Dr.イリノア診察室・燕のマーク編
エマ / 2018-07-07 21:40:00 No.2419
ここはDr.イリノア診察室。天界屈指の名精神科医である夢魔イリノアが、その経験を駆使して相談者の悩みを解決していく物語……え、ちがうの?

……進行が乱れ、失礼いたしました。
どうやら、そうは問屋が卸さないそうです。

今回の相談者は、なかなかのお相手だそうで……。

イリノア「さて、今回の相談者さんは……と」

???「失礼しまーす」

と、至極気楽な雰囲気の声とともに、入室してきたのは……。

若い男性「やぁ」

おお、これはみなさま知る人ぞ知る、フェンリルの早業チーム「ソニック」の一角、燕のマークさんではありませんか。

イリノア「ああ、今回の相談者は、君なんだね」
マーク「そうだよ。よろしくね!」
イリノア「(なんか……何も悩み事とかなさそうな気が、つい、してしまうのだが……)この診察室に来たということは、君も何かで困ったり、悩んでいたりすることがあるのかな?」
マーク「えっとねー」
イリノア「うん」
マーク「まぁ、あんまりないんだけど」
イリノア「(やっぱり)ないんかい!」
マーク「いやぁ、まぁ最近重たい任務もあんまないし、少し暇してたから。久しぶりに先生と話でもしようかなって。エマステ的に出番も増やしたいし」
イリノア「いや、あのね……もちろん、『エマステ的に自分の出番を増やしたい』というのは、エマステキャラたるもの、どうしても持ってしまう欲求であって、それは私もわかるのだよ。とはいうものの……こちらも仕事で診察をしているのだし。何も悩みがないけど、診てくれっていうのは、ちょっと……」

っていうか、メタ発言やめなさいよ。あんたら……。

マーク「あ、そうだね。悩みといえば、まぁないわけでもないよ」
イリノア「(むっ? エマステ的に出番を増やしたいからと、無理やり悩みを作ろうとしているな?)」

イリノア先生の疑惑はつのります。だからメタ発言やめろw

マーク「実はさー。最近僕、フェンリルに内緒で、ちょっと副業をしているんだ」
イリノア「副業?」
マーク「うん。最初はちょっとした手助けだったんだけど、楽しくなっちゃって、つい本格的に、ね」
イリノア「どんな仕事なんだい?」
マーク「えっとね。名づけ屋さんだよ」
イリノア「名づけ・・・って、名前をつけてあげる、あの名づけ、かい?」
マーク「うん。クライアントさんの悩みを聞いて、僕が適当に名前つけてあげるの」
イリノア「適当!?
マーク「あ、いや適当違った」
イリノア「え!?」
マーク「真面目に名前つけてあげるの」
イリノア「・・・そうなんだね」
マーク「今のところはBtoBだね。つまり、法人向け事業。新設会社の名前とか、マスコットキャラクターの人気が振るわないから、リニューアルで新しい名前つけてくれ、とか。企業さんが相手だから結構実入りはいいよ」
イリノア「実入りがいい・・・名前づけだけで? 差し支えない範囲でいいんだけど、だいたい?」
マーク「うん、ざっと○○から○○くらいの範囲かな」
イリノア(!!! それ僕の診察報酬単価の○○倍じゃないか!)
マーク「もうちょっと値段上げてもいいかなぁ・・・って最近、ね」
イリノア(いや、僕の単価だって同業では高い方なんだけど・・・名前を考えるだけで、一体どれだけ取るつもりだ・・・汗)
マーク「個人向けサービスも始めたいんだけど、ほら、ペットの名前とか、生まれてくる赤ちゃんの名前とか。個人的にはそっちの方がずっとやりがいがあるんだけど、正直単価も法人向けに劣るし、体制を考えないといけないから、そっちはまだ当分先かなって」
イリノア「そうか・・・それは、まだ幸いだね。僕もその顧客層は慎重に考えた方がいいと思う
マーク「だって、ヒアリングにそんな時間かけてたら利益率下がっちゃう」
イリノア「いや・・・そういう問題ではなく・・・」
マーク「おかげさまで、今のBtoB営業利益率はほぼ100%だよ」
イリノア「(ありえない数字を目の当たりにしてしまった・・・)」
マーク「で、エマステ銀行ってところに売上金を預けるようにしたんだけど、出費することあまりないのに入金だけ続くから、もうお金が膨れちゃって膨れちゃって」
イリノア「いやしかし・・・そんなに収入があっては・・・税金もすごいだろう?」
マーク「うん?」
イリノア「いや、ほら、所得税だよ。あと法人税とかも」
マーク「・・・なにそれ?」
イリノア「いや、税金!!
マーク「ああ、あれか」
イリノア「あれかって・・・」
マーク「チップの知り合いに良い人がいてさぁ。その人も海外にすごいネットワークがあるらしくて「他所さんではありえないくらい節税してあげるから、全部俺に任せてくれ」って言うから、全部お任せしてるんだよね。いやぁ、おかげさまでほとんど税金はかからないよ。たまに海外のよくわからない孤島のエマニエルなんとか会計事務所ってところから報告書が来るけど・・・まぁ面倒くさいからほとんど中身とか読んでなくて」
イリノア「それタッ○スヘイブンやないかーい!
マーク「お金の使い道、どうしたらいいかなー。ほら、僕あんまりお金のかかる趣味ってないじゃない? ゲームソフト買うくらいしかないから」
イリノア「(少し前のニュースでパ○マ文書がどうとかあったが・・・まさかあれに載ってたりしてないだろうな・・・汗)」

その後も、名づけコンサルタント・マーク氏の天然だけど驚愕の事業内容が続き、イリノア医師はマーク氏のビジネスセンスと発想力の自由さに舌を巻いたという。

エマ / 2018-07-07 21:41:00 No.2420
気がつくと、すでに日は沈み始めていた。
作者が面倒くさくなって無理やり夕方にしたわけではない。

マーク「いやーありがとう。色々話せて楽しかったよ。これがイリノア先生の診察かぁ・・・雑談をしているようでいてちゃんと問診するところはさりげなく聞いて診察する。素晴らしいね。」
イリノア「いや、全く礼には及ばないよ。むしろ、どちらかというと僕の方が診察を受けていたような気すらするよ」
マーク「そうだ! お礼に、今回だけ無料で先生の持ち物に何か名前をつけてあげるよ!」
イリノア「え、いいのかい?」
マーク「うん。みんなには内緒だよ♪」
イリノア「じゃあ、試しに例えば・・・私のこれ(聴診器)に名前をつけてもらってもいいかな」
マーク「いいよ。○○○ってのはどう?」
イリノア「はやっ!!!
マーク「うん?」
イリノア「いや君・・・今、全く考えてなかったんじゃないだろうか!? 脊髄反射のレベルですっと出てきたよ。名前が!」
マーク「いつもこんな感じだけど?」
イリノア「今、名付け回答に正直1秒かかってないよね。利益率100%の意味がようやく解ったよ!! それに、肝心の今考えてくれた名前だけど。その「○○○(読者の皆様のご想像にお任せします)」ってのは、正直どうなのかな。この製品がどう言う経緯で、製作者がどういう思いを込めて作ってきたかとか、もうそういうのガン無視な名前のような気がするのだが」
マーク「うん。顧客の皆さんも、大抵最初の反応は「その発想はなかった」だよ。でも、だから新しい名前をつけてあげた会社は市場で成功するんだよ」
イリノア「そ、そうなのか・・・」
マーク「うん。みんな短期的な売上や利益ばかり求めるから、市場における本質を忘れてしまって、いつのまにかそういう大事なものから離れていっちゃうんだよね・・・」
イリノア「本質・・・とは・・・」
マーク「いいかい、この2018年の世界市場において、ネーミング効果というものは・・・」
イリノア「本質・・・」
マーク「キャッチーなネームをつけてあげることで、エグゼクティヴ(経営)層はオフコース(もちろんのこと)、ストックホルダー(株主)、ベンチャーキャピタルといった各種ステークホルダー(利害関係者)が普段アウェアして(気づいて)いなかった自社プロダクトのコンシューマアプローチのためのオポテューニティ・・・」
イリノア「ルー〇柴・・・」

診察を終え、マークを(半ば無理やりに)帰らせたイリノアは、椅子に身を預けて天井を仰いだ。
そういえば、フェンリルへの入隊志望者に立ちはだかる、かの超難関面接試験「恐怖のロイ面接」。
彼はあの場でも、常人の及ばぬ機転をことあるごとに利かせ、ロイ司令からかなりの高評価を叩き出したらしい。

戦いにおいても、呪詛悪魔たちを時によってはその得意の話術で懐柔し、戦わずして場を収めてしまうこともあると聞く。
相手を傷つけて魔封瓶でむりやり捕まえるより、
「ずっと人道的で、俺たちの恨みつらみもちゃんと聞いてくれて、胸のつかえが取れました。マークさんにはマジで感謝してます!」
と呪詛悪魔たちからも大変好評・・・彼らは自ら魔封瓶の中に入っていくらしい。ほんとかよ。いったい何者ですか貴方は。

イリノア「それで、さらに副業も儲かってウハウハで仕方ないって、一体なんなんだろう・・・。僕はいつもこんなに気苦労しながら働いているというのに・・・」

マークが名付けてくれた○○○、もとい、聴診器をまじまじと見つめながら、イリノアはぼそっとつぶやいた。

イリノア「なぁ・・・僕も転職してみようかな。どうしたらいいと思う?」

イリノア「教えてくれ・・・サラ」

「サバイヴ・アワー・ブラッド第0話」において、エマステ史上屈指のキメシーン(※作者の見解です)として輝いた、この想い人への問いかけのセリフも・・・このSSではやはりどこか滑稽に映ってしまうのであった。


つづく・・・かも♪

ダイダロス / 2018-07-12 21:14:00 No.2421
ども、かなり久々なダイダロスです。

イリノアをSSで使っていただきましてありがとうございます。


しかしマーク氏、相手を口車に乗せるのが上手いというか、はたまた物事の本質を見極める感覚が鋭いというべきか……
これでほとんど素で行っているというのが恐ろしいですね(笑)

おまけに協力者にも恵まれているようですし(苦笑)
多分、真っ直ぐ過ぎて危なっかしいマーク氏を放っておけないチップ氏が裏で色々と手を尽くしているのでしょうね。

あと、イリノアよ、お前はツッコミキャラじゃないんだから(本来は相槌を入れながら相手の話を促すタイプ)律義に総ツッコミを入れるという慣れない事はしなくてもいいんだぞ(親心)

エマ / 2018-07-17 10:48:00 No.2422
>ダイダロスさん

コメントありがとうございます♪

マークさんの手腕、少しやりすぎてしまったかもしれません。
考えようによってはすごい無責任すぎるビジネスなわけですが、そこはギャグSSの雰囲気に包んで軽く流していただければと思います。

チップさんが裏でぶつくさ言いながら、ひそかにマークさんのビジネスで散らかった物事の後始末をつけてあげてたりするシチュエーションは確かにあるのかも・・・? それはそれで良いチーム(?)だな、と思います。

リン「生みの親でも無いのに勝手に言っているぞこいつ・・・」

あ、えーと(汗)

リン「お二人のマスターでいらっしゃるみさき様が読まれたら、どう思われるでしょうねー?(チラ」

大変、申し訳・・・orz



>あと、イリノアよ、お前はツッコミキャラじゃないんだから

それにつきましても、大変申し訳・・・orz

リン(この人、いつも謝ってばっかだなぁ・・・汗)

>本来は相槌を入れながら相手の話を促すタイプ

確かに、それがイリノアさんのイメージにしっくりきますね。

でもでも、舞台はギャグSSで、しかもエマステ的に常識人キャラは意外と少ないのではという思いが個人的にありまして、イリノアさんに少々ご無理をお願いした次第です^^;

リン「『たおやかな鋼』のギャグパロディでも、ご無理をお願いしてなかったか?」

え、えっと・・・

リン「みさき様に無断でメティファ様のキャラも勝手にいじくりまわしたり、しなかったか?」

し、しました・・・。

リン「どう、総括されるおつもりでしょうか」

大変、大変、申し訳ございません・・・or2<=====(スライディング土下座)

リン(謝罪の神様っぽくなってきた・・・^^;)

ライオンのみさき / 2018-11-03 23:42:00 No.2423
 こんにちは。ライオンのみさきです。
 お話はもうだいぶ以前に拝見していたのですけど、感想をおつけするのはこんなに遅れてしまいました。
 ……気がついたら、もう4ヶ月も経ってしまっていますものね。まことに、申し訳ありません ・ ・ ・ ・ (汗)。

 それにしましても、自分の考えたキャラクターの人を他の方にお話で使っていただくのは、やはりうれしく、楽しいものですね。そうした気持ちを久しぶりに思い出しました。エマさま、本当にありがとうございます。とても幸せな気分を味わわせていただきました。

 さて、それで肝心のお話の内容についてなのですが、最初にわたしの考えた設定には特になかったはずなのに、いつの間にかマークさんはネーミングセンスが独特だということになって……しかも、いつしかそれがマークさんのいちばんの特徴のようになっていて……。
 でも、それはそれで、キャラが立って、皆さまの印象にも残って、楽しんでもいただけましたし、わたし自身もその後はその線に沿ってマークさんのお話をいろいろ考えたりしたのですが……。
 ですけれど、それはあくまでマークさんのネーミングセンスは“独特”なのだということで――言葉を選んでいます(笑)――決して、他の方から感心されたり、まして、それで、大変なお金もうけができるほどの需要があるようなものとは思えないのですが……しかしまあ、もしかしましたら、今の世の中、わたしが思うよりこうしたものが受けたりするのかもしれないですね。ですが、たとえば聴診器などに、何か新しい名前が必要なものなのかどうか……まったく、何て名づけたのでしょう。
 それから、守護天使の皆さんでも特に地上で活動なさるときですとかお金は必要でしょうし、そうでなくても、普段の生活でもお金を使っているでしょうから、天界には独自の通貨でもあるのだろうと想像いたしますが、でも、税金は――どうなのでしょうね?
 貨幣経済が成立しているぐらいだとしたら、普通に税制があってもおかしくはないような気もしてきましたが……でも、守護天使の天界って一応天国のたぐいでしょう? そうしたところでまで税金とか取られるというのは、世知辛くていやだなあと思ってしまいました(笑)。
――だいたい、どこに納めることになるのでしょうか?

 それはともかく、マークさんがそうしたことにはぴんときていなくて鷹揚で、チップさんが抜け目なくフォローしてあげているというのは、いかにも二人らしい感じがします。実際にもそうしたことはきっと、あったでしょう。マークさんのせりふが最後、ルー〇柴さんのような口調になってしまったのは、どういうわけか分かりませんけれど……。
 でも、この頃ちっともお話を書いていない作者のわたしに代わって、久しぶりにマークさんを動かして下さって、とてもありがたいです。エマさまにはあらためて感謝申し上げます。

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