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Dr.イリノア診察室【アズマ編】「我知らぬ巫女」(3)
エマ / 2014-05-24 19:46:00
「カムド……!」

「……何をそんなにビビっている? 俺が何かするとでも思ったか?」

「い、いや……その……い、いつからそこに?」

「ちょうど、『いいかい。君は、利用されているんだ!』のあたりからだ」

イリノアは、思わずため息を付いた。

「人が悪いな。許可もとらずに入ってくるなんて」

「妹がどこぞのよく知らん医者に調べられると聞いたからな。無視するわけにはいかん」

カムドが、ふいに近づいてきた。

おもわず、後ずさりする。

「どうした。俺が恐いか?」

「あ、い、いや……」

ちらりと、カムドの腰に目をやる。悪夢で自分の命を絶った殲魂は、無かった。

「心配するな。武器は置いてきた。少なくとも天界で荒事をするつもりはない」

「そ、そうか……」

「もっとも、俺を裏切る人間がいれば、話は別だがな」

さらに、カムドが距離を詰めてくる。

あとずさるが、背中が壁に阻まれて、すぐに押し寄られてしまった。悪夢と同じ構図で、嫌な気分だ。

「一つ質問だが。お前はフェンリルの顧問精神科医だそうだが、お前に独立性は……場合によっては、フェンリルの要求をはねのける権限はあるんだろうな?」

「ああ、もちろんだ。たしかに私は、フェンリルから仕事を請け負っているが。無茶だと思った仕事は拒否できる権利がある。ロイ司令とは、そういう契約をしたからね。」

「お前の作る封冠だが、天神会やフェンリルの要請で、妙なまがい物の機能を仕込むことはないだろうな?」

「そんなことはしない! それは……私の精神科医・封冠技師としてプライドにかけて誓う」

「そうか……」

「信じてくれるのかい?」

「俺の目は節穴じゃない。お前が嘘を付いているかどうかは、まず目を見れば分かる」

そういいつつ、カムドが、懐に手を入れるので、イリノアは背筋が寒くなった。が、取り出したのは武器ではなく、小さなメモリーチップだった。

「このデータをあんたに預けたい」

「これは……何かな?」

「俺と天神会が調べた、アズマの全データだ」

「それを……どうして僕に……」

「天神会の医者どもより、あんたの方が信用できそうだからだ」

 カムドの手から、恐る恐るメモリーチップを受け取る。10円玉ほどの大きさの、小さなチップだった。無くさないよう、イリノアは手持ちの透明な袋に入れ、胸ポケットに慎重にしまいこんだ。

「アズマの精神的特徴、問題点、今までにわかっている全てを書き記している。アズマの診察に役立ててくれ」

「あ、ああ……それは、ありがたいが……」

「さて、場所を変えようか」

「場所って、ここ以外、どこに?」

「どこでもいい。役所の世界から離れた場所だ」

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