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2人のモモ新作
K'SARS /
2005-09-18 20:12:00
No.707
2人のモモ〜新しい友達と衝撃の再会〜
「あっ、ここだ」
翌日。
昨日、劇的な再会と果たした私と、サルのモモちゃんと、ラナの3人で、私の知り合いが経営している喫茶店へとやってきた。
『ホテル喫茶「玉手箱」』
外に出ている看板には、確かにそう書いていた。
「ホテル喫茶?」
「あまり、聞いたことないです」
「まあ、入ってみればわかるわよ」
そう言って、私はドアに手をかけて、開けた。
「こんにちはー」
「えう。いらっしゃいませですぅ〜」
そういって出迎えたのは、フリヒラのコスチュームを着た、見た目、私たちとそんなに変わらない女の子だった。
バイトの子かな?
「ようこそ、ホテル喫茶『玉手箱』へ〜。お泊りですか〜? それとも、喫茶ですか〜?」
「喫茶の方で、カウンター席」
「かしこまりました〜。では、こちらへどうぞ〜」
女の子に案内されて、ハーブのいい匂いが鼻に広がて、ヒアリング作用がありそうな音楽がなっている、ちょっと暗めな喫茶スペースに着いた。
カウンターには、私の妹的な女性がいた。
「やっほ、みさき」
「あっ、桃華さん。いらっしゃいませ。来てくれたんですね」
「うん。だって、みさきのお店だもんね」
「あ、ありがとうございます」
ほわわ〜んとした笑顔。
彼女のチャームポイントであり、人柄の良さを表していた。
獅子乃美咲。
高校時代の後輩で、よく一緒に遊んでいて、卒業と同時に、父親が経営しているここに就職したというわけ。
それと、今はデザートフェアをしているから、ついでってわけじゃないけど、モモちゃんとゆっくり話したかったから、久しぶりに顔を拝むつもりでやってきた。
「可愛いね、その服」
「ありがとうございます。従弟のクリスが集めていたのですが、すごくいいデザインでしたので、本人の希望もありましたので、使わせてもらっているんです」
「えぅ〜。可愛いですぅ〜」
「だよね」
アルバイトの2人も、今のコスをすごく気に入っているみたいで、私たちの横で、他にいた客にサービスなのか、一回転した。
「あっ、こちらは、アルバイトの、奥村佐希魅さんと、朝村美月さんです」
「よろしくですぅ〜」
「でーす」
「あらん? みさきちゃん。私の紹介はないのかしらん?」
「うん?」
横を見てみると、見た目は普通の男だけど、雰囲気がそうでないと言った人が、コーヒーを飲みながら、紹介してくれとせがんでいる。
この人、俗に言う、アレ?
「こちら、玉手箱の常連での、エマさん。父がここの経営をしたときから足を運んでくださっていて、うちのよきアドバイザーでもあるんですよ」
「そういうことよん。よろしくね〜」
「よ、よろしく」
なんというか、明らかに他のアレの人たちとは違うよね。
外見はびしっとスーツで決めているのに、中身が外れているという。
みさきが懐いているんだから、いい人だと思う。
「さてと、いつまでも注文しないのもなんだから、しちゃうね」
「そんなに急がなくてもいいんですよ。ここは喫茶店ですが、みなさんが心地よく寛いでくれる場所なんですから」
「私はいいんだけどね。この2人が、特にこの子がお腹を空かせているから」
「はう〜。私、そんなに空かせていないよ。……パンケーキ!」
ちょっと拗ねながらカウンター席に座ったラナは、メニューを見ると声を高らかに、好物のパンケーキを注文した。
少し恥ずかしいかな。
「ほら、モモちゃんも」
「は、はい。えっと、モモもラナさんと同じもので」
「パンケーキだね。じゃあ、私は自家製コーヒーで」
「かしこまりました。みさき店長! オーダーが入りました」
「はい。パンケーキ2つとコーヒーですね。少々お待ちくださいませ」
「えう〜。お待ちくださいですぅ〜」
元気でのほほんな声が、喫茶店全体に響き渡る。
これが、ここの雰囲気なのか。
「さてと、じゃあ改めて。久しぶり、モモちゃん」
「あ、はい。お久しぶりです、お姉さん」
お互いに向かい合って、再会の握手をする。
やっぱり、昔の自分との握手というのは、なんか不思議な感じというか、恥ずかしいね。
「お待たせしました」
ほどなくして、私たちの前に注文していたオーダーが置かれる。
「うわ〜」
ほっかほっかのパンケーキの上に乗っかっているバターがほどよく溶け、その上からかけられたメープルシロップ。
この店の一番人気だっていうのもうなずける。
ラナは、今にも涎が垂れそうな勢い。
「桃華お姉ちゃん。食べて、いい?」
「うん。モモちゃんもどうぞ」
「は、はい」
「いただきまーす」
そういうが早いが、ラナは一気にナイフとフォークを使ってパンケーキを一口サイズにして、口へと運ぶ。
普段はのんびりなラナから想像がつかない。
「はう〜。おいしいよ〜」
「はぐはぐ。…本当、おいしいです」
「喜んでくれて何よりです」
「…へえ。すごいおいしいよ、みさき」
「ありがとうございます」
「でしょー。みさきちゃんは、いいお嫁さんになるわよねー」
「エマさんも、ありがとうございます」
うっ、こうして身近にその手の人の言葉を聞いたら、身震いが…。
まあ、みさきが懐いでいるんだから、私もそのうち慣れるでしょう。
「ねえ、桃華お姉ちゃん」
パンケーキを半分ぐらい食べたところで、ラナが私の袖を引っ張った。
この展開。
これは、私にアレを出せという、ラナからの合図だった。
ラナは、お店で出された既存の味を半分ぐらい楽しんでから、特製のシロップをかけて続きを楽しむという、少し通なことをやる。
でも、ここでいうアレというのは、当然アレなわけで…。
「やめておきなさい。パンケーキ、十分においしいでしょ?」
「そうだけど…。ねえ」
「うっ……」
まだ穢れを知らない純粋無垢な顔で見つめられたら……。
今後の躾にも影響が…。
「うるうる」
………。
「うるうる」
はうはぁ!
「み、みさき」
「はい?」
「ここって、持込って大丈夫?」
「えっと、基本的には大丈夫ですよ」
「じゃあ」
私は手に持っていたカバンから、ドレッシングなどを入れる容器を取り出す。
それには、透明な、非常な液体が入っていた。
「はう〜。待っていたよー」
ラナはそれを私からもらうと、かけるところにかけてあったふたを取って、そこから液体をパンケーキをかける。
同時に、
「えう〜!」
「うにゅー」
「ぐへ!」
バイトの子たちと、エマさんが、同時に奇怪な声を出した。
うんうん。これが普通の反応。
「ラナさん。なんですか、それ?」
「なんか、シロップみたいですね」
「うん! 桃華お姉ちゃんが作ってくれた、特製のシロップです」
かろうじて、モモちゃんとみさきは耐えているみたい。
まあ、ラナがかけた量もそんなでもなかったかもしれないけど。
「はぐはぐ。はう〜。幸せだよ〜」
「よかったですね」
「うん。あっ、モモちゃんもかける?」
「も、モモは、いいです」
うんうん。それで正解だよ、モモちゃん。
それを食べちゃうと、軽くお花畑が見えちゃうからね。
一瞬は気持ちいいけど、もう戻って来れない危険性があるから。
「それ、どうやって作ったら、そうなるのかな?」
口で必死に息をしながら、朝村さんが興味津々に覗き込んできた。
「よかったら、教えてあげるよ」
「はい。ねえ、佐希魅ちゃんも教えてもらえば?」
「えう。は、はいですぅ」
「私も参考のために、お願いしますね」
「も、モモも」
「うふふ。じゃあ、カウンターじゃなんだから、あっちの席で」
ほぼ気絶状態のエマさんと幸せそうな顔で食べているラナをほっぽといて、私たちはちょっと広めのカウンター席に陣取った。
それから、普段持ち歩いている小さなノートを取り出して、桃ラナSPのレシピと使用方法をこと書いていく。
とはいえ、細かい味の判定はほとんどラナ任せにしていたから、分量とかは今まで一番美味く作れたときと、こうすれば口当たりがいいかなというものを参考する。
「へえ、平野さんって、すごいんだね」
「そんなことないよ。朝村さんだって、やれば出来るよ」
「あはは。だといいんだけど。あっ、それと、私のことは、美月でいいよ」
「うん。美月も、私のことは桃華でいいから」
「遠慮なく呼ばせていただくよ、桃華」
とまあ、ラナが食べ終わるまで、桃ラナSPの話題中心に盛り上がった。
Re: 2人のモモ新作
K'SARS /
2005-09-18 20:15:00
No.708
「はう〜。今度は桃華お姉ちゃんのパンケーキが食べたいよ〜」
「はいはい」
玉手箱を出た私たちは、モモちゃんを送ってから、一路、我が家へと足を向けていた。
もしかしたら、お兄ちゃんに会えるかと思ったけど、まだ仕事から帰って来ていない為に会えなかった。
とはいえ、会っても何を言ったらいいのかわからなかったから、私としては助かったって感じ。
「今度は、私がモモちゃんの家に遊びに行こうっと」
「それがいいね」
「もちろん、お菓子持参で」
「……そうね」
そのときは、みんなに会う様な口当たりになるようにしないと。
ラナの友達付き合いと、私の世間の風当たりを強くしないために。
「えう〜。えう〜」
「いつまで泣いているんだよ」
「だってぇ〜。可愛そうですぅ」
「はいはい。そうだったな」
「えうううううう〜」
「うん? この声は…」
後ろを振り返ると、さっきまで玉手箱でアルバイトをしていた佐希魅ちゃんと、どこで見たことがある男の人がいた。
関係的に、兄妹のようだけど……。
「本当、サキミは、純粋天然えうバカボケ天使だな」
「えう〜。ひどいです〜」
「……まさかね」
ふと、私の脳裏に、数年前にいなくなった従兄の存在が浮かんだ。
私は詳しく教えてもらっていなかったけど、何かの事件を起こして、少年院行きになった聞いていた。
そんな人が、こんな場所にいるはずがない。
でも、現実は確実にそこにあって、私の目の前で止まってしまった。
「あっ、桃華さん。さっきはどうもですぅ」
「うん」
「……よお」
「……うん。元気そうだね、浩兄ぃ」
もう1つの、運命の出会いだった。
<続>
後書き♪
K'SARS「久しぶりに書いた」
晴華 「やっほー。みんなのアイドル、晴華ちゃんだよー」
K'SARS「……恐らく、おいらのキャラでもっとも印象が薄いキャラ」
晴華 「それは、バカ作者が私を出さないからだよ。私を出してくれれば、姉ちゃまの次くらいに人気になること間違いなし」
K'SARS「まあ、後書きでしっかりアピールせいや」
晴華 「後書きだけ?」
K'SARS「出番があるだけ我慢しろ。それに、もう少し進んだらきっと出番があるぞ」
晴華 「それって、姉ちゃまが、ああなってからでしょう?」
K'SARS「まあな」
晴華 「なんか、あんまり嬉しくない」
K'SARS「もしろ、喜んで出てもらったほうがいやだ」
晴華 「そうだよね」
K'SARS「まあ、いずれにしても出てもらうから、リハビリはしておくよ」
晴華 「よろしくね。じゃないと、お菓子を食べさえるからね」
K'SARS「……」
晴華 「にっこり」
K'SARS「ったく、姉妹揃って凶暴なんだから」
晴華 「姉ちゃまー」
K'SARS「だあー。わかったから、それだけはやめてくれ」
晴華 「分かればよろしい」
K'SARS「というわけで、さらに進展していく2人のモモをヨロシク」
晴華 「バイバイだよー」
Re: 2人のモモ新作
エマ /
2005-10-25 02:21:00
No.747
こんばんはー。ようやくこの新作へのレスが書けます。遅れましてすみません。
いやー、ついに、ついに出ましたね。ホテル喫茶「玉手箱」。
ホテルとついているのは、確かホテルが隣に隣接しているんでしたね。そちらはノエルさんの経営という設定だったかな。ま、大家さんは私ですけどねーw
みさきさんをイメージしたキャラ、「美咲」ちゃんが店長という豪華設定だけに、人気シリーズになりそうな気はしますが、しかしライオンだからって、「獅子乃」はさすがに安直極まりな……いや、むしろそれくらいのノリが相応しいのかなw
性格の方も「ほわわん」と若干天然が入ってるっぽいし、文叔さんの「みさき」ちゃんとはまた違った味わいが……。やや亮たんのエマステ学園Ver美月たんに似ているとも言えなくもない……うーむw
で、ですね。ウチの美月たんをバイトとして登場させてくれたのは嬉しいんですが……。
なんですかこのハードゲイっぽいエマさんは!?w
あれー? おかしいな。俺こんなアレな人じゃないんだけど……。いやでも最初コレを見たときこのスレ削除しようかなとか思ったり思わなかったりしたけど(うそw
別にこんな事しなくたってマトモな大家さんにしたらその立場を利用してあーだこーだゴニョゴニョするなんて一言も言ってないのに(いや言いました)、でも美咲ちゃんには信頼されてるっぽいし、面白そうだからこのまま突っ走ってみる事にしよう。フォーーーーヽ(▼∀▼)ノーーーーゥ!!ww
で、髪型とかどういう感じなんでしょうか……。
それはそうと
「さてと、じゃあ改めて。久しぶり、モモちゃん」
「あ、はい。お久しぶりです、お姉さん」
のところで、あーそういえば桃華ちゃんってモモちゃんのオリジナルだったね。なんて今更思い出したりしたのですが、こうしたメほのぼのメンバーでパンケーキ食べたりだべったりするのってなんか良いですな。エマHGとは別に私自身もなんか玉手箱に入り浸りたくなってきました(笑)
しかし、桃ラナSPをきっかけに、ウチの美月ちゃんが桃華ちゃんと第一話から打ち解けてきましたね。恐るべし桃ラナSPの威力。美月たん、きっとアパートに帰ったらロックとティコに作ってやって食わせるのであろうw
浩人さんとの再会というビッグイベントも最後に用意されて、第一話としてはかなり快調なスタートを切ったんではなんでしょうか。
第二話すでに上にありますけど、感想もう少し待ってくださいねー。第3話も楽しみにしてます♪
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2人のモモ〜新しい友達と衝撃の再会〜
「あっ、ここだ」
翌日。
昨日、劇的な再会と果たした私と、サルのモモちゃんと、ラナの3人で、私の知り合いが経営している喫茶店へとやってきた。
『ホテル喫茶「玉手箱」』
外に出ている看板には、確かにそう書いていた。
「ホテル喫茶?」
「あまり、聞いたことないです」
「まあ、入ってみればわかるわよ」
そう言って、私はドアに手をかけて、開けた。
「こんにちはー」
「えう。いらっしゃいませですぅ〜」
そういって出迎えたのは、フリヒラのコスチュームを着た、見た目、私たちとそんなに変わらない女の子だった。
バイトの子かな?
「ようこそ、ホテル喫茶『玉手箱』へ〜。お泊りですか〜? それとも、喫茶ですか〜?」
「喫茶の方で、カウンター席」
「かしこまりました〜。では、こちらへどうぞ〜」
女の子に案内されて、ハーブのいい匂いが鼻に広がて、ヒアリング作用がありそうな音楽がなっている、ちょっと暗めな喫茶スペースに着いた。
カウンターには、私の妹的な女性がいた。
「やっほ、みさき」
「あっ、桃華さん。いらっしゃいませ。来てくれたんですね」
「うん。だって、みさきのお店だもんね」
「あ、ありがとうございます」
ほわわ〜んとした笑顔。
彼女のチャームポイントであり、人柄の良さを表していた。
獅子乃美咲。
高校時代の後輩で、よく一緒に遊んでいて、卒業と同時に、父親が経営しているここに就職したというわけ。
それと、今はデザートフェアをしているから、ついでってわけじゃないけど、モモちゃんとゆっくり話したかったから、久しぶりに顔を拝むつもりでやってきた。
「可愛いね、その服」
「ありがとうございます。従弟のクリスが集めていたのですが、すごくいいデザインでしたので、本人の希望もありましたので、使わせてもらっているんです」
「えぅ〜。可愛いですぅ〜」
「だよね」
アルバイトの2人も、今のコスをすごく気に入っているみたいで、私たちの横で、他にいた客にサービスなのか、一回転した。
「あっ、こちらは、アルバイトの、奥村佐希魅さんと、朝村美月さんです」
「よろしくですぅ〜」
「でーす」
「あらん? みさきちゃん。私の紹介はないのかしらん?」
「うん?」
横を見てみると、見た目は普通の男だけど、雰囲気がそうでないと言った人が、コーヒーを飲みながら、紹介してくれとせがんでいる。
この人、俗に言う、アレ?
「こちら、玉手箱の常連での、エマさん。父がここの経営をしたときから足を運んでくださっていて、うちのよきアドバイザーでもあるんですよ」
「そういうことよん。よろしくね〜」
「よ、よろしく」
なんというか、明らかに他のアレの人たちとは違うよね。
外見はびしっとスーツで決めているのに、中身が外れているという。
みさきが懐いているんだから、いい人だと思う。
「さてと、いつまでも注文しないのもなんだから、しちゃうね」
「そんなに急がなくてもいいんですよ。ここは喫茶店ですが、みなさんが心地よく寛いでくれる場所なんですから」
「私はいいんだけどね。この2人が、特にこの子がお腹を空かせているから」
「はう〜。私、そんなに空かせていないよ。……パンケーキ!」
ちょっと拗ねながらカウンター席に座ったラナは、メニューを見ると声を高らかに、好物のパンケーキを注文した。
少し恥ずかしいかな。
「ほら、モモちゃんも」
「は、はい。えっと、モモもラナさんと同じもので」
「パンケーキだね。じゃあ、私は自家製コーヒーで」
「かしこまりました。みさき店長! オーダーが入りました」
「はい。パンケーキ2つとコーヒーですね。少々お待ちくださいませ」
「えう〜。お待ちくださいですぅ〜」
元気でのほほんな声が、喫茶店全体に響き渡る。
これが、ここの雰囲気なのか。
「さてと、じゃあ改めて。久しぶり、モモちゃん」
「あ、はい。お久しぶりです、お姉さん」
お互いに向かい合って、再会の握手をする。
やっぱり、昔の自分との握手というのは、なんか不思議な感じというか、恥ずかしいね。
「お待たせしました」
ほどなくして、私たちの前に注文していたオーダーが置かれる。
「うわ〜」
ほっかほっかのパンケーキの上に乗っかっているバターがほどよく溶け、その上からかけられたメープルシロップ。
この店の一番人気だっていうのもうなずける。
ラナは、今にも涎が垂れそうな勢い。
「桃華お姉ちゃん。食べて、いい?」
「うん。モモちゃんもどうぞ」
「は、はい」
「いただきまーす」
そういうが早いが、ラナは一気にナイフとフォークを使ってパンケーキを一口サイズにして、口へと運ぶ。
普段はのんびりなラナから想像がつかない。
「はう〜。おいしいよ〜」
「はぐはぐ。…本当、おいしいです」
「喜んでくれて何よりです」
「…へえ。すごいおいしいよ、みさき」
「ありがとうございます」
「でしょー。みさきちゃんは、いいお嫁さんになるわよねー」
「エマさんも、ありがとうございます」
うっ、こうして身近にその手の人の言葉を聞いたら、身震いが…。
まあ、みさきが懐いでいるんだから、私もそのうち慣れるでしょう。
「ねえ、桃華お姉ちゃん」
パンケーキを半分ぐらい食べたところで、ラナが私の袖を引っ張った。
この展開。
これは、私にアレを出せという、ラナからの合図だった。
ラナは、お店で出された既存の味を半分ぐらい楽しんでから、特製のシロップをかけて続きを楽しむという、少し通なことをやる。
でも、ここでいうアレというのは、当然アレなわけで…。
「やめておきなさい。パンケーキ、十分においしいでしょ?」
「そうだけど…。ねえ」
「うっ……」
まだ穢れを知らない純粋無垢な顔で見つめられたら……。
今後の躾にも影響が…。
「うるうる」
………。
「うるうる」
はうはぁ!
「み、みさき」
「はい?」
「ここって、持込って大丈夫?」
「えっと、基本的には大丈夫ですよ」
「じゃあ」
私は手に持っていたカバンから、ドレッシングなどを入れる容器を取り出す。
それには、透明な、非常な液体が入っていた。
「はう〜。待っていたよー」
ラナはそれを私からもらうと、かけるところにかけてあったふたを取って、そこから液体をパンケーキをかける。
同時に、
「えう〜!」
「うにゅー」
「ぐへ!」
バイトの子たちと、エマさんが、同時に奇怪な声を出した。
うんうん。これが普通の反応。
「ラナさん。なんですか、それ?」
「なんか、シロップみたいですね」
「うん! 桃華お姉ちゃんが作ってくれた、特製のシロップです」
かろうじて、モモちゃんとみさきは耐えているみたい。
まあ、ラナがかけた量もそんなでもなかったかもしれないけど。
「はぐはぐ。はう〜。幸せだよ〜」
「よかったですね」
「うん。あっ、モモちゃんもかける?」
「も、モモは、いいです」
うんうん。それで正解だよ、モモちゃん。
それを食べちゃうと、軽くお花畑が見えちゃうからね。
一瞬は気持ちいいけど、もう戻って来れない危険性があるから。
「それ、どうやって作ったら、そうなるのかな?」
口で必死に息をしながら、朝村さんが興味津々に覗き込んできた。
「よかったら、教えてあげるよ」
「はい。ねえ、佐希魅ちゃんも教えてもらえば?」
「えう。は、はいですぅ」
「私も参考のために、お願いしますね」
「も、モモも」
「うふふ。じゃあ、カウンターじゃなんだから、あっちの席で」
ほぼ気絶状態のエマさんと幸せそうな顔で食べているラナをほっぽといて、私たちはちょっと広めのカウンター席に陣取った。
それから、普段持ち歩いている小さなノートを取り出して、桃ラナSPのレシピと使用方法をこと書いていく。
とはいえ、細かい味の判定はほとんどラナ任せにしていたから、分量とかは今まで一番美味く作れたときと、こうすれば口当たりがいいかなというものを参考する。
「へえ、平野さんって、すごいんだね」
「そんなことないよ。朝村さんだって、やれば出来るよ」
「あはは。だといいんだけど。あっ、それと、私のことは、美月でいいよ」
「うん。美月も、私のことは桃華でいいから」
「遠慮なく呼ばせていただくよ、桃華」
とまあ、ラナが食べ終わるまで、桃ラナSPの話題中心に盛り上がった。