人は実際に音を聞いてるんだ。『聞こえなかったかも』って議論は意味が無いんじゃないのかい?」(汗)
サキ「確かに・・・そうね。証言を続けて・・・」
饗介「あの音は時報みたいな感じでよ・・・多分テレビだと思うぜ」
真吾「テレビか?ラジオじゃなかったんか?」
饗介「さ、さあ。ラジオだったかもな」
洋「ちなみに、現場にラジオは無かったね。大型のテレビがあっただけだね」
むに「真ちゃん。『テレビの時報を聞いた』って証言・・・なんか、ちょっとひっかかるわねー」
洋「とにかく饗介さん、現場で時報を聞いたんだね?」
饗介「んー、でも時報にしては2時間もズレてたんだよな?」
真吾「そのズレを説明できるんか!?」
サキ「どうなの?・・・証人」
饗介「多分、被害者はビデオでも見てたんじゃねーかな」
真吾「ビデオ・・・か?」
饗介「ああ、それなら時報にズレがあってもおかしくねーだろ?」
真吾「それもそうやな・・・」
むに「真ちゃん。問題はもっと他にあるんじゃないかしら・・・」(汗)
サキ「とにかく・・・あなたが現場で時刻を聞いたのは・・・間違いないのね?」
饗介「その音を聞いたから、2時だと思い込んだんだろうな」
真吾「2時と聞いたのはホンマなんやな?」
饗介「そうだな、今も耳に残ってるぜ」
サキ「洋検事、この証言の・・・裏付け捜査はしたの?」
洋「・・・すみません、『時報を聞いた』という証言は、僕も今、初めて聞いたので・・・」(汗)
饗介「わ、悪いねぇ、今まですっかり忘れてて・・・」(汗)
饗介「いやいや、ご迷惑をおかけしました、ハハハ」
真吾「これからは気をつけろよな!」
真吾(って、こんなトコをゆさぶっても意味ないか)
Re: エマステ逆転裁判
YM3 /
2005-08-27 14:12:00
No.667
むに「さぁ・・・どこかにヘンなトコはなかったかしらー?」
真吾「これは・・・」
・・・・・
真吾「そ、そうか!そうやったんか!」
オレはすかさずその証拠品を取り出し、叫んだ。
真吾「意義あり!」
※饗介「あの音は時報みたいな感じでよ・・・多分テレビだと思うぜ」
※饗介「多分、被害者はビデオでも見てたんじゃねーかな」
真吾「オイ!ちょっと待てや!そもそも事件の間、マンションは停電しとったがな!」
・停電記録
事件当日、午後1時から6時までマンションは停電だった
真吾「この記録がそれを証明してるぞ!」
饗介「・・・・」(汗)
真吾「テレビにしろビデオにしろ、使えるわけないがな!」
饗介「!!」
オレのツッコミに明らかに饗介が動揺した!
饗介「そ、それは・・・」(汗)
サキ「確かにそうね・・・饗介、どういうことなの?」
饗介「い、いやぁ・・・俺にもその、どういうことなのか・・・」(汗)
饗介は次第に油汗を流し始めた。
饗介「・・・・・そ、そうだ!お、思い出したぜ!」
饗介が唐突に声を上げた。
サキ「・・・饗介さん、証言は・・・最初から正確にね・・・だんだんあなたが怪しく見えてくるわ・・・」
裁判長も次第に饗介を見る目が冷たくなってきた。
サキ「何か妙に・・・動きがおかしくなっているし・・・」
饗介「!!」(汗)
裁判長の鋭い指摘に饗介が更に動揺した。
饗介「わ、悪いねぇ、なにぶん死体を見たショックでよぉ・・・」(汗)
サキ「もういい、わかったわ・・・もう1度、証言をお願い・・・」
◎証言開始「『時間を聞いたこと』について」
饗介「やっぱ『聞いた』んじゃなくて、『見た』んだよ!」(汗)
饗介「現場には置き時計があったじゃねぇか」(汗)
饗介「あの、犯人が殴る時に使った凶器だよ」(汗)
饗介「多分、それで時間がわかったんだよ・・・」(汗)
サキ「時計を見た・・・それなら理解できるわね。では弁護人、尋問を・・・」
真吾「はい」
◎尋問開始!「『時間を聞いたこと』について」
饗介「やっぱ『聞いた』んじゃなくて、『見た』んだよ!」(汗)
真吾「えらい不自然な勘違いやな・・・」
饗介「ハハハ、俺もそう思うんだけどよ・・・急に置時計の事を思い出したんだよなぁ」(汗)
サキ「・・・置き時計?」
饗介「現場には置き時計があったじゃねぇか」(汗)
真吾「置き時計・・・そんなもんがあったんか?」
サキ「・・・私も初耳ね」
饗介「あの、犯人が殴る時に使った凶器だよ」(汗)
真吾「凶器・・・?」
饗介「そうだよ、凶器のの置き時計さ。失礼だがアンタ、ちゃんと話は聞いてたのかい?」(汗)
真吾(・・・なんか、ひっかかるな)
饗介「多分、それで時間がわかったんだよ・・・」(汗)
真吾「なんで最初からそう証言せんかったんや?」
饗介「なぜか、思い出せなかったんだよねぇ・・・俺もよくわかんねえな、メンゴメンゴ」(汗)
洋「とにかく、現場で置き時計を見た、ということさ」
むに「さあ、矛盾してる所はどこかしら?」
真吾「まかせてください・・・」
焦っているヤツのウソを見抜くのはたやすい。
オレは証拠品を取り出し、叫んだ。
真吾「意義あり!」
※饗介「あの、犯人が殴る時に使った凶器だよ」(汗)
真吾「ちょっと待てや、オイ!」
・置物
真純さんの形をかたどった置物 かなり重い
真吾「凶器はこの通り、置物なんや!これのどこが時計なんや?」
饗介「げっ!」
オレのツッコミにまたしても饗介が驚愕の声をあげた。
饗介「ぐぅ・・・てめえ、なんなんだよ!さっきからエラそうに・・・」
真吾「饗介、質問に答えろ」
饗介「お、俺は見たんだ。そいつは置き時計なんだ」
洋「裁判長!ちょっといいですか?」(汗)
洋検事が横槍を入れるように声を掛けた。
サキ「どうしたの・・・洋検事?」
洋「この置物は証人の言うとおり、実は置き時計なんです。首がスイッチになっていて、時間をアナウンスするタイプなんです。時計には見えないから『置物』として提出していたんですよ・・・」(汗)
サキ「なるほど・・・凶器は実は置き時計であった、と・・・」
裁判長がこくりと頷く。
サキ「どう?山下真吾・・・饗介の証言は・・・間違ってないわ。これは確かに・・・時計なのだから。饗介の証言について・・・もう間違いはない?」
だが、オレは答えた。
真吾「裁判長!まだ問題が残っています!その置物が時計であると知るには、実際に手に取るしかない・・・でも証人は『部屋に入らんかった』と証言してる」
バンッ!
真吾「これは明らかに矛盾しとるんちゃうんかい!」
サキ「・・・確かに」
真吾「なぜ証人の饗介が時計の事を知っとったか・・・それは!」
オレは饗介をビシッと指差した!
真吾「饗介はウソをついている!お前はあの日、現場の部屋に入ったんや!」
饗介「な、何だとぉ!?俺は知らねぇぞ!」
だが、饗介は明らかに動揺していた。
真吾「置き時計で被害者を殴ったんは、実はお前だったんや!」
バンッ!
オレは台を叩き、叫ぶ。
真吾「ティコさんを殴った時、はずみであの時計が鳴った・・・」
真吾「お前はその音を聞いたんや!」
傍聴員「ざわ・・・ざわざわ・・・ざわ」
コン!
どよめく周辺に裁判長の木槌が鳴る。
Re: エマステ逆転裁判
YM3 /
2005-08-27 14:14:00
No.668
サキ「静粛に!・・・おもしろいわね、真吾・・・続けて」
真吾「はい」
オレは再び話を続けた。
真吾「・・・饗介、きっとお前はかなり驚いたはずや。被害者を殴った瞬間、凶器の置き時計が急にしゃべりだしたんやからな・・・その声が強烈に印象に残ってしまった。せやからお前は時間だけを妙にハッキリ覚えとったんや!」
洋「意義あり!」
洋検事が叫ぶ。
洋「ど、ど、どういうつもりだよ!そ、そんないいかげんな言いがかりは・・・」(汗)
真吾「いい加減かどうかは・・・証人の顔を見ればわかるわ!」
オレは饗介を指差す。
饗介「ぬ・・・うおお・・・」
饗介はまだ声を震わせている。
サキ「証人・・・どうなの?あなたが殴ったの?」
饗介「お、俺はその、決して・・・あの、俺が、聞いた、いや・・・見たのは・・・うぐぐ・・・」
饗介「うおおおおおおおおおおおっ!!」
バァァンッ!
饗介は怒りに任せて、強く台を叩いた!
饗介「うるさいんだよ!細かい事をブチブチと!」
饗介の言葉はすでに理性を失っていた。
饗介「あ、アイツだ・・・!俺は見たんだよ・・・し、死刑だ!あの女に、死刑を・・・!」
傍聴員「ざわ!・・・ざわざわ!・・・ざわ!」
饗介の戸惑う言葉に周囲が更にどよめく!
コン!
サキ「静粛に!静粛に!」
洋「裁判長!ちょ、ちょっと待ってください!今の弁護人の主張には証拠がありませんよ!」(汗)
洋検事が再び横槍を入れてきた。
サキ「山下真吾」
裁判長が声を掛ける。
真吾「はい」
サキ「証人が・・・聞いたという時報が、この時計である、という証拠・・・それがあるというの?」
真吾(これは重要な問題や!よう考えんとな・・・)
真吾「はい、饗介が聞いた音はこの置き時計の音に間違いありません。その証拠は・・・」
オレは少しの間を置き、そして答える。
真吾「この場で時計を鳴らしてみる事です!裁判長、その時計を貸してください」
オレは証拠品の置き時計を受け取った。
真吾「いいですか?よく聞いてください・・・」
ピッ・・・
首元にあるスイッチを押す。
時計『ハァーイ、ティコくぅん。今の時刻は9時25分よぉん♪』
サキ「何か・・・ヘンなアナウンスをする時計ね・・・」
裁判長が首をかしげる。
真吾「まあ、真純さんですからね」
サキ「それで・・・このアナウンスが・・・どうしたの?」
裁判長の質問の後、オレは洋検事に目を向けた。
真吾「洋検事、今、ホンマは何時や?」
洋「ええと・・・11時25分だね・・・・・あっ!!」
時間を言った後、洋検事はなにかに気付き、驚愕の声をあげた。
真吾「2時間遅れとるんや、この時計はさ・・・現場で、饗介が聞いた時刻と同じく!」
ビシッ!
オレは饗介を指差し、叫んだ。
真吾「どや!これでお前の負けや、饗介!」
饗介「・・・・・」
だが、しばらくの間を置いて、饗介がニヤリと笑った。
饗介「・・・フ、フッ!お前、1つ見逃してるぜ!」
真吾(う・・・な、なんの事や?)
オレは予想外のセリフに汗を流す。
饗介「確かに、その時計は2時間遅れてるみてえだな。だが・・・その時計が事件当日にも遅れていたのか・・・お前はそれが証明できるのかい?」
真吾「!」
真吾(そ、そんな事、証明できるわけないがな!・・・あ、あと1歩なのに・・・ちくしょう!)
取り乱すオレを見て、裁判長が口を開いた。
サキ「真吾・・・どうやら・・・今のあなたにそれを証明することは、できないようね」
真吾「は・・・はい・・・」
サキ「では・・・饗介の言うとおり、彼を告発する事はできないわ・・・残念だけど、ね」
コン!
サキ「では・・・証人・饗介に対する尋問を、終了します・・・」
饗介「フン!せっかく人が証言しに来てやったってのに、ハンニン呼ばわりかよ!まったく、弁護士ってのはヒドイ生き物だねぇー」
饗介は先ほどの動揺を一変させ、ほくそえむ。
真吾(くっそぉ!饗介め!)
オレは奥歯をかみ締める。
真吾(ごめんなさい、真純さん・・・あと1歩だったのに・・・オレは、ここまでです・・・)
オレが肩を落としかけた・・・その時!
むに「待ちなさい!饗介!」
むに所長の声に法廷内の空気が再び震えた!
真吾「しょ、所長!」
むに「真ちゃん、ダメよ!諦めちゃ!考えるのよ!」
真吾「で、でも・・・もうダメっすよ!事件当日も時計が遅れていたかなんて・・・今更説明のしようがないでしょ!」
むに「そ、そうね・・・なら、いっそのこと、発想を逆転させてみましょ!」
真吾「発想を・・・逆転?」
オレは首を傾げる。
むに「『あの時計が、事件当日も2時間遅れていたかどうか』・・・そう考えるんじゃなくて、そもそもあの時計が『なぜ2時間も遅れていたのか?』・・・その理由を考えてみるのよん!」
真吾「なぜ・・・遅れていたのか?」
むに「どう?真ちゃん、あの時計がなぜ2時間遅れていたのか、わかる?」
オレはしばらく考えてみたが、やはり浮かばない。
真吾「・・・わ、わかりません」
むに「そんなはずは無いわ!真ちゃんは、その理由を示す証拠品を・・・法廷記録の中にちゃんと持っているはずよ!それをつきつけてやりなさい!」
真吾「・・・・・」
サキ「どうなの?真吾・・・事件があった日は、時計はすでに遅れていた・・・その証拠があるの?」
真吾「・・・・・」
なぜ遅れていたのか・・・そしてそれを示す証拠品・・・
真吾「・・・はい、所長がおっしゃった発想の逆転・・・そして、ある1つの証拠品から・・・それを証明できる術が見つかりました!」
饗介「ほお・・・できるもんならやってみな!」
真吾「ああ・・・やってやるさ!」
オレはその証拠品を取り出た。
真吾「くらえ!」
Re: エマステ逆転裁判
YM3 /
2005-08-27 14:17:00
No.670
・パスポート
事件の前日、7月30日にニューヨークから帰国している
真吾「被害者は前日に帰国したばかりやった。ニューヨークと日本では、14時間の時差がある!日本で午後4時の時、向こうでは前日の午前2時。時計で見ればその差はきっちり2時間や!」
オレのツッコミを聞いて、饗介が身体をガタガタと震るわせた!
真吾「被害者は帰国後、時計の時差をまだ戻していなかったんや!だからお前が聞いた時間は2時間ずれとったんや!」
真吾「どや!饗介!!」
オレは再び饗介をビシッと指差す!
饗介「ぐ・・・・・」
バタッ!
抗う術を失った饗介は、カニの様に泡を吹いて倒れた・・・
傍聴員「ざわ!・・・ざわざわ!・・・ざわ!」
コン!コン!コン!
サキ「せ・・・静粛に!静粛に!」
どよめく周囲に裁判長の木槌が鳴り響いた。
サキ「さて・・・ここにきて、状況は一変したわね・・・」
しばらくの間を置き、裁判長が話を進める。
サキ「はるこ警部・・・饗介は?」
はるこ「はい、先ほど緊急逮捕しました!更に洋検事も饗介の親友で、無罪に一役買っていたと判明し、逮捕いたしました!」
それを聞いた裁判長は無言でこくりとうなずいた。
サキ「・・・山下真吾」
真吾「はい」
サキ「正直言って・・・驚いたわ。こんなに早く依頼人を救い出し・・・真犯人まで見つけるとは・・・」
真吾「あ、ありがとうございます」
オレは軽く頭を下げた。
サキ「今となっては形式に過ぎないけど・・・被告人、藤原真純に判決を伝えます・・・」
サキ「無罪」
傍聴員「ワーワー!キャー!」
周囲に歓喜の声が響き渡った。
コン!
サキ「では・・・本日は、これにて閉廷・・・」
饗介というのは空き巣・下着ドロの常習犯だったそうや。
あの日・・・真純さんが部屋を訪ねた時、ティコさんは留守やった。
彼女が立ち去った後、饗介は『仕事』をするために部屋に侵入。
そして部屋を物色中、ティコさんが帰ってきたんや。
逆上した饗介は側にあった置き時計を手にし・・・
8月3日 午後2時32分
地方裁判所 被告人第2控え室
真吾(はぁ・・・無事に終わった事が未だに信じられへん・・・)
オレの胸はまだ緊張が収まっていなかった。
むに「真ちゃん、やったわね!おめでと!」
所長が笑顔でオレを迎えてくれた。
真吾「あ、ありがとうございます、所長のおかげです」
むに「そんな事ないわよん、久しぶりに胸がスカッとしたわー」
真吾(こんなに喜んでくれる所長、初めて見たな・・・)
そして、オレはと真純さんの事を思い出す。
真吾(そや、真純さんも無罪になって喜んでるはずやな!)
真純「死ぬのよぉ・・・」
真吾「な、何で真純さんがそんな顔してるんスか!?」
予想に反して泣き顔の真純さんに、オレは動転する。
真純「じゃーね、真吾くん・・・アタシ、そろそろ死ぬから・・・」
真吾「ちょ・・・ちょっと待って!あなたは無罪なんです!事件は終わったんですよ!」
真純「・・・でも、ティコくんは・・・帰ってこないのよぉぉ・・・」
真吾(真純さん・・・)
真純さんの言葉に、オレは肩を落とす。
むに「おめでとう、真純さん」
真純「うう・・・ありがとぉ・・・」
所長の励ましで真純さんは我に返った。
真純「そうだ、これ、プレゼントするね」
そう言って、真純さんはあの置き時計を所長に渡した。
むに「あらぁ・・・私に?」
真純「ええ、今日は本当にありがとうございました」
真吾(てか、助けたのはオレやろ・・・)
オレは心の声でツッコミを入れる。
むに「でもこれ・・・証拠品じゃ・・・?」
真純「実はね・・・これ、アタシがティコくんのために作った時計なのよ。ティコくんのとアタシのとで2つ作ったの」
むに「まぁ・・・真純さんが作ったのね、コレ」
・・・・・・
むに「じゃ、記念にいただいておくわね」
所長は何か間を置いて、快くその時計を受け取った。
真純「でも、真吾くぅん・・・アタシ、こんなにティコくんの事、想ってたのに・・・ティコくんにとってはただのお邪魔虫だったのねぇぇ・・・悲しいわぁぁ」
真吾「真純さん・・・」(てか、もっと早く気付けよ・・・)
むに「・・・そうでもないんじゃないかしらん?」
真純さんの話に、所長が口を挟む。
真純「・・・え?」
むに「彼は彼なりに、あなたの事を思ってたはずよ」
真純「い、いいわよ・・・なぐさめなんて!」
むに「あらぁ、それはどうかしら?」
すねて目をそらす真純さんに反し、自信ありげに笑う所長。
むに「真ちゃん、わからずやの真純さんに、ティコくんの気持ちがわかる証拠を見せてあげて」
真吾「え?・・・は、はい」
ティコさんの気持ちがわかる証拠?
真吾(いきなり言われてもな・・・)
迷った末、オレはその証拠品を取り出た。
真吾「くらえ!」
・置物
真純さんの形をかたどった置物 かなり重い
真吾「真純さん、これ・・・」
真純「何・・・この時計がどうしたの?」
真吾「これ、真純さんが作ったオリジナルの時計なんスよね・・・ティコさん、旅行に行く時、これを持って行ってたんスよ」
真純「た・・・たまたま時計が無かったんじゃないの?」
真吾「それだけで、わざわざこんな重いのを持ってくんスか?」
真純「・・・・・」
真吾「どう考えるかは真純さん次第ですが・・・」
真純「・・・真吾くん」
真純さんは、少しの間を置き、そして口を開いた。
真純「今回の件、君に頼んでよかったわ・・・ホント、ありがとね」
真純さんはようやく笑顔で帰っていった・・・
真吾(これでよかったのかな・・・?)
スッ・・・
むに「真ちゃん」
真吾「!?」
所長がオレの耳元に唇を近づけてきた。
むに「証拠品って、こういうものなの。見る角度によって、その意味合いは色々変わってしまうわ・・・人間だってそう、被告が『有罪』か『無罪』か?私たちには、知りようがない。弁護士に出来るのは彼らを信じることだけ。そしてそれは、自分を信じるということなの・・・真ちゃん、強くなるのよん・・・もっとね。自分が信じたものは最後まで諦めちゃダメよ・・・」
オレの耳元まで近づいた所長の唇がゆっくりと離れていった・・・
真吾「所長・・・」
むに「じゃ、私たちも帰りましょ」
真吾「そうですね」
むに「今日は私のおごりでパーッとやるわよぉ、真純さんの無罪をお祝いしちゃいましょ!」
真吾「・・・はい!!」
オレと所長も、笑顔で法廷を後にした・・・
あとがき
YM3 /
2005-08-27 14:21:00
No.671
ども、YM3です。
前から考えていた新作「エマステ逆転裁判」が遂に完成しました!
・・・が、ゲームの再現作品なので、本作品に掲載するのはどうだろう?とエマさんにダメ出しをくらい、掲示板投稿となりました。
いかがでしたでしょうか?気に入っていただけたら幸いです。
もし好評で要望があるならば、続編も書きたいと思っているので、感想をお待ちしています!
それではー。
Re: エマステ逆転裁判
エマ /
2005-09-26 02:00:00
No.719
こんばんは。感想が遅れてしまってすみません。
これは例の逆転裁判のストーリーの換えキャラネタですね。ストーリーは私もFLASHで知っているんですが、やはりエマステキャラがそれぞれの役割を演じるとなると、また新しい面白さがあって、新鮮ですね。
まず最初に笑ったのが、ティコがいきなり殺されてる所(笑) 饗介にティコがやられるというのは考えにくいのが本来の設定での感覚なのですが、また饗介も本来なら殺しはしないのでしょうけれど、これはこれで……ティコって結構苦労人ですし、証人として色々な反応を見せる饗介も面白かったですし、良い配役だと思いました。
で、全体は本当に長いので、気になった所だけ感想をつけますと、まず真吾さんとむにさんが上司部下の関係になっている所。今までに無いコラボですけど、むにたんってあののんきで楽天家な感じがありつつ、しっかりしている所もあって、気さくにはなせる上司役として、ハマってますね。真吾さんもむにたんへの接し方も自然で、違和感がなくて良い感じです。
最大のツボはやはり真純先生でしょうか。ティコが死んだとなると……確かにこの逆転裁判第一戦のストーリーから来ると、この人しかありませんね。「死んでやるのよぉぉぉ!」とか「なにもかもおしまいよぉぉぉ!」みたいなテンションは、本編さながらでとても面白かったです。真純先生、ノリノリで演技したんでしょうね(笑)
意外だったのは、裁判長がサキさんだったということ。確かにまじめですし、しっかりこなせるとは思うのですが、ちょっと雰囲気として違うような気も……。ロイとかでも良かったんじゃないかなぁとか思うんですが、ロイがやるにしてはこの裁判長、良心的というか公平すぎますしね(笑
検察側が洋というのが、よく考えられていると思います。さすが、なんかの発明品で検察の人間になりすましたんだろーとか、本編設定とからめて色々考えちゃいます。
裁判の模様も、途中から真吾さんがなんとかして逆転していく様子が、オトギウォーズでの真吾さんの成長ぶりと印象が重なって、とても良かったです。あと、ひたすら墓穴を掘る真純先生も……(笑)
最後、なんとか無事無罪確定した真純先生ですが、ここらへんは本来の真純先生にはなかなかみられない、めそめそっとした所が楽しめましたね。確か、むにたん、真純先生の事をお姉さまと慕ってくれていますから、それと比べると逆の感じになっているという珍しい構図も面白かったです。
と、いうわけで、えーこういう換えネタ系も、面白いですね。著作権の問題はありますがw
第二話も計画中との事で、チャット内で公開という形なら大丈夫なんじゃないかなーとは思います。これにしても別のSSにしても、これからもYM3さんの新作楽しみにしていますよー♪
ADVENBBSの過去ログを表示しています。削除は管理者のみが可能です。
男「はあ・・・はあ・・・はあ・・・」
荒い、男の息遣いが聞こえる・・・
その男の右手には血がポタポタとしたたる置物が握られていた。
男の足元には、力なく倒れる1人の男性・・・
その男性の頭部からは、おびただしい限りの血が流れ出ている。
男「くそっ!なんで俺がこんな目に・・・捕まりたくない・・・こんな事で!」
男は苦しそうに声を上げる。
男「誰かが・・・誰かがやった事にするんだ・・・」
男は動揺する中、その手段を考える。
男「!・・・そうだ、あいつだ・・・」
男は何かをひらめき、ニヤッと笑った。
男の思考に浮かんだのは、自分が入る前に出てきた1人の女性の姿・・・
男「あいつがやった事にすれば・・・」
8月3日 午前9時47分
地方裁判所 被告人第2控え室
真吾(ふう・・・緊張するわ・・・)
オレは何度も深呼吸を繰り返す。
女性「真ちゃーん!」
女性の声がした。
真吾「あ・・・むに所長!」
オレが振り向くと、そこには時には優しく、時には厳しくオレを指導してくれる一流弁護士・むにの姿があった。
むに「よかったぁー、ギリギリセーフだったわねぇ」
真吾「所長・・・こんなとこで真ちゃんって呼ぶのはやめてもらえませんか?」
むに「ふふ、いいじゃんそんな事」
真吾「そんな事って・・・」
ただ、時たまからかっているようなこのセリフが玉にキズなのだ・・・
むに「それより、どう?初めての法廷は」
真吾「こ、こんなに緊張するのは大学入試の合格発表依頼っすよ」
所長の質問に、オレは緊張しながら答える。
むに「それはそれはぁ・・・随分ごぶさたしてんのねー」
真吾「は、はあ・・・あの、所長」
むに「んー?」
真吾「今日はすみませんでした、忙しい所を・・・」
むに「気にしない、気にしない!カワイイ部下の初舞台だもの」
頭を下げるオレを、所長は笑ってなだめた。
むに「それにしても初めての法廷で殺人事件を扱うなんて、性格に似合わずすごい度胸ねー。感心しちゃうわ」
真吾「そ、そうでしょうか・・・?」
むに「そーだって」
オレと所長がそんな会話を交わす中・・・
?「おしまいよぉ!」
真吾・むに「!」
?「もう何もかもおしまいよぉぉぉ!」
部屋の傍らで誰かが叫んでいた。
むに「・・・あそこで叫んでるの、真ちゃんの依頼人じゃない?」
真吾「・・・そうですね」
叫びはなおも止まらない。
?「死ぬぅ!死んでやるぅ!」
?「あたしはもう死んでやるのよぉぉぉぉ!」
むに「死にたがってるわよ?」
真吾「・・・そのようで」
ようやく静まったその女性がオレと所長のもとへとやってきた。
女性「真吾くぅん!」
真吾「ど、ども・・・真純さん」
その女性とは、彫刻専門の芸術家で数々の雑誌に名を馳せている、藤原真純その人だった。
真純「有罪よ!あたしを有罪にして!死刑でもなんでも受けてサッパリ死なせて!」
真吾「ど、どうしたんですか?」
泣き叫ぶ真純さんにオレは声をかける。
真純「ダメなの!やっぱりあたし、ダメなのよ!ティコくんのいない人生なんて・・・死んだ方がマシよぉ!一体・・・一体誰がティコくんを・・・!教えてよぉ・・・真吾くぅん!」
真純さんは悲痛の声で泣き叫ぶ。
真吾(ティコさんを殺害した犯人か・・・新聞に書いてあるのはあなたの名前なんだけどね・・・)
オレの名は山下真吾、3か月前に所属したばかりの新米弁護士や。
そして今日はオレの初めての法廷。
さて・・・今回の事件はいたってシンプル。
マンションの一室で若い男性が殺害された。
逮捕されたのは、彼にしつこく猛アピールしていた女性・・・藤原真純。
以前から被害者に目を付けていた女性や。
でも、真純さんは殺人をするような人じゃない・・・オレはそう思う。
・・・・・
勢い余って、ホンマに殺ってないやろーなぁ・・・
8月3日 午前10時
地方裁判所 第2法廷
傍聴員「ざわ・・・ざわざわ・・・ざわ」
サキミ(えぅ〜、どうして私たちはこんな役なんですかぁ〜・・・)
うさこ(はうう・・・いいじゃないですか、出番があるだけでも・・・)
コン!
中央の席に座るサキ裁判長の木槌が打ち付けられる。
サキ「これより、藤原真純の法廷を開始します」
サキ(・・・で、なぜ私が裁判長なの?)
むに(いいじゃないの、似合ってるわよー、サッちゃん♪)
ま、まあそれは置いといて・・・
※現在の法廷記録
・弁護士のバッジ
これが無いと誰もオレを弁護士と認めてくれない
・ティコの解剖記録
死亡時刻は7月31日 午後4時以降、5時まで 鈍器による一撃で失血死
洋「検事側、準備完了してますよ」
真吾「べ、弁護側も準備完了です・・・」
オレと向かい合わせに立つ洋検事、そしてオレが裁判長に声を掛ける。
サキ「・・・山下真吾」
緊張しているオレを見抜いて、裁判長が声を掛けてきた。
サキ「あなたは・・・今回が初めての法廷だったわね?」
真吾「は、はい」
サキ「依頼人が有罪か、無罪かは・・・弁護士のあなたにかかっているわ・・・弁護士のあなたがそんなに緊張していては・・・困るわね」
真吾「はい・・・すみません」
オレは軽く頭を下げる。
サキ「では、裁判を始める前に・・・本当に『準備完了』しているかどうか、試してみるわ・・・」
真吾「は、はい!」
真吾(うわあ・・・頭ん中が真っ白になってきた・・・)
サキ「簡単な質問をするから、答えて・・・まず、この事件の被告人の名前は?」
真吾「ヒコクニン・・・それは、藤原真純さんの事ですね」
サキ「そう・・・」
裁判長はこくりと頷いた。
サキ「そんな感じで落ち着いて答えなさい・・・」
裁判長は再び質問を出す。
サキ「では次・・・今回は殺人事件だけど・・・被害者の名前は何だったかしら?」
真吾(それならわかるわ・・・あれだけ調書を読んだし)
・・・・?
真吾(あ・・・あれ?ど、ど忘れしとる!何やったっけ!?)
オレは動揺してしまった。
むに「し、真ちゃん!あ、あ、あなたって人は・・・被害者の名前も知らないの?」
オレの隣に座っている所長が険しい顔でこちらを見ている。
真吾「ま、まさか!ちょっと記憶から抜けてただけです!」
むに「・・・な、なんだかアタマが痛くなってきたわ」
所長は流れる汗をふきながらため息をついた。
むに「事件のことは法廷記録を見ればわかるわ!ちゃんとチェックしておいてね・・・お願いだから」
サキ「では答えて・・・被害者の名前は?」
法廷記録をチェックし、オレは答える。
真吾「えと・・・被害者の名前はティコさんですね」
サキ「・・・よろしい・・・では、彼はどうやって殺害されたか・・・わかる?」
真吾「鈍器で1発、ガーンとやられて・・・」
サキ「そう・・・では、質問はこれくらいにして・・・そろそろ審理を始めましょう・・・あなたも、だいぶ落ち着いたようだから・・・」
真吾「はい」(そうでもないけど・・・)