有村飛雲さんの「夏座敷」
名もなき人@管理者 / 2024-08-01 14:19:57 No.167
 浜風句会の人気者であった有村飛雲さんが78歳でお亡くなりになられてから間もなく4年になる。
 飛雲さんは2020年2月から入退院を繰り返し、その年の10月30日に逝去されたのだが、体調が良い時には俳句を作っていたらしく、入院後5月以外は9月まで毎月浜風句会に出句されていた。
 飛雲さんの(2020年)8月の句に「仰臥して空への逃避の夏座敷」という句がある。
これについて雄策さんが「仰臥して、夏座敷、空ときたら青い空とか雲とか読むのが普通だが、逃避と来たのが良い」と解説したのを今でも覚えている。
 当時、飛雲さんが長期に亙る闘病生活で苦悶しでいたなど知らなかったので、この句にそれほど惹かれるものはなかった。しかし、後に彼の闘病記を読んだら、8月は再びの入院前の一時を自宅で過ごしている時であることを知り、この句を詠んだ飛雲さんの心境に胸を打たれた。
 雄策さんが「逃避」という表現を評価したように、病院から久しぶりに自宅に帰って夏座敷に大の字に寝て空を見た時、その瞬間は、彼にとって正に「逃避」だったのだ。
 今では、涙なしにはこの句は読めない。

 あの飛雲さんの笑顔が恋しい2024年の夏に。
                          田 友作

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