お金くれる人 パトロン募集している、という女性と引き合わされたことがある。 今でいう、後妻業だとか、愛人業の女性だった。 知り合いの、その知り合いというのもさして親しいわけでもなく、素性も定かではない、だがいつも仲間内の一人としてそこに存在している、という怪しい男からの紹介で、そもそもそこからして、すでに気が進まなかった。 パトロン募集しているという女性の方も、確かに色気はある、男をその気にさせるのが得意で、その自信もある、といった風だった。 会うには会ったが、あまりいい気持ちはしない。 当然だが、最初から「怪しい男からの紹介でパトロン募集」というところに悪い先入観があったためだ。 もちろん、魅力的な女性でもあるし、ぐらりと気持ちが揺らぐ瞬間は幾度かあった。 それでも、である。 パトロン募集のなまめかしい女性と、そのそばで控えるずる賢そうな素性の知れない男。 犯罪が絡んでいると証拠もないのに言い切ることはできないが、その当時はやっていた保険金殺人のようなものを連想した。 もしあの時、あのまま言われるがままにパトロン募集の女と関係を持っていたら、今頃どうなっていたか。 間一髪で助かったのか、それとも惜しいことをしたのか、自分でも判断はつかぬ。 パトロン募集の話を断ってから、その素性の知れない男とは、なんとなく疎遠になり、今はどこで何をしているか知らない。 きっと、アンダーグラウンドのどこかでいまだにずる賢く生息しているに違いない。 別に会いたくもないが。