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てんゆび2章8・1
K'SARS / 2006-10-10 03:32:00 No.992
   天使とのゆびきり〜絶望と希望の闘い その壱〜


「って、ちょっと待った、ヒロヒロ!」
 ズシャァァァァァァァ。
 狙いを着けていたターゲットがいきなり消えてしまって、つけた勢いを止めることが出来なくて、派手にこけてしまった。
 サキミはいいとして、アズミとカズミが見ている前でこの格好は、ぶっちゃけ恥ずかしいものがある。
「な、なんだよ、いきなり」
「みんな、よく聞いて。めいどの世界に、守護堕天使たちが侵入したらしいの。しかも、ゲートが解放されつつあるという、最悪の事態のおまけ付き」
「「「ええー!」」」
 守護天使たちが一斉に大声を上げて、顔を真っ青にさせていた。
 内容はさっぱりわからんが、非常にやばい状況になっているということだけはわかる。
 サキミなんて、少しばかり驚かせば失神してしまいそうな状態になっていた。
「めいどの世界の管理はどうなっているんだよ?」
「守護堕天使は、見た目は普通の守護天使と同じなんですぅ。違いは、内に秘めた思いと、メイド服だけなんですよぉ。だから、見逃してしまっても不思議ではないんですぅ」
「ということは、多くの守護堕天使が侵入しているってことー?」
「た、大変です」
「今、チカぼーがゲート付近にいる連中を相手しているみたいだけど、装備が1つしかないから、そうそう足止めも出来ないんだよ」
「フィーネちゃん。私は、全体の指揮を執るために一度戻るね。悪いけど、チカちゃんが戻るまで、08小隊の隊長をしてちょうだい」
「はい!」
 沙子は冷静に指示を出して、急いで闘技場から離れた。
 ああ見えても、やはり援護天使の長をしているだけあって、しっかりしているな。
「ど、どどどど、どうしましょう〜」
「なあ、サキミ」
「え、えぅ?」
「テンパっているところ悪いんだが、俺に状況を説明してくれないか? なにやら、大変なことになっているってことだけはわかるんだが」
「ヒロっち。口で説明するより、そういう状況に身を置くことになるから、嫌でもわかるわよ」
 フィーネは懐からナイフを取り出して、すっと構えた。
 それに合わせるように、アラドたちも武器を出して、俺とサキミとそらを囲むようにフォーメーションを組んだ。
「…なるほどね。よくわかった」
 気が付けば、数十人の武装した少女集団が俺たちを包囲していた。
 手にはその年齢からは相応しくないほど、不気味にライフルやらナイフなら光っていた。
 しかも、多少なりとも訓練が行き届いていると見た。
「かなり念入りにしてきたみたいね」
「だな」
「ほう、人間がいるのか」
 入り口から出てきたのは、いかにもリーダーぽい風格の女。
 手には同じくライフルを持っている。
「あんたたち、めいどの世界の歴史に残ることをしたいみたいね」
「そうだ。この世界を絶望で彩られる、記念すべき日のな」
「夢を見るのは勝手だけど、早々うまく行くかしらね」
「この状況でどうするつもりだ?」
 フィーネの挑発行為に動じずに、女は周りの少女たちにライフルを構えるように指示した。
 確かに、四方八方を囲まれた状態では、ちと厳しいものがある。
「上からは、抵抗するものは殺せと言われているからな。威嚇はしないぞ」
「そりゃどうも。でもね!」
 フィーネの語尾が強くなったのと同時に、アラド、アズミ、カズミ、フィーネの4人が一斉に動いた。
 一気にライフルを構えている少女たちの懐へとつめて、それぞれの武器を用いて殲滅していった。
 特に、アラドたちが1人やっつけていくのに対し、フィーネは3人やっつけるという、今の役職は伊達じゃないと言わんばかりの勢いだった。
 つうか、あまりにも突然のことなんで、どう表現していいのかわからん。
 そして、周りには女しかいなくなった。
「なっ!」
「雑魚とは違うのよね、雑魚とは!」
「……お前、自分で言って感動するよな」
「だってこれ、一度言ってみたかったのよね」
 まあ、気持ちもわからなくもない。
 というかめいどの世界の連中は、人間の世界のアニメの研究でもしているんだろうか?
 チカの出したハモニカ砲にしても、フィーネのセリフにしても、いずれもある作品関連だな。
「さて、一気に状況はこちらに有利だけど、増援でもある?」
「く、くそ! こうなれば」
 と、ものすごい形相で、女が俺のところに突っ込んできた。
 やはり人間とは違うのか、一般的な女性の速さとは違っていた。
 だが、それが正面だったのが失敗だった。
「うりゃ」
 手を出してきたところに、俺はその手を取って捻って転ばせてのち、鋼糸で全身を縛った。
 なんか、ちょっとピンク色の縛り方をしてしまったが、この際気にしないことにしよう。
「えぅ〜。一体、何が起こったんですかぁ〜? なんか、一瞬のうちでしたから、わかりませんでしたぁ〜」
「……まあ、サキミだし」
「えぅ〜。そらちゃん、変な納得しないでよぉ〜」
「はいはい。漫才はそこまでね。にしてもヒロっち。やっぱりやるわね」
「そんなことないだろう? 正面から攻められたら、誰でも対処は出来る」
「でも、普通の人間が反応できる速さではなかったというのは確かだよ。さっきのしぐさを見ている限り、この娘、犬系統の堕天使みたいだし」
 そういえば俺に向かってくるときに、一瞬、両手を地面についていたな。
 おまけに、まるで獲物を引っ掻くような手の出し方だったし。
「多分、狼とかそういう部類だと思うの」
「まあ、詳しくはこいつに聞いてみようぜ」
「もう遅いよ」
 アラドがそういって女を仰向けにさせると、すでに女は息絶えていた。
 苦痛と悔しさが入り混じり、見ているこっちの心が痛むぐらいの顔をしていた。
「見てよ。この人の心臓の所にある装置が発動して、心臓を貫いている。最初から、自供や投降はないってことだね。周りの連中も、同じように死んでいる」
「え、えぅ〜」
「ほら」
 泣きそうになっているサキミを、俺は優しく抱きしめた。
 無理もない。目の前で、しかも、自分で命を絶つ場面に出くわしたんだ、嫌でもそうなる。
「ご主人様。私たちも、いいですか?」
「いい〜?」
「いいよ。おいで」
 サキミほどではなかったが、涙腺が緩みまくっていたアズミとカズミも、一緒に抱きしめてやる。
「フィーネ様。この連中、どう思います?」
「さあ? 今の状況じゃなにも判断できないわ。ただ、単純な目的でめいどの世界を制圧しようとしているんじゃないってことはわかる。じゃなかったら、こんな装置はつけないわよ」
「フィーネ。状況判断よりも、早くここを離れたほうがいい。またこんなところで襲われたら逃げ場がないからな」
「そうね。ヒロっちの言うとおり。早くチカぼーと合流したほうがいいわね。あの娘、1人でがんばっているから」
 その場にいた全員がうなずき、素早く闘技場から離れた。
 そして、その先にあったのは、地獄だった。

てんゆび2章8・2
K'SARS / 2006-10-10 03:33:00 No.993
「はあ、はあ…」
 チカは、近くのシェルターに避難していた。
 シェルターは、万が一、めいどの世界に危機が起こったときに使用する避難場所で、至る所に存在している。
 入り口は二箇所あり、それぞれが外からは空かないようになっており、自動制御で管理されている。
 また、頑丈な扉の構造とめがみ印の防護装置が併用されているので、多少の衝撃にも耐えられる構造になっている。
 チカは閉まる直前だったシェルターに、最後の力を振り絞って滑り込んでいた。
 最初に来ていた服はボロボロになり、今は、本来めいどの世界で着るメイド服になっていた。
 全身の至るところに傷が出来て、血も流れている。
 それは、彼女がゲートの死守に失敗したということ。
 元々、持っていた装備も少ないし、いくら実力があったとしても、1人ではどうにもならないほどの数だった。
 だが、本来の目的である足止めは果たしたのだから、十分すぎるほどの働きである。
「待ってください。今、治癒を施しますから」
 その場に居合わせた上級守護天使の娘たちが、チカの傷口に手をかざして、治癒の呪文を施して、さらに薬草を当てた。
「はや!」
「あっ、ごめんなさい。痛かったですか?」
「い、いえ。大丈夫ですわ。それよりも、このシェルターに収容されている娘たちの中で、上級守護天使はどのぐらいいますか?」
「それが、戦闘に耐えられる上級守護天使は、私たちだけしかいないのです。ほとんどが下の娘たちを守るために負傷してしまいした。中には、自分の命を投げ出して助けた娘もいます」
 奥に目をやると、身体の至る所に銃撃を受けた痕があり、悔しそうな顔をして命の灯火を消されてしまった娘たちが、数人安置されていた。
 その側には、下級、中級守護天使の娘たちが泣き崩れていた。
「状況は最悪ってことですわね」
「はい。おまけに、私たちは後方援護支援を主としていますので、戦闘力はほぼ皆無なのです」
「つまりは、私がいきなり最後の砦ですわ」
 チカは深い溜息を着きながら、外の気配を探るために集中する。
 だが、怪我の痛みのために、本領を発揮できないでいた。
「…このシェルターの防壁はどのぐらい持ちますか?」
「わかりません。そもそも、めいどの世界に呪詛悪魔や守護堕天使が攻めて来るなんて想定外なんです。誰にもわかるわけありません!」
 それはチカ以外の全ての守護天使の意見だった。
 めいどの世界で暮らしている守護天使たちは、いつの日かご主人様の元で恩を返せることを夢見て、静かに平和に暮らしてきた娘がほとんど。
 たまに実践訓練をするが、それはご主人様を守るためだけの訓練であり、呪詛悪魔たちと戦うためのものではなかった。
 そんな彼女たちに、今の外の光景は地獄絵図そのものだった。
「どうして、こんなことに……」
「酷なようですが、今は、自分たちに出来ることをやるしかないですわ。生きるためにも、やるしかないんですわ」
「でも、でも!」
「そうやってクズって、死にますか? がんばって亡くなった娘たちの分まで、生きたいとは思いませんか?」
「それは、そうですけど…」
「でしたら、私に力を貸してくださいですわ。そうすれば、私が囮になって、ここから引き剥がしますから」
 その場にいた全員が、驚きを隠せなかった。
 治癒を施したとはいえ、まだ傷口が塞がっていないのは誰が見ても明らかなチカが囮を引き受ける。それは、自殺行為と同意義だとわかっているから。
 同時に、そうしてくれることだけが、自分たちが唯一助かる道だということもわかっていた。
「……どうすれば、いいんですか?」
「この場にいて、少しでも治癒を施せる娘がいたら、私に限界まで掛けてほしいんですわ。もちろん、重症な方がいらっしゃればそちらを優先しても構いません。お願いしますわ」
「…中級の娘たちは、みんなここに集まって。この方に、みんなの力の限り、治癒を施してください」
「「はーい」」
 応える声は小さかったが、チカの元に集まってくる娘たちはみな、やる気に溢れていた。
「はう〜」
 その中の1人が、間直でみたチカの怪我のひどさに、悲痛な(?)声を出した。
「大丈夫ですわ。落ちついて」
「は、はひ」
「「せーの」」
 一斉に、中級守護天使の娘たちが、チカに癒しを施していく。
 広範囲に亘たるので、上級守護天使が1人でかけるよりも効果はある。
 その証拠に、チカの顔には血が巡り始めて、激しく息を吐いていたのが和らいでいた。
(ご主人様。待ってくださいですわ。今、行きますから)
「はう? ご主人様が、めいどの世界にいるんですか?」
「はやや? ど、どうして、私の思っていたことが?」
「私、テレパシーが使えますから、少しの距離なんですが、相手の心を読めるんです。もちろん、自分から読まない限りは伝わってきませんから。お姉さんのは、直接触れていたから、自然に流れてきたんです」
「はや、そうでしたか……では、外にいる守護堕天使のたちの心も読めますか?」
「出来ますよ」
「じゃあ、お願いがあるんですけど、近くに守護堕天使たちがいないか、確かめてくれますか?」
「はう!」 
 女の子は列から離れて、目を閉じた。
 耳元のあほ毛がぴくぴくと反応していて、集中していることがわかる。
 数分後、女の子は目を開けて、扉の方向へと指差した。
「あの方向に、たくさんの嫌な感じの人たちがいます」
「そうですか、ありがとう。では、ここのシェルターから反対方向へと抜けて、おびき出せば良いわけですわ。あっ、みなさん、もう大丈夫ですわ」
 チカは近くの壁に背を預けながら立ち上がった。
 完全回復とは行かないまでも、なんとか戦闘は可能だった。
 とはいえ、相変わらず装備は少なかったので、不利な状況は変わらなかったが。
「みなさん、ありがとうございますわ。必ず、めがみ様はみなさんのことを見捨てませんから、がんばってくださいですわ。では…」
「はう! ま、待ってください」
 歩き出したチカを、女の子は制した。
「どうかしましたか?」
「はう、えっと、その、わ、私も、連れて行ってください」
「はやや?」
 チカはあまりにも突然な申し出に目が丸くなったが、女の子の真剣な眼差しにすぐに正気に戻った。
 シェルターにいる娘たちの視線が一斉に集まっていた。
「ダメですわ。たださえ危険な状況下にあるのに、私についてくるということは、より危険度が増して、命を落とすことになりかねないんですよ?」
「それは、ここに居たって同じです。テレパシーで読みながら行けば、危険な場所から遠ざかることは出来ます。それに、友達とはぐれてしまったんです。だから、だから…」
「……いいんですか?」
「はう!」
 何を言っても説得は受け付けないのと、これ以上時間を経過させるのは惜しいと考えたチカは、女の子を連れて行くことに決めた。 
 周りは動揺していたが、意見をする娘はいなかった。
 意見をしたところで、状況は悪化していくばかりだということは、幼い娘たちにもわかっていたことだからだ。
「お名前、なんていうんですか?」
「ラナです。白鳥のラナです」
「ではラナちゃん。行きますわよ」
「はう!」
 チカはラナの手を引っ張って、シェルターのもう1つの出口に向かった。

てんゆび2章8・3
K'SARS / 2006-10-10 03:34:00 No.994
 その道のりの所々に、負傷したり命の灯火が消えた娘たちが無数にいて、無事な娘を探すほうが難しい状況が広がっていた。
 つい先ほどまでめいどの世界で静かに過ごしていたラナにとっては、それはまさしく、空想世界の出来事と同義であったために、チカの袖を掴んで、頑なに目を瞑って歩いていた。
 それからしばらくして、出口が見えた。
「ラナちゃん。外に、誰かいますか?」
「はう。調べてみます」
 ラナは一歩前に出て、あほ毛をぴょこぴょこさせて、先ほどと同じようにテレパシーを使った。
 しばらくして、あたふたした表情をする。
「ど、どうしましょう。外に、4人ほどいます」
「他にはいない?」
「はう。今のところは」
「なら、手はありますわね」
 チカはラナに耳打ちして、ドアの前に立つ。
 それから、治療に借り出されている中級守護天使の2人を捕まえる。
「あ、あの…」
「ちょっとだけ、手を貸してくださいですわ。大丈夫ですわ。危険なことはありませんから」
「は、はあ…」
「ではラナちゃん。打ち合わせ通りに」
「はう!」
 そういうと、チカの身体は一瞬、煙に包まれて、次にはぬいぐるみになっていた。
 それをラナは手に持って、事前にチカに教えてもらった解除コードを入力する。
「ちょっ!」
「ちょっとだけ開けて、すぐに閉めますから。そのときに、手伝ってもらえればいいですから」
「ほ、本当に大丈夫なの?」
「信じてください」
 ラナの説得に納得したのか、娘たちは扉を開ける手動のハンドルの片方に移動する。
 互いに息を合わせて、タイミングを計る。
 そして、
「今ですわ!」
 娘たちはハンドルを回して、少しだけ開いたら、ラナはチカのぬいぐるみを外に放り投げる。
 同時に、チカはぬいぐるみを解除する。
 外にいた守護堕天使の4人組は、突然の出来事に対処が出来なかった。
 それが、そいつらの命取りとなる。
 チカはハンドガンを両手に持って、横に回転しながら撃っていく。
 守護堕天使たちは、次々と急所を打ち抜かれて、光になって消えていった。
 ことが済んだ場所には、静寂が訪れた。
「ふう。いいですわよ、ラナちゃん」
「はう」
「ありがとうですわ、2人とも。あとで必ず助けに来ますから、それまで、耐えてくださいですわ」
「「はい!」」
 娘たちは元気に返事をして、再び扉を閉ざした。
 チカは守護堕天使たちが持っていたライフル二丁とマガジンを手にして、持っていたハンドガンをラナに渡した。
「はう。私、鉄砲なんて撃てません」
「ただのお守り代わりですわ。まあ、移動しながらセーフティの解除ぐらいは教えますけど」
「それって、人を撃つってことですか?」
「撃たなければ、ただ黙って死ぬだけですわ。ラナちゃんの歳で、こういうことをするのは本当はいけないんでしょうけど、事態が事態ですから、持って損することはないですわ。あくまでも、自衛の為ですわ」
「はう〜」
「さて、行きますわよ」
 チカは愚図るラナを説得して、その場を移動した。
 ただひたすら、浩人に会いたい一心で。


<続>


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後書き♪

K'SARS「むふぅ。意外と難しいものだな」
カナト「こら〜! ラナを危険な目に合わせるんじゃない!」
ミナト「カナトくん、落ち着いて」
K'SARS「大丈夫だ。怪我はさせないようにするから。つうか、そんなことをしたら、アレの餌食なるから、嫌だ」
カナト「だったら、最初から出さないでよね」
ミナト「でも、これでラナちゃんは、これまでの作者さんの作品にて、全部に出たことになりますね」
K'SARS「当然。ラナっぺは、オリ天使の中では一番可愛いのだ。だから出す」
カナト「だからって、何もこんなところで出さなくてもいいでしょう?」
ミナト「何か、大切な役割でもあるんですか?」
K'SARS「ふふふ。それは、これからだね」
カナト「はあ〜。僕も出たいよ。そして、ラナを助けたい」
ミナト「可能性はなくもないですね」
K'SARS「考えておくよ。では、サラバ」

Re: てんゆび2章8・1
エマ / 2006-11-03 19:06:00 No.1002
一度レスつけたハズなんですが、失敗したのかついてませんでした。書き直し^^;

確か、前回はホログラムの敵と浩人さんが戦おうとしていたんでしたね。守護堕天使という新しい敵が出てきているわけですが、姿が守護天使と同じ(来ているめいど服のデザインが違う?)という事で守護天使に偽装できてしまうというのがやっかいですね。

女の子の集団に囲まれる、というのがなかなかに新鮮なシーンだと思うのですが、どうなんでしょう。私も囲まれてみたいけど、でもライフルやらナイフやら持ってるアブナイ子たちならちょっと考え直そうかなw
フィーネちゃんたちにあっという間にやられ、リーダーすら人間の浩人さんに負けちゃうあたり、全然強くない感じがするのですが、自害装置が付いているなんて言うのは、組織化という点ではだいぶ発達しているわけですね。呪詛悪魔のうちの偽装化に特化したのが守護堕天使ってことなんでしょうか。そもそも「守護堕天使」といっても何を守護しているのかわからんがw

チカぼー、いや、ウチのチロリンと同じように、これからはチカリンと呼ばせてもらおーw
チカリン、無敵な子だと思ってましたが、さすがに数か数だと怪我するんですね。なんだか萌え・・あわわ、燃える展開になってきましたが、シェルターの中では銃撃されて無くなった子たちが安置されてるとか、なんだかリアル展開になってきてるような・・・。は、そうか、これがKやんシリーズお得意の萌えリアル混合戦略か!w

ラナちゃんがシェルターの中に居るというのがまた意外でしたが、作者のキャラ同士が初対面の挨拶を交わすというのもまた面白いですね。こういう所もKやんSSの巧さというかなんというか。
ラナちゃん、心が読めるという設定については私知らなかったんですが、え? そんな設定あったんでしょうか?? おいら初耳ですw

次話以降はラナちゃん&チカリンのコンビ展開になりそうですね。ラナちゃんに怪我させるような事すると、熱烈なファンの方々からブーイング来ると思われるから、気をつけるんだぞーw
カナトくんも心配している事だしw 彼の登場はあるのだろうか・・・。

てんゆび2章9・1
K'SARS / 2006-11-21 03:49:00 No.1014
   天使とのゆびきり〜絶望と希望の闘い その弐〜


 俺たちは走っていた。
 いや、その表現は正しくないかもしれない。
 正確には、常に何かを蹴散らしながら急いでいた。
「もう、しつこいのは嫌われるわよ!」
 フィーネは、途中にいた守護堕天使から奪い取ったライフルとバズーカをぶっ放しながら突破口を開き、
「ストライククラッシャー!」
 アラドは、エンジェルツールによって変化させた大きなハサミ状の武器で何人、何体かを掴み、地面に叩きつけ、
「「ローリングブラスター!」」
 アズミとカズミは、手に出したバトンを分割させて両手一杯に広げて、2人してその場で回転し、光線にてやっつけていき、
「えぅ〜!」
「うりゃ!」
 サキミに襲い掛かろうとした守護堕天使を、俺は鋼糸で絡めて、そのままジャイアントスイングして、辺りの守護堕天使たちもろとも吹っ飛ばしていった。
 これがもう何十回と繰り返されていた。
 既にアズミ、カズミ、サキミ、そらの四人は息が上がっており、今にも倒れそうな感じである。
「まずいわね。このままじゃチカぼーと出会う前に、こっちがやられちゃうわね」
「しょうがないですよ。アズミとカズミは、長時間の戦闘っていうのはまだ未経験ですし、サキミさんとそらさんは、普通の守護天使ですから」
「ヒロっちは、大丈夫そうね」
「お前たちのおかげで、大分楽させてもらっているし、男だしな。今のお前たちよりは、体力はあるはずだ」
 ほとんど戦っているのはアラドとフィーネなので、俺はそれからこぼれた、もしくは、サキミとそらに向かってきている守護堕天使たちを相手にしているのに過ぎない。
 だから、消耗率では2人の方が大きいのだ。
「え、えぅ〜」
「だ、大丈夫、サキミ?」
「目が、回りましゅ〜」
「き、きついよー」
「足が、動きません」
 近くに隠れられそうな場所に移動したとたん、サキミたちはその場に座り込んでしまい、口から弱音が出た。
 仕方ないといえば仕方ない、か。
 いくら優れているとはいえ(サキミは微妙だが)、まだ幼い少女たちだ。本当なら、こういう場面とはかけ離れていなければいけない存在たちだというのに。
 本当なら、誰かが囮になって引き付けて逃がせれば一番いいのだが、今のアラドとフィーネではきつすぎる。
 だから、みんなで突破するしかないんだ。
「さて、どうしようかな。周りを見る限り、守護堕天使がうじゃうじゃいるから、うかつに動けないし」
「本部の方はどうなんですか?」
「さっき問い合わせたよ。案の定、フォースバルキリー隊は全部出動。沙子様は、メガミ様と一緒に全体の把握と指示をしているわ。ただ、予想以上に混乱していて、防戦一方って感じね。だから、援軍は期待は出来ない。それに、例え援軍が来たとしても、あれじゃあね…」
 外に目を向けると、無数とも思える数の守護堕天使たちの足元にいる、巻き添えを食らった守護天使たちの抜け殻があった。
 中には、まだ子供ものあった。
 それらは全部、逃げ遅れてしまったがために、無駄に命を落とした娘たちだ。
「ヘタな援軍はああなる運命をたどるから、どうしようもないわね」
「そうですね。それに、他の部隊に援軍を要請しても、きっとみなさん、手が一杯でここまで来れないと思いますから」
「なあ、フィーネ。さっきから疑問に思っていることがあるんだが」
「何、ヒロっち」
「俺の気のせいだったらいいが、こういうときって普通避難命令とかが出るだろう? なのにさっぱり出ていないような気がするぞ」
 フィーネとアラドは揃って顔を見合わせた。
 沙子が守護堕天使たちの襲撃を知ってからもうどのぐらい経ったかわからないし、俺たちも動きっぱなしだったから定かじゃないが、さっきから避難命令は出ていなかった。
 ゲートとやらが突破されるのであれば、もっと早期に出てもいいのにも関わらず。
 なのにそれが出ていないのは、何かあったことは明白だ。
「もう占領されてしまったんじゃ」
「いえ、ゲートから中央管理センターまではかなり距離があるし、何よりも、ゲートは常に監視されている状態だから、いくらなんでも占領される前にコンディションレッドは出るはずよ。ということは」
「裏切り者が出たか、それとも、事前に占領されていたかのどちらかだな」
「えぅ〜。それって、最悪の事態じゃないですかぁ〜」
「最悪がめいどの世界を一周してしまったって感じだな」
「えぅ〜!」
 冗談で言ったつもりだったが、サキミはマジで反応してしまって、強く抱きつかれてしまった。
 アズミとカズミにも不安を煽ったようで、同じように抱きつかれてしまう。
「そうなると、余計に急がないと。でも、今の装備じゃ、どうしようもないからな」
「フィーネさんのお家までどのぐらいなんですか?」
「大体5分ぐらい。アラドは?」
「アズミとカズミの部屋に置いてきたから、10分ってところですか」
「厳しいわね」
 2人の表情と現状からして、本当に厳しい状況だということは嫌でもわかる。
 外に目を向けると、守護堕天使の他に、モンスターとか、昨日見たような呪詛悪魔とかいうのが増えていた。
 ますます状況は悪化一途をたどっていた。
 ここにいるみんなの雰囲気に、諦めの色がつき始めていた。
 俺は深い溜息を1つついて、フィーネに提案した。
「なあ、フィーネ。エンジェルツールって、誰が使っても同じような効果が得られるのか?」
「大体が汎用だから、問題ないけど…。ヒロっち、まさか」
「ああ。俺が囮になって引き付ける。その間に、フィーネとアラドは、サキミたちを連れてその装備とやらを取りに戻れ」
「だ、ダメよ! ヒロっちは、観鈴様の大切な忘れ形見であり、サキミちゃん、チカぼー、アズミ、カズミのご主人様なんだよ。何かあったら…」
「えぅ! そうですよぉ」
「でも、それしかないだろう? 今、この場で戦力になるのは俺だけなんだから」
 戦力のメインであるフィーネとアラドが抜けるとなると、俺しか戦えるものがいないし、アズミとカズミにそんな危ないことはさせられないし、サキミとそらは論外。
 それに、人間の俺が挑むことによって、向こうは油断するに違いない。
「大丈夫だ。ただ引き付けて逃げるだけだから。エンジェルツールは、万が一の保険だよ」
「それでもダメだよー」
「そ、そうですよ。ご主人様」
「えぅ〜〜」
「浩人さん。こういうときは、あなたが逃げるべきだよ。私守護天使にとって、ご主人様は何よりもかけがえない存在なんだから。危険な目に会う浩人さんを、黙って見ているわけにもいかないよ」
「お前らな、人の話は聞けよ。戦うんじゃなくて、囮になって逃げるだけだっつうの。それに、お前たちを行かせると、俺の精神衛生上良くないし、夢見が悪くなる」
 今、この場にいる俺の天使たちは、かつての思い出の女の子たちだ。
 しかも、サキミ以外の女の子たちは、みんな死んでいる。
 だから、もしもこの場で死なせるようなことがあったら、俺はもう一回、思い出の女の子を殺すことになる。
 それだけは絶対に防がないといけないのだ。
「…ヒロっち。約束してね。絶対に、死なないって」
「フィーネさん!」
「ヒロっちをこんな風に危ない目に遭わせるのは、私たちが無力だからよ! だから、それを払拭するには、ヒロっちの要望通りに、早く装備を整えて戻ってくることなのよ」
「ああ。そうだな」
「アズミ、カズミ、サキミちゃん。ヒロっちに、あなたたちのエンジェルツールを」
「「「……はい」」」
 3人からエンジェルツールを受け取った俺は、素早く武器などのに変換して装備をした。
 サキミからもらったエンジェルツールは、全てを断つ剣、斬艦刀。
 カズミからもらったエンジェルツールは、宙を浮く靴、天空靴。
 アズミからもらったエンジェルツールは、実弾を弾く服、弾断服。
 俺が変化させたエンジェルツールは、敵の動きを止める糸、鋼糸。
 地上でもしたこともないような、現段階においての最強の装備が完成した。

てんゆび2章9・2
K'SARS / 2006-11-21 03:50:00 No.1015
「えぅ〜。ご主人様、すごいですぅ」
「かっこいいよー」
「すごいです」
「ヒロっち。私がバズーカを全弾撃つから、そのときに出て」
「わかった」
「気をつけて」
「ああ」
 俺はフィーネを軽く抱きしめてから、気を引き締める。
 こんなに緊張するのは、多分、生涯で初めてで、ましてや命が掛かっていることもあってか、心臓がバクバクしている。
 でも、嫌ではない。
 むしろ、俺の中で眠っている血が騒ぎ出したというところだろう。
「よし、いい……」
「待ってくださいですぅ!」
 準備が出来たところをフィーネに言おうとしたときに、サキミが今までにない大きな声で遮った。
 目には大量の涙があった。
「どうした、サキミ? 今更止めようとしても無駄だぞ」
「えぅ。えぅ……。ゆ、指きり、してくださいですぅ」
「指きりって、あの指きりか?」
「はいですぅ」
「指きりねぇ」
 俺は斬艦刀を置いてサキミに近づいて、そっと頭を撫でてやった。
 今にも泣きそうだった顔が、徐々に緩んできた。
「えぅ〜」
「そんなことしなくても、ちゃんと帰ってくるよ」
「でもでもぉ〜。不安なんですぅ。万が一、ご主人様に何かあったらと思うとぉ〜」
「ねえ、指きりって、なにー?」
「お指、切っちゃうんですか?」
「アズミとカズミは知らないのか。じゃあ、見本見せてあげる。サキミ、小指出して」
「はいですぅ!」
 俺とサキミは、互いに小指を絡めた。
 これで三回目か、サキミと指きりするのは。
 今から大体半年前ぐらいのことなのに、随分と懐かしく感じるな。
「俺は、必ずサキミたちの所に、五体満足で帰ることを誓います。せーの」
「「ゆ〜びき〜りげ〜んまん。嘘ついたらハリセンボンの〜ます。ゆびきった!」」
 互いに小指を離して、指きりは成立した。
 今度はちゃんと離してくれたようで、サキミは指切りをした右手を左手で包んで、胸元へと引き寄せていた。
 きっと、願いが叶うように祈ってくれているんだろう。
「ねえ、ご主人様。今のって、何か意味あるのー?」
「互いに約束を守れるようにっていう、願掛けみたいなものかな。口約束よりも確実だからな」
「うう、すごく、やりたい気分になりました」
「じゃあ、アズミとカズミもやるか?」
「「はい!」」
 俺は両手の小指を出して、2人の小指と絡める。
 そういえば、あの子たちとは指切りはしなかったな。
 あのときは、毎日が当たり前のように過ぎていて、明日が来ることは当然のように思えていたっけ。
 唐突に、しかも、自分の親たちの勝手な都合で殺されるなんて、考えもしなかっただろうな。
 だから今度は、俺が守ってやらないといけないんだ。
 大切な、俺の天使として。
「2人とも、さっきサキミと俺が言ったことを真似してな」
「「は〜い」」
「せーの」
「「「ゆ〜びき〜りげ〜んまん。嘘ついたらハリセンボンの〜ます。ゆびきった!」」」
 俺と小指を離したアズミとカズミは、サキミと同じように大切なものを扱うように、もう1つの手で包み込むように胸に寄せて目を閉じていた。
「なんか、不思議な感じー」
「そうだね。なんか、ご主人様の暖かさが伝わってくるようです」
「えぅ〜。そうなんですぅ〜」
「もういい? 早くしないと、出るに出れなくなるから」
「フィーネはいいのか?」
「さっきヒロっちに抱きしめてもらったから、それで十分だよ」
「そっか」
「じゃあ、行くわよ」
 俺とフィーネは互いに目配せをして、出るタイミングを計る。
 そして、
「全弾発射!」
 フィーネは持っている武器を担いで出て、守護堕天使たちへと無差別に攻撃を開始した。
 いきなりの奇襲に対応できなかった連中は、バズーカなりライフルなりの弾に当たって、次々と倒れていった。
「今だ、行け!」
「わかったよ」
「えぅ〜。ご主人様、無事で居てくださいですぅ〜」
「浩人さん。がんばって」
「ご主人様。あんな奴ら、ぶっとばしちゃえ〜」
「ご主人様。必ず、帰ってきてくださいね」
「まかせておけ!」
 アラドを先頭に、サキミたちは走り出す。
 フィーネも撃ちつくしたあとに、「また後で」と呟いて走った。
 さて、行くか。
「うおおおおおおおおお!」
 俺は斬艦刀を構えて、無数と思えるであろう守護堕天使の群れに突っ込んだ。
 同時に心の中で謝る。
 サキミたちと約束した、逃げるだけという約束は、きっと守れないからと。

てんゆび2章9・3
K'SARS / 2006-11-21 03:52:00 No.1016
 浩人が守護堕天使たちと戦闘を開始する少しあと、チカとラナは隠れながら、チカの住んでいるマンションへと向かっていた。
 何をするにも、装備が整っていないとダメだし、ラナを安全な場所に避難させる意味でもそこが一番安全だという、チカの考えだ。
「はう。あっちです」
「わかりましたわ」
 ラナに導かれて移動しては隠れる。
 少しずつでも目的地へと近づいていく。
 ただ、チカには心配な部分があった。
 それは、マンション周辺には隠れる場所は何もないというところだ。
 しかも、周辺の建物からも離れているために、守護堕天使たちがいたら強行突破をしないといけない。
 奪ったライフルの弾数とラナの体力を考えると、かなり厳しい状況。
「はう! チカさん、後ろ」
「はや?」
 突然現れた守護堕天使に反応が遅れたチカを、ラナは身を挺してかばった。
「はう〜!」
「ラナちゃん!」
 奇襲した守護堕天使が撃ったライフルが、ラナの幼い足と肩に命中する。
 チカはすかさずラナの持っていたハンドガンを取り、頭に直撃させた。
 一瞬の静寂のあと、ラナの呻きがチカの耳に入ってきた。
「い、痛い、よ〜」
「今、応急処置を施しますから、少しの間、我慢してくださいですわ」
 チカは自分のめいど服の袖を破いて、ラナの被弾した場所にきつく締め付ける。
「本当ならば、治癒を施してあげたいのですが、私は、そういう類はどうにも苦手なので」
「はう〜」
「にしても、参りましたわ」
 息絶えた守護堕天使の持っていたライフルに入っていたマガジンを取り出してから、チカは深い溜息をつく。
 ただでさえ最悪の状況に拍車が掛かってしまった。
 しかも、制限時間つき。
 マンションまではまだ距離があるし、近くにシェルターもない。
 チカ1人ならまだなんとかなる可能性もあるが、ラナを置いていくなんてことも出来ない。
「まさに、絶体絶命、ですわね」
「ご、ごめんなさい」
「はやや。ラナちゃんは何も謝ることはないですわ。逆に、私が謝らなければいけないですわ」
 チカはラナの髪を撫でて、少しでも安心させようとする。
 気休め程度にしかならないが、何もしないよりは、される方もされた方もマシ。
「大丈夫ですわ。すぐに、手当てが出来る場所に連れてってあげますわ」
「は、はう…」
「……やるしか、ないですわね」
 ラナが助かる方法。
 それは、チカが捨て身の特攻をして、マンション周辺の敵を一掃すること。
 そうすれば、しばらくの間は守護堕天使たちはいなくなるので、ラナは動ける手と足を使ってたどり着くことが出来る。
 本当はそんなことはしたくないし、やりたくもない。
 浩人と再び会うまでは、浩人の腕で命を絶つまではそんな選択肢は選びたくない。
 だが、ここに小さい身体で苦しむ子がいる。
 この子を助けなければ、一生後悔することになるから。
「よし…」
「だ、ダメですよー」
 決意を固めたところを、ラナに止められた。
「伝わってしまいましたか?」
「はう。チカお姉さんが撫でてくれているから、何もしてくれないよりははっきりと伝わってくるんです。だから、全部、わかっちゃいました」
「そうですか……でも、それしか方法がないんですわ。だから…」
「私としては、そんなチカリンの考えていることなんて、却下するけどね。というか、私はそんな考え方をすることを教えたつもりはないんだけどね」
「はや?」
 チカが後ろを向くと、そこには何事もなかったかのように、沙子が立っていた。
 いや、よく見ると、後ろの方に多数の守護堕天使たちが倒れていた。
「さ、沙子様?」
「ふう。間に合ってよかったよ。今、チカリンに死なれたら、ヒロヒロに申し訳が立たなかったよ」
「あの〜。ヒロヒロって、もしかして、浩人様のことですか?」
「うん。今、フィーネちゃんたちと一緒に行動しているわよ。だから、せめてヒロヒロの腕に抱かれて死ぬまでは、安易に死ぬなんてことを許さないわよ」
「はや〜。ごめんなさいですわ」
「まあ、いいわ。そっちの娘を連れて、早く安全な場所に行くわよ。まだ動けるわよね?」
「はいですわ」
「よし、それじゃ……はぁ〜」
 気配を察した沙子は、またかと大きな溜息をついた。
 それからほどなくして、多数の守護堕天使と呪詛悪魔たちがやってきた。
「ったく、倒しても倒しても、一体どこから現れることやら」
「はう〜」
「大丈夫ですわ。沙子様はお強いんですから」
「まあ、チカリンの言うとおり、心配はしなくてもいいわよ。すぐにやっつけてしまうんだから」
「私、アレが見たいですわ」
「アレ、疲れるから嫌なんだけどな〜。まあ、いいか」
 敵が周りを囲んでいるのにも関わらず、ほんわかな雰囲気になっていた沙子は、一歩前に出て、ポケットから球状のものを取り出した。
「よく見ておいてよ。これ見せるの、レアなんだからね」
「は〜いですわ」
「はう?」
 沙子は球状を天に向けて掲げた。
 そして、始まる。
 一方的な、しかし見るものにとっては華麗な、沙子の舞が。


<続>


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 後書き♪

カナト「ちょっと、作者さん! これってどういう………って、あれ?」
ミナト「私が来たときには、こうなっていましたよ」
K'SARS「(返事がない。お花畑の見える場所へ逝っているようだ)」
カナト「だ、誰がこんなことを? というか、ラナにあんなことをしたから、あの人がかな?」
ミナト「そうですね。これがありましたから」
カナト「うっ! そ、それは……」
ミナト「あの娘には、もう私が教えることはないですね。よくぞ、ここまで」
カナト「あの〜。色々な意味で、危ないですよね、それ」
ミナト「おいしいですよ、これ」
カナト「………まあ、それはさておき、どうしましょうか、これ」
ミナト「次回作には復活していますでしょうから、放置しても構いませんよ」
カナト「でも、次もまた、ラナにひどいことをしたら……」
ミナト「確実に、後書きメンバーが変わっているかと」
カナト「だってさ、作者さん。ラナファンのためにも、今後は謹んでね」
K'SARS「(ふっ。おいらがそんなことを約束するとでも? ともかく、次もよろしくお願いします)」
カナト「でははん!」

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